文化講座
50代から気になる? 介護のはなし
50代向けのライフプランセミナーを担当させていただくと、介護に関心が高い印象を受けます。実際、セミナー終了後に「今まさに親の介護に直面しています」とお声がけいただくこともあります。その一方で、「幸い身内が健康なので、今のうちに具体的なデータを知って備えておきたい」とおっしゃられる方もいます。
そこで今回は、一般的な介護に関する統計の一部をご紹介したいと思います。
◆介護に直面する時期は?
出典:厚生労働省「平成28年 国民生活基礎調査の概況」
要介護者等(=介護を受ける方)と介護者(=介護する方)の組合せを年齢階級別にみてみましょう。縦軸が要介護者等の年齢で、横軸が介護者の年齢です。例えば、65~69歳の要介護者を介護する方は、62%が60代です。つまりパートナー同士が、お互いを介護しているイメージです。そして、70代の要介護者を介護する方は、約48%が70代です。これは「老老介護」のイメージになります。そして、80代以上の要介護者を介護する方は、50代や60代が中心になってきます。ということは、介護に直面する時期は50代になると、多くの方がまず「親の介護」に接し、それが終わると「パートナーの介護」が始まることがわかります。
◆介護期間と介護費用の平均は?
介護期間 | 介護費用(一時金) | 介護費用(月額) | |||
---|---|---|---|---|---|
6カ月未満 | 6.4% | 掛かった費用なし | 15.8% | 掛かった費用なし | 3.6% |
6カ月~1年未満 | 7.4% | 15万円未満 | 19.0% | 1万未満 | 5.2% |
1~2年未満 | 12.6% | 15~25万円未満 | 8.6% | 1万~2万5千円未満 | 15.1% |
2~3年未満 | 14.5% | 25~50万円未満 | 6.8% | 2万5千~5万円未満 | 11.0% |
3~4年未満 | 14.5% | 50~100万円未満 | 9.1% | 5万~7万5千円未満 | 15.2% |
4~10年未満 | 28.3% | 100~150万円未満 | 6.0% | 7万5千~10万円未満 | 4.8% |
10年以上 | 14.5% | 150~200万円未満 | 1.9% | 10万~12万5千円未満 | 11.9% |
不明 | 1.7% | 200万円以上 | 6.1% | 12万5千~15万円未満 | 3.0% |
平均 | 54.5カ月 (4年7カ月) |
不明 | 26.7% | 15万円以上 | 15.8% |
平均 | 69万円 | 不明 | 14.2% | ||
平均 | 7.8万円 |
出典:(公財)生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査(平成30年度)」
介護は人それぞれですが、介護期間の平均が54.5カ月ですから、一般的に介護にかかる費用は「一時金の平均69万円+月額平均7.8万円×54.5カ月」で、約500万円が平均値になります。ただし、数日間の介護期間の方もいれば、10年以上の方もいらっしゃいますし、そもそも介護にならない方もいらっしゃいますので、あくまでも目安の一つと考えましょう。
◆要介護(要支援含む)の認定者数の割合は?
70歳~74歳 | 75歳~79歳 | 80歳~84歳 | 85歳~89歳 | 90歳~94歳 | 95歳~ | |
---|---|---|---|---|---|---|
男性 | 4.4% | 8.1% | 16.0% | 29.9% | 48.0% | 70.9% |
女性 | 4.1% | 9.7% | 23.4% | 44.9% | 65.3% | 86.8% |
出典:厚生労働省「平成29年度 介護給付費等実施調査の概況(平成29年11月審査分)」
最後に、年齢・性別ごとの人口に占める要介護等受給者の割合です。80代になると男女ともに4人に1人が要介護等と認定されています。つまり、ライフプランの中で介護の必要性が高くなる年齢の目安は、一般的に80代となります。
先述したように、介護は人それぞれです。統計の数字に振り回されて闇雲に不安になる必要はありませんが、これからの少子高齢化を考えると、一生涯の中で複数の家族の介護に携わる場合も想定されます。介護負担を次の世代に引き継がないために、一般的に介護費用は要介護者(=介護を受ける方)の資産や年金受給額の範囲内でベストな選択を考えるのが理想と言えるでしょう。
その為にも、もしも身近な方が要介護になったら、もしくは自分が介護状態になったら「どんな介護を希望するのか」「介護してくれる人がいるのか」「誰に介護してほしいのか」など、健康な時に近親者とコミュニケーションをとり、お互いの意向を共有しておくと良いですね。
そして、毎日の食生活の改善や適度な運動を行うなど、健康寿命そのものを延ばすことも身近な対策の一つであることも忘れないでください。
堀之内 千津
ファイナンシャルプランナー(CFP®)
株式会社家計の総合相談センター