文化講座
贈与税の基礎知識(教育資金の贈与)
秋から冬にかけて受験生を持つ家庭では、入試の結果が判明すると入学金や授業料の支払いが必要となる時期になってきます。受験の話題などが多くなるとともに教育資金について考える機会も増えてくるのではないでしょうか。現状では、親世代の所得が増えず、祖父母世代の潤沢な金融資産に頼って教育資金を準備するというご家庭も増えているかもしれません。そこで、今回は「教育資金の贈与」について考えてみたいと思います。
●年間110万円以上の贈与は贈与税がかかる
個人から個人へ無償で財産を譲り渡す契約のことを贈与といいます。例え、親子間であろうと夫婦間であろうと無償で財産をもらった場合は贈与となり1年間で110万円以上贈与された場合は贈与税がかかることになります。
●生活費や教育資金などは贈与税がかからない
親子間や夫婦間でも贈与税がかかるとなると、生活資金や教育資金を出してもらった場合はどうなるの?と不安になる方もあるかもしれません。普段の生活資金や教育資金にまで贈与税がかかってしまうとなってはたいへんです。そのため贈与税では扶養義務のある夫婦間や親子間などで生活費や教育資金を出してもらった場合などは税金がかからないという規定があるのです。ということは、大学の入学金や授業料が年間で110万円を超えたとしてもその必要な金額を必要な時期に親から子、祖父母から孫へ贈与する場合、贈与税がかかることはありません。これで安心して教育資金を出してもらうことができますね。
ただし、この規定を悪用しようとすると生活費や教育資金と偽って必要以上のものをあげて税金を逃れようとすることもできてしまいます。そのため、非課税となる金額は「生活費や教育資金として通常必要なもの」までと決められています。それを超えた場合は超えた部分について贈与税が課税されるということになります。
●いますぐ必要でない教育資金をまとめて先に贈与しておきたい場合
ここまでに確認したように、親や祖父母から子や孫へ教育資金を必要な都度、必要な金額を贈与するのであれば贈与税はかかりません。教育資金の贈与をする場合は必要な都度、必要な金額を出してあげるようにしましょう。
そうはいってもやはりまとめて将来の分まで贈与したいと考える方は平成25年4月より創設された「教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」を活用するといいでしょう。
この制度は30歳未満の子や孫の教育資金に充てるために、直系尊属から金融機関に信託等をした場合に、受贈者(もらった人)1人につき1500万円まで贈与税が非課税になるという制度です。
仕組み | 平成25年4月1日から平成27年12月31日までの間に金銭等を拠出し、金融機関に信託等をした場合に、1500万円までは贈与税を非課税とする |
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金融機関とは | 信託会社(信託銀行含む) 銀行 証券会社 |
払出しの確認等 | 教育資金を金融機関から払出した受贈者は、教育資金の支払いに充当したことを証明する領収書を金融機関に提出する |
対象となる教育資金 | 学校等(高校、大学、予備校、学習塾など)に支払う入学金や授業料
学校等以外に支払われる金銭のうち一定のもの(非課税となる金額は500万円まで) |
申告 | この特例の適用を受ける場合、「教育資金非課税申告書」を金融機関を通して、納税地の所轄税務署長へ提出すること |
受贈者が30歳に達した場合 | 非課税で拠出した金額から実際に教育資金の支払いに充当した金額を差し引いた残額については、贈与税が課税される。 |
一度にまとめて非課税で教育資金を贈与できるといっても、あくまで教育資金として使う必要があり(領収書の提出が必要)、現金で渡すのではなく金融機関に信託等をする必要もあります。また教育資金として支出されず残った残高には贈与税が課税されることになります。いずれにしてもしっかりと仕組みを理解して活用することが重要です。
石川 友紀
ファイナンシャルプランナー(CFP®)
株式会社家計の総合相談センター