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デジタル写真の楽しみ方

(社)日本写真家協会(JPS)会員・フォトス ハットリ 代表
服部 辰美

気づき


寒さも少しずつ緩み季節は春を迎える準備中といった時期になりました。
横浜で毎年開催される2月のCP+(カメラの新製品の発表会)では今年の各メーカーによる新製品が続々と出され始めました。デジタルの飛躍的な進歩がこれからの写真界の方向性をどう変えていくのか楽しみなショーでした。機材の進歩にカメラを操作する側がどれだけ追いつけるのかという時代でもあるような気がします。
でも何をどう撮るかという精神的なものは、あまり大きく変わっていないのかもしれません。もちろんデジタルによる新しい表現方法はこれからも次から次へと出てくるでしょう。それを素直に受け止めて自分の表現を広げていくことがこれからの課題だと思います。
目の前の光景を写すこと、写っていることが失敗なく当たり前になった高性能なカメラ時代の今日で問われるのは、カメラを通して見ている自分の姿を他人に見せることではないでしょうか。ただ風景がきれいに写っているだけの写真で満足せずにその一枚に自分だけの特別な世界を感じられる写真をめざしたいですね。見る側も想像力をフルに働かせて読み取る楽しみを見つけるのがこれからの写真の楽しみ方だと思います。

皆さんは、被写体を見つけカメラをそれに向けてシャッターを押すとき一瞬「これでいいのか、今がいいのか」とふと頭の中をよぎることはありませんか?その一瞬悩む瞬間が、一番楽しいひと時ではないでしょうか。「こうじゃない」と悩む瞬間被写体への気づきが起きるはずです。この観察力が写真の原点だと思います。道端での普段は気がつかない小さな世界の風景もカメラのファインダーを覗いた瞬間から自分だけの大切な世界に変わっていることに気づかれているはずです。そしてこれでいいだろうという確信がシャッターを押す動作になります。写されたものをモニターで確認して「こうじゃないなぁ」と再度被写体を見るかもしれません。そして新たな気づきをして二度目のシャッターを押すこともあるでしょう。この繰り返しの中に本当の写真の楽しみが隠されているのではないでしょうか。

被写体を見る → 観察する → 自分の想像の世界をイメージする → シャッターを押す → 確認する → 何かに気づく → 自分の世界と照らし合わせる →違えば再度思考する → 気づき → シャッターを押す → 確認 → 完成

この一連の流れを楽しむことが写真の世界だと思います。写真を通して精神の向上をめざしているのではないでしょうか。趣味の世界では、これ以外に高性能な機材をなんなく操れる技術的な向上の楽しみもあるでしょう。また遠くまで出かけて季節の一瞬にかける苦労を味わう楽しみもあるかもしれません。でもプリントされた一枚の写真を他人に見せた瞬間からその一枚は、自分の手元を離れて独り歩きを始めます。
鑑賞者の心象でその一枚は、いろいろな見え方に変わっていくでしょう。そこにまた二次的な楽しみが加わります。撮影者がその場に同席していればその一枚の新しい見方に気づかされるかもしれません。このように自分がただ何となく眺めていた光景が、カメラを通じて自分だけでなく第三者まで巻き込む精神性の向上が期待できるものだと考えればとても意味のある世界ではないでしょうか。写真を楽しむ理由を少し難しく考えてみました。

筆者のブログには、デジ一眼やコンデジで撮影したものを
いろいろ掲載しています。
PHOTO COLOR
http://tatumiiro.exblog.jp/

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