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デジタル写真の楽しみ方

(社)日本写真家協会(JPS)会員・フォトス ハットリ 代表
服部 辰美

距離感

秋らしくなってきました。山の高いところは冬支度が始まっていますね。
いつも通りに新型コロナウイルスに気をつけながら深まりゆく秋を探しにお出かけするのも良いでしょう。

今年に入り互いの距離感を保つことが普通の世界になっていますよね。電車やバス、催し物や会合など人の集まる機会が多いところでの互いの距離を意識することが当たり前になってきました。そんな距離感のことを撮影の中でもとりいれてみると面白いかなと考えています。

身近に写す機会が多い家族写真でもこの距離感を意識することで見せ方が変わってくると思います。遠い昔を思い返してみると自分の子供が生まれた頃に、沢山写真を撮っていました。赤ちゃんをモデルにポートレートの練習をしていた気がします。開放f値が明るいレンズを使って背景を柔らかくボカして撮影している写真が沢山古いアルバムに残っています。今でもボケフォトファンの一人ですが、家族写真を撮る時はそれだけでは撮る側の自己満足になる可能性があります。技術を見せるためだけの写真になってしまい、その頃の周りの環境を排除した雑誌風のただかっこよく写っているだけのことが多いものばかり残っている感じです。

ここで(家族写真)の持つ意味を再度考えてみましょう。写真が持つ本来の基本であるその時の記録性を意識する必要があります。そのためには被写体の周囲の環境を写し込むことが後々とても重要になってきます。ハイハイしている頃には家具はこんなものがあったんだとか、こんな食器で食事していたんだとか、家の周りはこんな木や花が生えていたんだとかなど撮られた本人が大きくなった時自分の思い出を補足できるように撮影してやることがとても大切なことだと思います。写真を撮る側が被写体からちょっと距離を置いて先程のポイントを意識して見るようにします。ついつい可愛い表情に寄り添いたくなりますが、少し距離を置くことで周囲の環境を写し込むことができます。
写真集になって書店で販売されている家族を撮ったものを最近よく見かけますが第三者(写真集をみる側)がページをめくっていくことでその本の中の家族のドラマが楽しめるものが多いです。家族というとてもプライベートな被写体を第三者的な読者も楽しめるスタイルがいいのだと思います。そこには計算された距離感を意識して撮影していることがわかります。全くの他人である読者が楽しめる(本を買ってでも見たい)共感性を生み出しているのではないでしょうか。
これからご自分の子供やお孫さんを撮影してフォトブックでも作ってみようかなと考えている方は是非この距離感を意識してその時代を被写体と一緒に閉じ込める工夫をなさってくださいね。日本の四季を写し込むこともいいと思いますよ。背景に何が写っているのかを意識しながらもちろんカメラアングルは子供目線で撮ることを忘れてはいけません。

今月の一枚

紅葉を撮影する時その周辺に写り込む環境が良いのが神社仏閣でしょう。この写真の場所は岐阜市山県北野にある大智寺というお寺です。
新緑、紅葉と四季を通じて綺麗な庭園が楽しめます。緑の苔と紅葉したモミジのコントラストも素敵な場所です。訪れる人も平日は少ないのでゆっくりと撮影が楽しめます。境内には巨木の大楠もあり景観も良いお寺です。曇天の柔らかな光の下で撮影すると良いでしょう。


筆者のブログには、デジ一眼やコンデジで撮影したものを
いろいろ掲載しています。
PHOTO COLOR
http://tatumiiro.exblog.jp/

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