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デジタル写真の楽しみ方

(社)日本写真家協会(JPS)会員・フォトス ハットリ 代表
服部 辰美

写真に写らないもの

今年もいよいよ本格的な冬の到来です。風邪をひかないように体調管理に心がけましょう。
今回は、直接写真に写らない「音、味、匂い」それと感情(悲しい、楽しい、うれしい、さみしいなど)を写すにはどうすればいいのかを探ってみましょう。

人間は外界を感知するために備わっている感覚機能の五感(視覚、聴覚、触覚、味覚、臭覚)からいろいろな情報を得ています。写真を撮る時も無意識にこの機能を使ってものを見ているはずです。カメラ自体は、ファインダーに写っている部分を機械的に設定された状態で目の前のものを複写しているだけにすぎません。これがカメラの役割なのだと思ってください。しかし人がそのものを見ている時は、五感をフル動員させて情報を分析しながら観察しています。当たり前ですが、音や味そして匂いや肌触りなどはカメラの情報には加わりません。自分だけで撮影したものを見ている時は、記憶の中から五感で感じたものを思い出して重ね合わせて見ているはずです。第三者に鑑賞してもらう時にはその部分が伝わらないかもしれません。

音・・・
 音楽(ライブ会場)、祭り会場、自然の中から聞こえてくる風や波の音、街中の騒音など撮影する時には必ず耳に入ってきます。
味・・・
 料理などを撮影する時そのもの(被写体)が持っている味、匂いを人は無意識に感じとっています。
匂い・・・
 料理の匂い以外にも潮風の香りや深い森に入った時に感じる植物の匂い(フィトンチッド)などを無意識に感じています

誰かに写真を見せた時に上記のものが感じられるかを考えなければ目の前にある光景をカメラが切り取っただけの写真(情報の複写)になってしまいます。
具体的には、たとえば激しく喧しい中で行われている音楽ライブやお祭りなどの撮影でその騒々しさが感じられるように写さなければなりません。そのためには光の状態やそれらが感じられるようなレンズ選択やカメラの機能設定を考えていかなければなりません。
目の前にあるものを情報として複写する時に具現化して自分の五感で感じた情報を加えてやることで初めて表現として成立し始めます。

同じように感情移入も写真の中に加わります。撮影者のその時のモチベーションが被写体を選んでいることが多いと思います。楽しい時には、明るく軽く、悲しみを抱えている時は、少し暗く重い被写体に心惹かれているかもしれません。
このように自分が何を見てどう感じているのかを撮影前に考えてみることで伝わりやすい写真になり見てもらう時に共感性が生まれてくるのではないでしょうか。
自然風景を撮影する時でも綺麗で構図もまとまっているいい写真からそこにその作者だけが表現できる+αを五感で感じとって写しこみたいですね。

光、点景の配置、カメラアングル、レンズの画角、シャッタースピード、絞り値など基本撮影の原点をいつも見直しながら表現効果の五感の道具として使えるようにしていきたいものです。

筆者のブログには、デジ一眼やコンデジで撮影したものを
いろいろ掲載しています。
PHOTO COLOR
http://tatumiiro.exblog.jp/

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