文化講座
自分らしさを撮る

いよいよ今年もあとひと月となりました。あっという間の一年間のように感じます。気温も下がり始め本格的な冬になってきました。身近な場所での撮影回数が増えてきますね。寒さに負けず日々の変化に目を向けていきましょう。

少し遠出をして撮影に出かけると有名ポイントで多くのカメラマンに出逢います。日の出や夕景撮影では三脚渋滞も見かけます。撮影者のマナーが問われる場所でもあります。十二月初旬であれば平地の紅葉もまだ撮影できインバウンドの観光客も含めて有名地でのトラブルも起こりがちです。
そんな場所でも少し視線ポイントを変えてみると今までと違った写真が撮れると思います。Instagramなどでチェックした作品を同じ場所で撮ってみたいと思って出かけることが多いと思いますが、その場所で同じポイントだけで撮影した写真は、SNSで評価の良かった作品を再度自分のカメラに収めただけの作例写真でしかないと思います。自分のステップアップのために同じ様に撮ってみることは勉強にはなりますが、決して自分の作品として残っていくものではないでしょう。自分の作品として撮影するのであれば自分らしさを一枚の中に詰め込む必要があります。この点をしっかりと自覚すれば撮影場所でのカメラや三脚の渋滞ももっと減るのではないでしょうか。

教室やワークショップ等でも最終目的は『自分らしさ』が出ている写真についてお話しすることが多いです。初心者の方には少し分かり難いかもしれませんが自分の好きなテーマを考えて撮影して自分のトーン(好きな色合いや明るさの好み)を見つけて撮影の中でそれらを持続的に続けることで個性的な作品へとつながっていきます。被写体を見つめる眼を強化すること、繰り返し撮った写真を見つめ直すことを続けていくとそれがやがてオリジナルの作品になっていきます。若い人のInstagramを見ていてもただ有名地で撮った絶景写真よりも自分の感性を信じて自分らしい作品を継続的に投稿されている人の写真にとても惹かれてしまいます。自分には撮れない作品にその人の個性を感じて次はどのような作品に仕上げてくるのかとてもワクワクしてきます。当然その方の名前やユーザーネームなども覚えてしまいます。名前を見ればその人の写真が浮かんでくる。これはとても凄いことだと思います。絶景写真は瞬間『凄い!』とは思うのですが、撮影者の名前まであまりチェックされません。次に同じような写真を見たときには『あーこれどこかで見たよな』で終わりがちです。そこに作例写真と作品の違いの何かが隠れているのでしょうね。
綺麗で上手い写真を撮れるようになることはいいことですが、作品作りで写真を目指すのであれば『その人らしいなぁ』と感じる写真を目指すことが大切ですね。そんな視線でSNSに上がってくる写真を見てみるのも良いと思います。
*最近お気に入りの写真集
岩倉しおり "crescent" ・・・香川県在住の写真家(女性)
2019の写真集『さよならは青色』もおすすめです
Instagram @iwakurashiori フォロワー数 48.6万人
今月の一枚

臨済宗小熊山一乗寺(岐阜県羽島市小熊町)
弘法大使(空海)によって地蔵菩薩を中心に開闢(カイビャク)された歴史ある寺院です。この参道に銀杏並木があり落葉の頃、黄色一色になります。この時期お昼頃に訪れると半逆光に銀杏の葉が輝き綺麗です。11月下旬~12月初旬
筆者のブログには、デジ一眼やコンデジで撮影したものを
いろいろ掲載しています。
PHOTO COLOR
http://tatumiiro.exblog.jp/

