文化講座
私たちの身体と栄養(21)腎臓
2024年9月からは「私たちの身体と栄養」というテーマを取り上げています。私たちの身体には、心臓や肝臓、筋肉などのさまざまな臓器があり、臓器を作るための細胞が存在します。臓器や細胞は、協調してはたらき、私たちの生命や健康を維持するために機能しています。また、私たちが食べたものは、消化吸収された後、全身に運ばれて細胞や臓器がはたらくためのエネルギーとなります。本シリーズでは、身体の仕組みと栄養との関連について、解説していきます。前回は、多様なホルモンの産生臓器である副腎について解説しました。今回は、腎臓について取り上げます。
【腎臓】
腎臓は、背中側の腰の上辺りに左右1個ずつ存在します。右の腎臓の上部には肝臓があるため、右の腎臓の方が左の腎臓に比べて少し低い位置にあります。人の握りこぶしくらいの大きさで、そら豆のような形をしています。
豆の形の凹んだ部分を腎門といい、腎門には、尿管や動脈、静脈、神経、リンパ管が出入りしています(図1)。この腎臓の上には、副腎が被さるように存在しますが、腎臓とは機能が異なります。

図1. 腎臓の構造
腎臓は、背中側の腰の上辺りに左右1個ずつ存在する。右の腎臓の上部には肝臓があるため、右の腎臓の方が左の腎臓に比べて少し低く位置する。人の握りこぶし程度のそら豆のような形をしており、凹んだ部分(腎門)には尿管や動脈、静脈、神経、リンパ管が出入りしている。
腎臓は皮膜で覆われており、その中に皮質と髄質があります。表面部分が皮質、その内側が髄質です。皮質には、糸球体という微細な粒子が約100万個(左右で約200万個)集まっており、糸球体とそれを覆うボーマン嚢を合わせて腎小体といいます。ひとつの腎小体には尿細管が繋がっており、腎小体と尿細管を合わせてネフロンといいます(図2)。

図2. 腎臓の内部構造
腎臓は皮膜で覆われており、その中に表面側の皮質と内側の髄質がある。皮質には、糸球体という微細な粒子が多数存在し、糸球体とそれを覆うボーマン嚢を合わせて腎小体という。腎小体には尿細管が繋がっており、腎小体と尿細管を合わせたネフロンと構造を形成する。
【腎臓の役割】
① 尿を作る
腎臓は、絶えず尿を作っています。尿は、ネフロンという装置で血液を濾過して作ります。老廃物が混ざった血液が腎小体に入ってくると、糸球体で大まかに濾過されて原尿としてボーマン嚢に出てきます。糸球体での濾過は、物質の種類によって排泄物を分別しているわけではなく、大きさで分別されるため、漉し出された原尿には、血液に含まれる水やナトリウムなどのミネラル、ブドウ糖、ビタミンなどが含まれます。その後、尿細管で必要なものを再吸収して尿が作られます。
原尿は1日に150Lも作られていますが、尿細管でその99%が再吸収され、残りの1%が尿として体外へ排出されます。成人の場合、1分間に約1mLの尿が作られていて、尿細管が集まる集合管から出てきます。これが尿管を通って膀胱に送られます。成人の場合、1日の尿量は平均1.5L、排泄回数は5$301C7回、1回の尿量は200$301C400mL程度とされます。

図3. 糸球体による血液の濾過
老廃物を含む血液は、糸球体で濾過される。大きさによって分別されるため、タンパク質や赤血球などのサイズの大きいものは血液にとどまり、水や尿素、糖、ビタミン、老廃物などのサイズの小さいものが原尿として漉し出される。その後、尿細管で必要なものを再吸収して、尿を完成させる。
② 血圧を調節する
腎臓は、体内の水分量と塩分バランスを調節することで血圧を保っています。血圧が低下すると、腎臓からレニンが分泌され、アンジオテンシンⅠ、アンジオテンシンⅡが産生されます。アンジオテンシンⅡは血管を収縮させるとともに、副腎からアルドステロンの分泌を促します。アルドステロンは腎臓でナトリウムと水の再吸収を高め、血液量を増やして血圧を上昇させます。
また、脳(下垂体後葉)から分泌されるバソプレシンは水の再吸収を促進し、尿量を減らします。一方、血液量が増えすぎた場合には、心臓から分泌されるANPがナトリウムと水の排泄を促し、血圧を低下させます。このように腎臓は、ホルモンを介して他の臓器と連携しながら血圧を精密に調節しています。
③ 血液を作るよう指示する
腎臓は、エリスロポエチンという赤血球産生を増加させるホルモンを産生します。血液中の赤血球が不足して酸素不足になると、腎臓はエリスロポエチンを産生して、骨髄中での赤血球の産生を促します。一方、慢性腎臓病などで腎臓のはたらきが低下すると、エリスロポエチンの産生が不足することにより、赤血球を十分に産生できず、貧血になります。これを腎性貧血といいます。
④ 骨を強くする
ビタミンDは、骨密度を維持して骨粗鬆症や骨折の予防など、骨の健康に不可欠な栄養素です。鮭やイワシなどの魚類、キノコ類などの食物として摂取、あるいは日光を浴びて皮膚で合成されると、肝臓で代謝を受け、その後、腎臓で活性型ビタミンDに変換されます。
活性型ビタミンDは、カルシウム、リンの代謝に重要です。小腸でカルシウムおよびリンの吸収を高め、腎臓ではカルシウムの再吸収を増加させます。これにより、血中のカルシウムおよびリン濃度を上昇させ、骨形成を促進する方向に働きます。一方で、腎臓の機能が低下すると、活性型ビタミンDが不足してカルシウムの吸収が悪くなるため、骨がもろくなります。
【健康な腎臓のために】
近年、腎臓の働きの低下が続く慢性腎臓病を患う人が増加しており、日本では約2,000万人(成人の5人に1人)もの患者がいると推定されています。肥満や糖尿病、高血圧などの生活習慣病は腎機能を低下させることが明らかになってきています。また慢性腎臓病になると、心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患を引き起こし、命に関わるリスクが高まるだけでなく、最終的に透析や移植が必要な末期腎不全に至るリスクも高まります。
慢性腎臓病には、食生活も大きく影響します。エネルギーの過剰摂取による肥満・糖尿病、塩分の過剰摂取による高血圧、タンパク質の過剰摂取による老廃物の増加は、腎機能を低下させるため、過剰に摂取しすぎないことが重要です。
特に、塩分摂取が多いと高血圧になりやすいことはよく知られています。厚生労働省の食事摂取基準(2025年版)では、食塩摂取の目標値は、健康な人の場合、成人男性で7.5g未満、女性6.5g未満とされています。日本人の平均食塩摂取量は、男性10.7g、女性9.1gであることから、積極的な減塩が推奨されています。香辛料やハーブ類、柑橘系食材との組み合わせ、出汁の活用により、食塩摂取が少なくなるように心がけたいものです。

