文化講座
【個人賠償責任保険】加入の必要性について
楽しい夏休み、お子様が外で遊ぶ機会が増えて活動時間も長くなります。
自転車で出かける機会も多く、けがや事故を心配されている親御さんもいらっしゃると思います。
ご自身のお子様のけがや事故も心配ですが、もし、お子様が他人にぶつかってけがをさせたり、物を壊してしまった時はどうでしょうか。
以前、ニュースにもなりましたが平成25年7月に神戸地方裁判所の判決で小学5年生の児童が自転車で、歩行中の女性と正面衝突をし、重度な障害者(寝たきりの状態)にさせてしまった事故がありました。その事故に対して平成25年7月に神戸地方裁判所の出た判決は、9,521万円の損害賠償という高額なものとなりました。このニュースは、大きな反響があり日常に起こりえることとして、その様な事故が起きた時に補償される『個人賠償責任保険』が注目されました。
今回は、『個人賠償責任保険』についてお伝えしていきます。
個人賠償責任保険とは?
個人またはその家族が、日常生活で誤って他人にけがをさせたり、他人の物を壊したりして損害賠償金や弁護士費用などを負担した場合の損害を補償する保険です。同居の家族が一人でも加入していれば全員補償が受けられる点も魅力です。また、別居でも扶養しているお子様(未婚)も対象となります。
加入方法も自動車保険や傷害保険等に特約として加入することもできます。また、クレジットカードに自動的に付いていることもありますのでご確認をしておかれると良いですね。
では、主にどんな時に支払われるのでしょうか。
≪個人賠償責任保険で支払われる例≫
- 自転車で走行中に歩行者とぶつかり後遺障害を負わせた
- 飼い犬が他人を噛んでけがをさせた
- 買い物中に陳列商品を落として破損させた
- マンションの自宅の風呂場からの水漏れにより、階下の戸室の家財に損害を与えた
- 子供が駐車場に停めてあった他人の車を傷つけた
- ガス爆発によって、隣の建物を損壊させた
- ベランダの鉢植えが落下して歩行者の頭に当たり死亡させた
広い範囲で補償される個人賠償責任保険ですが、支払われない例もありますので確認してみましょう。
≪個人賠償責任保険が支払われない例≫
- 故意による事故
- 地震、噴火またはこれらによる津波に起因する賠償事故
- 同居の親族に対する損害賠償
- 職務遂行に直接起因する損害賠償
- けんか
- 他人からの借り物(預かり物)を壊した損害賠償
- 心神喪失に起因する損害賠償
- 航空機、船舶、車両の所有・使用・管理に起因する損害賠償
要するに、個人の生活の中で起こった他人に対しての損害を補償するものなので、仕事中(業務中)に起こした事故に関しては対象外ということになります。また、専用の保険がある部分についてはそちらの補償があるため支払の対象外になっています。例えば自動車事故の場合は、皆さんがご存知の通り自動車保険から相手の損害に対して、対人・対物の損害賠償金が支払われます。この例のように周知されている保険は大丈夫だと思いますが、意外と知られていないのが他人から借りたり、預かったりした物に対しての損害を補償する保険のことです。他人から借りた物だから個人賠償責任保険の対象だと思われやすいのですが、実は『受託物賠償責任保険』という専用の保険があります。そのため支払の対象外となっております。できれば個人賠償責任保険と合わせて加入をしておかれるとより安心です。
次に、個人賠償責任保険を選ぶ際に、意識していただきたい点があります。
クレジットカードなどに自動付帯されていたり、賃貸契約の際に加入をされる家財の火災保険に付いている個人賠償責任保険ですが、一般的に保険金額は1,000万円程度が多いので確認が必要です。事故によっては高額な賠償責任を負うこともありますので注意が必要です。
もし、損害を与えてしまった時は謝罪をするのは当然ですが、その後の交渉は精神的に大変な負担となります。保険によっては保険会社にお任せできる示談交渉付きのタイプもありますので確認しておかれると良いでしょう。
加入後にも気をつけていただきたいことがあります。付帯していた保険自体を解約される場合です。例えば、自動車に乗らなくなった等で自動車保険を解約した場合、その保険に個人賠償責任保険が付いていたケースなど。うっかり意識せずに解約をして気付いていないこともあります。
以上のように家族を幅広く賠償責任から守ってくれる保険です。
安心して、家族で楽しい夏休みを過ごせるように、個人賠償責任保険を確認していただければと思います。
井上 圭子
ファイナンシャルプランナー(CFP®)
株式会社家計の総合相談センター