文化講座
父子家庭への遺族年金
公的年金制度には、一家の大黒柱が亡くなった場合に、遺族の生活を助けるために遺族年金が支給されるという機能があります。国民年金から支給される遺族基礎年金は、これまで支給対象を『子のある妻』または『子』に限っていましたが、4月以降、『妻』を『配偶者』に改正し、父子家庭も遺族基礎年金の支給対象となりました。
夫が外で働き、妻は家で子育てという世帯が主流だった時代とは違い、共働きが一般的になってきているため、時代にマッチした制度に見直しがされたといえます。
当初、亡くなった人が第3号被保険者であった場合は、保険料の負担がなく、一家の大黒柱ではない養われている人だからという理由で、残されたのが夫でも妻でも遺族年金は支給しないという方針でした。第3号=専業主婦というイメージがありますが、実際には11万人の男性が含まれています。女性949万人と比較すると少数ではありますが、中には、長く大黒柱として働いていて保険料も納めてきた夫が、病気やリストラで仕事を続けられなくなり、一時的に第3号になっているケースもあります。第3号被保険者の死亡を支給対象外とすると、このようなケースの夫が亡くなった場合、これまでの制度で受け取れた遺族基礎年金が受給できなくなるため、最終的に、第3号被保険者死亡の場合も、支給対象となりました。
この結果、収入のない専業主婦の妻が亡くなった場合も遺族基礎年金が支給されることになりますが、共働き世帯の場合は、妻の収入も多く、夫婦の収入にあまり大きな差がないケースも珍しくないため、夫への遺族基礎年金支給拡大だけでは十分でない場合も考えられます。共働きの妻に万一があった場合、大幅に収入が減少するのに対して、住宅ローン・教育資金・老後資金は夫を中心に考えられている家庭が多く、夫が万一の場合の保障は十分でも、妻が万一の場合の保障が不足する家庭が多く見受けられます。公的な保障を再確認し、わが家にあった備えを考えてみましょう。
尚、遺族年金は夫や妻が死亡したからといって一律に受給できるものではなく、保険料の納付要件や「生計を同じくしていた」「遺族の年収が850万円未満」などの生計維持要件が必要となりますのでご注意ください。
森 朱美
ファイナンシャルプランナー(CFP®)
株式会社家計の総合相談センター