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家計のサポート相談員のコラム

株式会社 マネースマート

老後に受け取る年金額の差

 「老後に受け取る年金額が女性は少ないと聞いたことがあるので不安です。」という声が多いので、今回は老後の年金額の差について確認したいと思います。

 1. 2025年度の公的年金

 新年度4月からの年金額は毎年1月に公表されます。その給付水準を測るものさしとして、モデル世帯(現役男性の平均手取り収入額で40年間厚生年金に加入した夫と専業主婦の世帯)の年金額が提示されてきましたが、今年は新たに【多様なライフコースに応じた年金額】が追加されました。厚生労働省HPでは、経歴や男女別のモデル年金額を確認することができます。加入する年金制度や収入額などにより、老後の年金額に差があることがわかります。

※(出所)厚生労働省HP 「令和7年度の年金額改定について」
https://www.mhlw.go.jp/content/12502000/001383981.pdf

 2. 女性の将来の年金額をはじめて可視化

 5年に一度の年金改正に伴い、昨年度の「財政検証」では、はじめて女性の年金額が可視化されました。(2024年度の65歳女性の平均年金月額は約9.3万円。男性の平均は約14.9万円。

※(出所)厚生労働省HP 「将来の公的年金の財政見通し(財政検証)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/zaisei-kensyo/index.html

 この「財政検証」では、働く女性の増加によって、将来の年金額にプラス傾向をもたらすことも提唱されています。検証によると、若年世代ほど女性が厚生年金保険の加入期間が延びており、その結果、女性の年金額は将来上昇することが予想されています。

 例えば65歳(1959年生)で年金生活に入る女性の場合、国民年金のみ(年額約80万円)の割合も半数以上なので、月10万円未満が約7割です。一方で、30歳(1994年生)の女性は(過去30年と同じ程度の経済状況が続くと推計した場合)約7割が厚生年金に加入する期間が多いと見込まれ、将来の年金額は月10万円以上が約6割近くになる予測です。前提として、女性が結婚・出産などで仕事を辞めずに、正社員としてしっかり働き厚生年金に加入し続けることが求められます。

 3. 老後の年金額の仕組み

 公的年金の仕組みは、国民誰もが加入する国民年金とサラリーマンが加入する厚生年金の2階建てです。男女に関係なく、国民年金の保険料を払った期間及び、現役時代の賃金総額や勤続期間(厚生年金の加入期間)が同じであれば、老後に受け取る年金額は同額になるように設計されています。その上で、「財政検証」で女性の平均年金額が男性より少ないという結果になったのは、現役時代の賃金・勤続期間の格差が存在するからだと考えられます。

 4. 将来の年金額を把握することが大事

 働き方や家族構成は多様化しています。女性に限らず過去のモデル年金額は参考にならない時代に入っています。一方で、個人の将来の年金額をざっくりと把握するための公的ツールは拡充しています。その代表例が「ねんきん定期便」や日本年金機構の「ねんきんネット」。登録することで自分の状況に合わせた年金見込額の試算が可能です。また、2022年度から開始した「ねんきんシミュレーター」も活用できます。

※(出所)厚生労働省HP 「公的年金シミュレーター使い方ホームページ」
https://www.mhlw.go.jp/stf/kouteki_nenkin_simulator.html

 将来の年金額を早めに可視化することで、過度な将来の不安を抑えることができます。厚生年金に加入して勤労収入を増やすことが、今の生活のゆとりをふやし将来の年金額の増加につながることを知っておきましょう。(自営業の方は、iDeCoなどの国の仕組みを活用できることも知っておきましょう。)
 早めに情報を集め、自分の働き方に合わせて対策を講じることが、安心した老後を迎える準備につながります。

堀之内 千津
ファイナンシャルプランナー(CFP®)

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