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デジタル写真の楽しみ方

(社)日本写真家協会(JPS)会員・フォトス ハットリ 代表
服部 辰美

写真集を読む

年末を迎えて気持ちだけは、日々忙しく感じながら過ごす今日この頃です。
寒さも少しずつ増して天候不順な日などは自宅待機をしたくなるかも知れませんね。そんな時は、写真集などを開いてじっくりと鑑賞するのもいいと思います。パラパラとめくって眺めるのではなく写真の中身を読み解く気持ちで見るのも悪くないはず。もちろん写真集の内容によっては、読み解くものではないものもありますが。
写真作家と呼ばれるジャンルの写真集には皆さんあまり関心がないかも知れません。一般的に解りやすい風景写真やスナップ写真、動物・花などを対象にしたものとは少し見せ方が違うので取っつきにくく感じるかも知れません。
まずは一通り最後まで目を通してみてください。そこでこの作者が何を見せたい(何を写真で言いたい)のかを考えてみましょう。そしてもう一度自分の考え方で合っているのかを思い出しながら最初からページをめくってみます。その時前後のページとの関わりにも注意を払います。作者は写真の組み方をイメージに沿って順序を考えます。自分のイメージが伝わりやすいように何度も組み替えて決定していきます。撮影の時間よりも長く手間暇をかけていきます。

このようにして読み解く気持ちで写真集を見ていくと次第に写真を見ながら小説の世界に入っていく気持ちになっていきます。もちろん人それぞれ生き方が違うように写真集の感じ方も違って当たり前だと思います。大切なのはそれらの写真群から得られる感情の方向性だと思います。一枚で引き込まれる写真とは、全く違う面白さが感じられるはずです。ちょっと違うかも知れませんが、抽象的な油絵を見てそこから得られる自分のイメージ作りに近い感覚を得られるかも知れません。その作家の序章などの文章を読み解けば写真の意味がより解りやすくなるでしょう。一般的な写真雑誌にもそれらの一部が紹介されていることもあります。ご自分が興味をひく写真家であればその数枚の紹介写真だけで終わるのではなく写真集を一度しっかりと見ていただくのもいいと思います。
決して安い買い物ではないかも知れませんが、撮影技術書ばかりを読んでいても得られない"写真とは何か"ということを教えてくれるのではないでしょうか。

この繰り返しを重ねていくことで作家の写真展を見たときにきっとご自分の作品の見方が変わっていることを感じると思います。展示されている写真の技術的な質問よりも作者の思いを知りたくなることでしょう。年の瀬の長い夜長をテレビや小説を読む代わりに写真集を見てみませんか?

来年も皆様にとって良き年になることをお祈りします。拙い文章に今年一年お付き合いくださったことに厚く御礼申し上げます。また、来年お会いできるように頑張ります。

 

*私の好きな作家・・・William Eggleston(USA) 川内倫子(JAPAN)など

筆者のブログには、デジ一眼やコンデジで撮影したものを
いろいろ掲載しています。
PHOTO COLOR
http://tatumiiro.exblog.jp/

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