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デジタル写真の楽しみ方

(社)日本写真家協会(JPS)会員・フォトス ハットリ 代表
服部 辰美

視点を変える

新緑の季節となり爽やかな気分で撮影に出かける今日この頃ではないでしょうか。
気分も一新して被写体を見つめ直すにはちょうど良い機会だと思います。

花や風景をきっかけにカメラを始めた方もたくさんみえるはずです。被写体をどう撮れば良いのか悩む上で、カメラ雑誌などを参考にしてこの地の風景や花景色などを撮りに出かけられると思います。以前にもお話ししたように撮影スタイルや技術的なことを磨いていく途中であればその方法も決して間違いではないでしょう。しかし、それらの雑誌の作例と同じように撮れたらOKで終了と考えずにそこから、自分流の視点を考えて被写体を見つめることが新たなスタート地点だと考えてほしいものですね。風景や花景色の場合、時期や光の条件によって印象が大きく変わります。作例写真よりも良い条件で撮れることもあるかもしれません。でもその写真から鑑賞者に伝えられる何かが加わらなければ「上手い写真」「きれいな写真」で終わってしまう可能性があります。
一枚の写真を撮る時、ファインダーの中を一生懸命見つめようとしますよね。構図は?ピントは?露出は?などと神経を集中させてシャッターを押しているはずです。しかし今見ているファインダーの中の被写体に対して、その場の匂いや音や風や空気の流れにはたして注意を払えているでしょうか?傑作だとプリントした写真から現場で感じた匂いや温度のような目に見えないものは写っているでしょうか?

「今回の4枚の写真・・・片隅の光景を集めてみました。見落としがちな日常の片隅をよく観察すると何か心に引っかかる光景があります。まるで小さな世界が存在しているようです。」

デジタルカメラの映像はドットの集まりから成っています。画像をどんどん拡大していくと一画素の集まりであることがわかります。隣り合う一画素同士の微妙な色や濃度の集まりから普段見えているような被写体の形が作り出されます。プリントであれば、インクジェットの色の粒の集積から、一枚の写真という記号に置き換えられて見えているわけです。
撮影者と写真を見る鑑賞者は、その記号である一枚から自分の経験値に合わせて何かを感じようとしているのだと思います。赤い梅干しの写真を見た時の状態のような感じです。ある人は、単なる赤い色の塊だと見るかもしれません、また違う人が見ればその梅干しの写真から「白いご飯と一緒に食べたいな」と想像を膨らませるかもしれません。我々写真を撮るものとしては後者のように感じられたいですね。
このように撮るものと見る側の経験値を重ね合わせた「共有」で一枚の写真の印象が大きく変わってくることを考えていくと、現場で感じた印象をどう写真で伝えるかを工夫していくことが大切だと理解できるのではないでしょうか。現場の状況をいかにきれいに複写して帰るのではなく、この場でこう感じていたよということを伝える努力をしていきたいものです。シャッターを押す前に撮影意図は何なのかを繰り返し自問自答することを習慣にしたいですね。そこに写真の本当の楽しさの答えが隠れているはずです。

筆者のブログには、デジ一眼やコンデジで撮影したものを
いろいろ掲載しています。
PHOTO COLOR
http://tatumiiro.exblog.jp/

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