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デジタル写真の楽しみ方

(社)日本写真家協会(JPS)会員・フォトス ハットリ 代表
服部 辰美

美味しい光を見つける

毎年のことですが、3月の声を聞くと春が近いと感じてきます。梅が開花し甘い香りを漂わせると天気予報が気になり出かけるタイミングを見計らう自分がいます。桜咲く春本番もすぐそこまできています。寒さの中で酷使されていたカメラなどの機材チェックもしておくといいですね。

何気なく被写体に向かってシャッターを押した時、モニターに映った1枚が時折とても素晴らしい情景を捉えていて驚かれたことはありませんか?人の視線を通して見ているその情景以上にカメラが捉えた1枚がすごく素敵に写っていたという感覚を経験されたことはないでしょうか。
これは前回お話した光が大きく関係していることに繋がっています。
人の目は見つめる場所の明るさに応じてちょうど良く見える明るさに調節しています。強い光の当たっている部分を見た後、影の部分に視線を移動してもすぐに真っ黒にならずきちんとその部分も確認できるようになりますよね。しかしカメラは機械的に与えられた情報を絞り、シャッタースピード、ISO感度の設定値で写すだけです。撮像素子が許容できるラチチュードの範囲内で記録していきますから目で見えている見え方と違って写ることも多々出てきます。
言い換えれば光のコントラストが影響しているので撮像素子の捉えられるラチチュードと光のコントラストがバランスよく収まっている情景で仕上がりの綺麗な写真になるということですね。室内の窓際でカーテン越しに人物を撮影するような状況はこの設定に近いわけです。光の魔術師と言われたレンブラントのライティングを参考にして身近な人を写されてみてはいかがでしょう。オランダの画家で有名なフェルメールの(牛乳を注ぐ女)などは光の一番美味しい場所で描かれている傑作だと思います。

主役の明るさは大切なので気にして適正値を求めて撮影しますが、それ以上にその周辺や背景の明るさのバランスや光の方向性が重要なわけです。広い風景を撮影する場合でも一番印象深く見える時間帯や季節、天候などの組み合わせをしっかりと観察することでその場所の絶景が捉えられるはずです。その光を見つける練習には部屋の壁に差し込む窓越しの光線をじっくりと観察して美味しい光を見つけることが一番だと思います。付け加えておくことは、人それぞれ光の好みが違っていることも重要なことですね。美味しいと思う料理にも好みがあるように。自分にとって美味しいと思える最高の光を見つけ出すことが写真を永く楽しむ入り口かもしれません。

今月の一枚

雪がちらつく寒い日に梅の花を撮影に行った時のスナップです。背景の山に日が傾く頃に道の雪も消えかけていました。その濡れた道が光を反射して光っていました。
ちょうど向こうの丘から帰ってくる親子を見かけたので構図的にバランスが良くなる位置に来るまで待ってシャッターを押した1枚です。超望遠効果で背景の山を引き寄せるようにしています。人物のシルエットがなければつまらない写真だったかもしれません。


筆者のブログには、デジ一眼やコンデジで撮影したものを
いろいろ掲載しています。
PHOTO COLOR
http://tatumiiro.exblog.jp/

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