文化講座
公社債等の税金が変わりました
長引く低金利の中、銀行の預金だけではお金が増えない・・・
このような時、債券や株式、投資信託などで運用するという考え方もあります。
これらの金融商品は増える可能性もあれば減ってしまう可能性もあるため、その特徴やリスクなどをしっかり理解した上で選びましょう。また、運用した結果、利益が出た場合にはその収益に対しては税金がかかり、確定申告が必要な場合や、確定申告をすることで税金が戻るケースなどもありますので、税金についてもしっかりと確認しておく必要があります。
これらの商品のうち債券等で運用を考える際、平成28年から税制が変わりました。
公社債などのうち、国債、地方債、外国国債、外国地方債、公募公社債、上場公社債、公募公社債投資信託(MRF、外貨建てMMFなど)などを「特定公社債等」と区分し、上場株式等と同様の課税方法とされることになったのです。
債券はみなさんが国や会社にお金を貸すという仕組みで、貸している間は毎年利息がもらえ、一定期間が終わる(償還)と貸したお金が戻ってきます。
国に貸す場合を『国債』といい、会社に貸す場合は『社債』です。
債券は償還を待たず途中で解約する場合、通常はその時の時価で換金することになります。つまり、預けた金額より高い金額となる場合もあれば少ない金額でしか戻らない可能性もあります(国債の中でも「個人向け国債」は国が額面での買取りを保障しています)。
債券に投資した場合に得られる可能性のある収益は、①利子②途中で売却した場合の譲渡益③償還差益(額面より低い金額で購入後、償還時に額面で戻った場合など)となります。また、公社債投資信託では、収益分配金や譲渡益などの収益があります。これらの収益に対する課税方法は以下のようになりました。
平成27年12月末まで | 平成28年1月以降 | |
---|---|---|
利子 収益分配金 |
利子所得 源泉分離課税(20.315%) |
利子所得 源泉徴収(20.315%)がされ、 確定申告不要、又は申告分離課税が選択可能 |
譲渡益 | 非課税 | 上場株式等の譲渡所得等 申告分離課税(20.315%) |
償還差益 | 雑所得 原則として総合課税で確定申告 |
上場株式等の譲渡所得等 申告分離課税(20.315%) |
これまで公社債、公社債投資信託の利子や「収益分配金」は、利子や分配金が支払われる際に20.315%の源泉分離課税となり課税関係は終了していました。
これが平成28年からは20.315%で源泉徴収はされますが、「そのまま申告不要とする」か、「申告分離課税」が選択できます。
申告分離課税を選択した場合、上場株式等との「損益通算」が可能となるため、株式の売買で損をした場合などはご自身で「確定申告」をした方がいい場合もあります。
また、公社債や公社債投資信託の「譲渡益」はこれまで非課税となっていましたが、上場株式等の譲渡所得等として申告分離課税の対象となりましたので、原則として確定申告が必要で、上場株式等との損益通算が可能です。外貨建てMMFなどは為替差損益も譲渡益に含まれます。
これまでと異なり、確定申告が必要となることもあるため、税金についてもしっかりと考えておく必要がありそうですね。
でも確定申告と言われてもなんだか難しそう・・・という方もあるかもしれません。平成28年からは公社債等も「特定口座」での取り扱いが可能となりましたので、ご自身で確定申告の手間をできるだけ省きたいと考える場合は特定口座で取引を行うといいでしょう。
源泉徴収ありの特定口座であれば、証券会社が譲渡益を計算し、源泉徴収を行い納税してくれます。また特定口座内での損益通算も行われます。ただし、他の一般口座の譲渡損益と損益通算を行いたい場合はやはり確定申告が必要です
(NISA口座の取引ではもともと非課税とされるため損益通算は行えません)。
石川 友紀
ファイナンシャルプランナー(CFP®)
株式会社家計の総合相談センター