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デジタル写真の楽しみ方

(社)日本写真家協会(JPS)会員・フォトス ハットリ 代表
服部 辰美

見えない時間

今年の桜は、開花が早かったですね。この記事が出る頃には山の奥まで開花が進んでいるのではないでしょうか。名古屋市内では平年よりも9日早い開花宣言でした。温暖化が進む地球環境をしっかり考えないといけませんね。
写真で何ができるのか、それもカメラを手にする我々の使命の一つですね。

写真はシャッターを押した瞬間から過去を記録するメディアになっていきます。
モニターで確認しているつい今しがた撮影した姿を見ているわけです。動かないような気がする自然風景でもその一瞬の光景は二度と同じものは撮影できません。光、風、見えない空気などが重なり合って写したい光景として目に飛び込んできます。それはもっと速い動きのある乗り物系、スポーツ系、動物系の写真を撮影する時と同じ緊張感で被写体を見ていかなければいけないということだと思います。たとえ三脚でじっくりと構えて写している風景写真でも同じ緊張感が必要だということですね。これは同じ光景を映像で記録するとよく分かると思います。ほんの数分の映像を早送りしてみれば雲や木立に当たる光などが目まぐるしく動いているのを確認できます。変化の面白さを(タイムラプス)で撮影すれば動く風景が見てとれます。

古い写真には写した時から今までの時間を重ねて見ています。自分で撮影したものは思い出が優先されますが、過去の写真家の作品を見る時は冷静にその写真を見ていろいろなことを分析しながら見ているのではないでしょうか。人物が写っていれば着ている服装からその時のファッションを知ることができます。
建物や道路の状況から当時の暮らしを感じとることもできるでしょう。記録的な事だけではなく作者が何を写し撮りたかったのかを時間軸で見ることも面白いと思います。無名の女性写真家(Vivian Maier)は彼女が亡くなった後あるオークションで一人の青年が膨大なネガをコレクターとして落札してから全米で有名になりました。
落札から二年後Blog(Flickr)にアップしてからの反響が凄くて写真集を発刊、アメリカの有名な写真家たちも絶賛しドキュメンタリー映画まで作られました。
彼女が生きているうちに作品を発表していれば有名な写真家として名を残せたかもしれないでしょう。そこに写っている一瞬のアメリカの姿はその時の時間の中で彼女が捉えた街の姿が写っていて今誰かが同じように撮ろうとしても撮れない時間が写っているのだと思います。スナップ写真好きにはたまらない写真集だと思います。

目には見えないけれど一枚の写真には時間が写っている、そんなことを意識してシャッターを押してみるのもいいかもしれませんよ。

今月の一枚

桃介橋
 長野県にある木曽川に架かる(桃の橋)と呼ばれています。木曽川の水力発電に力を注いだ福沢桃介が資材運搬路として架けたものです。近代化遺産として復元され大正時代の吊り橋として南木曽町有形文化財となっています。
川岸には花桃が植えられ4月中旬に写真のような景色が見られます。
*長野県木曽郡南木曽町読書


筆者のブログには、デジ一眼やコンデジで撮影したものを
いろいろ掲載しています。
PHOTO COLOR
http://tatumiiro.exblog.jp/

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