文化講座
介護と仕事の両立を支援する制度
介護休業制度があることをご存知でしょうか?
高齢化が進み、働きながら親や配偶者など身近な家族を介護する人が増えています。「育児・介護休業法※」では、介護と仕事の両立を支援する様々な制度が定められています。
※育児や介護を理由に会社を辞めることなく、家庭と仕事を両立できるように支援する法律です。
※2022年4月から有期雇用労働者の介護休業の取得要件が緩和されています。
※勤務先の就業規則などに記載などがなくても、要件を満たした労働者は事業主に申し出れば介護休業は取得できま
す。
介護と仕事の両立の動向
総務省の「就業構造基本調査」によれば、介護をしている人は2022年で約629万人。うち仕事を持つ人は約365万人と6割近くを占めます。介護と仕事を両立している方は、前回調査(2017年)から18万人増えています。
年間 約9.5万人が介護等を理由に離職
厚生労働省の「雇用動向調査」によると、2021年に離職した人は約717.3万人。そのうち個人的理由で離職した人は約517.3万人。その個人的理由で離職した人のうち「介護・看護」を理由とする人は約9.5万人です。
男性は約2.4万人、女性は約7.1万人と女性の方が離職する人が多く、性・年代別に「介護・看護離職」の割合をみると、男女ともに「55~59歳」が最も高くなっています。
出典:生命保険文化センターHPより
介護休業法の対象
要介護状態※1の家族※2を介護する労働者※3が対象です。
- ※1要介護・・・・・
- 負傷・病気または身体上や精神上の障害により2週間以上の期間にわたり介護を必要とする状態のこと。
- ※2家族・・・・・・
- 下図が対象となる家族です。
出典:厚生労働省「介護休業制度」HP
- ※3労働者・・・・・
- パート・アルバイトなど雇用期間の定めがある人も一定の要件を満たせば利用できます。ただし会社によって条件が異なる場合もあるため、ご自身が制度を利用できるかどうかを勤務先に確認しましょう。
介護休業
対象家族1人につき通算93日まで休業できます。(3回まで分割取得可能)
パート・アルバイトなど雇用期間の定めがある人も一定の要件※を満たせば利用できます。
※一定の要件の内、2023年4月から「入社1年以上であること」条件が廃止されました。
介護休暇
対象家族1人の場合は年5日まで、2人以上の場合は年10日まで、1日または時間単位で取得できます。
短時間勤務等の措置
短時間勤務・フレックス・時差出勤・介護費の助成の内、1つ以上の制度の設置が会社に義務づけられています。勤務先に確認しましょう。
(利用開始の日から3年以上の期間で2回以上利用できます。)
所定外労働の制限
介護が終了するまで残業を免除する制度です。1回につき、1か月以上1年以内。回数の制限はなし。
(介護が終了するまで利用できます。)
時間外労働の制限
法定労働時間以外の労働を、1か月で24時間、1年で150時間までに制限する制度です。
(介護が終了するまで利用できます。)
深夜業の制限
午後10時から午前5時までの労働を免除する制度です。
(介護が終了するまで利用できます。)
その他
介護休業の制度の申し出・取得したことを理由に、不利益な取り扱い※を禁止しています。
介護休業に関するハラスメントがおきないように防止対策を行うことは、会社の義務になっています。
※解雇・降格・雇止めなど
介護と仕事の両立の支援制度に関する 問い合わせ・相談窓口は、下記に掲載されています。
豆知識 『介護休業給付金』
介護休業・介護休暇を取得した場合の賃金は原則無給です。ただし、会社によっては給与が支給される場合もありますので、まず勤務先に確認しましょう。さらに申請により雇用保険から、一定の要件を満たすと「介護休業給付金」の支給が受けられます。
(給付額は原則として、休業開始前の給与水準の67%)
詳しくは、ハローワーク インターネットサービス をご覧下さい。
https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_continue.html#a3
仕事と介護を両立するのは大変です。国の支援制度を活用して仕事を続けることができれば収入の確保はもちろん、社会とのつながりも継続できるので経済的・精神的な共倒れ・孤立を防ぎ、介護が終わった後のご自身の将来の選択肢を広げることにも繋がります。
介護はまだ先という方も含めて、支援制度があることを知っておくと安心だと思います。
堀之内 千津
ファイナンシャルプランナー(CFP®)
株式会社マネースマート