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予防医学としての食を学ぶ

名古屋大学環境医学研究所助教・中日文化センター講師
医学博士・食医学者 伊藤 パディジャ 綾香

第13回 食物アレルギー

前回は、わたしたちの体を守る「免疫」について解説し、免疫が正常に働かなくなることで、様々な病気が発症することを述べました(第12回「わたしたちの体を守る免疫」参照)。そのひとつにアレルギーがあります。花粉症などのアレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、薬剤アレルギーなど、様々なアレルギーがあります。今から50年前には、日本ではこのようなアレルギーの人はほとんどいませんでしたが、今や国民の3人に1人は何かしらのアレルギーに罹っているといわれており、日本を含む先進諸国では大きな問題になってきています。そこで今回は、アレルギーのひとつである食物アレルギーについて解説致します。

【食物アレルギーとは】

免疫は、わたしたちの体に害をもたらすものから体を守るシステムですが、体にとって必要な食べ物に対して過剰に免疫システムが働いてしまうことがあります。摂取した食べ物が免疫を介して蕁麻疹(じんましん)や湿疹、下痢、咳、呼吸困難などの症状を起こしてしまうことを「食物アレルギー」といいます。食物そのものによる下痢や嘔吐はアレルギーではありません。例えば、腐ったものを食べて腹痛になるのは食中毒ですし、乳糖を消化できずに下痢を起こす病気があり、乳糖を含む牛乳などの乳製品によって起こるため、あたかも牛乳アレルギーのようですが、乳糖不耐症といい、食物アレルギーとは異なります。

【食物アレルギーの発症とアレルギーマーチ】

厚生労働省の調査によると、食物アレルギーは、子どもから大人まで幅広く認められていますが、1歳未満の乳児での発症が圧倒的に多いのが特徴です(図1、アレルギー 65: 942-946, 2016より)。また、乳児から幼児にかけては、卵や牛乳、小麦に対するアレルギーが多く、大人では、魚類、エビ、カニ、果物などに対するアレルギーが多くみられます。乳幼児期のアレルギーは、成長に伴う免疫機能の発達によって、小学校に入学する頃までに寛解する(病状が治る)ことが多いです。

一方で、大人になっても治らない場合もあります。また、アレルギーは年齢を重ねる毎に異なるかたちで症状が現れることもあります。例えば、食物アレルギーが治っても、ダニやハウスダストに対するアレルギー反応が出たり、花粉症になったりする場合もあります。このように、成長につれて、かたちを変えて次々とアレルギー疾患が出ることを「アレルギーマーチ」といいます。

【食物アレルゲン】

アレルギーを起こす原因となるものをアレルゲンといい、食物によって起こるアレルギーの場合、食物アレルゲンといいます。大部分はタンパク質であると考えられています。このため、アレルギーがある食品でも、加熱してタンパク質が変性する(タンパク質の構造や性質が変わる)ことによってアレルギー症状が出なくなる場合もあります。例えば、卵のタンパク質は、加熱によって変性しやすいため、加熱すればアレルギー症状が出ないこともあります(個人差がありますので、注意が必要です)。

現在、食物アレルギーに対しては有効な治療法がないため、原因となる食品(アレルゲン)を食べないことが予防や治療を行ううえでの原則となっています。そのため、加工食品や添加物については、表示が義務付けられているもの(7品目)や、推奨されているもの(18品目)があります(表1参照)。食物アレルギーがある人が加工食品や添加物を購入する場合は、以下の食品表示に気をつけると良いでしょう。ただし、惣菜などには表示されていない場合もありますので、注意が必要です。

【食物アレルギーに関して勘違いしやすい点】

基本的には、アレルゲンを除去した食事をすることが、アレルギー症状の発症を回避するための方法ですが、例えば、鶏卵アレルギーだからといって魚の卵を除去する必要はありません。鶏卵に含まれるタンパク質と魚に含まれるタンパク質は異なります。同様に、落花生アレルギーであっても他のナッツを食べられる場合もありますし、魚アレルギーであっても全ての魚に対してアレルギーを発症することは稀です。また、鶏卵アレルギーであっても鶏肉は食べられますし、牛乳アレルギーであっても牛肉は食べられます。食べられないものと食べられるものを認識して、栄養バランスが偏らないように工夫することが大切です。

【アレルギーを予防するために】

①タンパク質は加熱しましょう
 アレルギー症状のないものでも、たくさん食べ過ぎるとアレルギーを発症してしまうことがあります。タンパク質の多い食品は、生でたくさん食べ過ぎないように気をつけ、なるべく加熱して食べると良いでしょう。

②脂質の質に気をつけましょう
 オメガ6脂肪酸を摂り過ぎてオメガ3脂肪酸を十分に摂っていないと、脂肪酸バランスが悪くなってアレルギーを起こしやすいことが明らかになってきています(第10回「老いるオイルと老いないオイル(2)」参照)。サラダ油やコーン油、サフラワー油など、揚げ物や炒め物によく使うタイプのオメガ6脂肪酸を控えて、魚に含まれるEPAやDHAなどのオメガ3脂肪酸をたくさん摂るように心がけましょう。

③抗酸化物質を摂取しましょう
 ビタミンCやビタミンE、βカロテンのような抗酸化作用をもつ食品には、免疫機能を正常に保つような効果もあります。アレルギー症状を起こしにくいように免疫機能を調節してくれるので、野菜や果物を積極的に食べましょう。

④食物繊維不足に気をつけましょう
 食物繊維を摂取することによって、腸内細菌の栄養源となり、食物アレルギーの予防に役立つことが報告されています。食物繊維は、根菜類、野菜、穀物類、海藻類、こんにゃくなどに含まれます。いずれも現在、多くの日本人が不足気味ですので、意識して食べるようにしましょう。

【アレルギーを予防するための献立例】

魚のいぶし揚げ煮

カツオやタラのような魚に片栗粉をまぶして油で揚げたあと、甘酢あんでサッと煮からめた料理です。

(栄養のポイント)
魚にはEPA、DHAが含まれ、抗炎症作用や抗アレルギー効果が期待できます。
いったん揚げた魚を煮からめることによって、揚げ物特有のパサパサ感を防いで食べやすくなるでしょう。
魚を使うので、魚アレルギーの人には注意が必要です。アレルギーのない魚で代用すると良いでしょう。
ひじきと野菜の卵炒め

水で戻したひじきと、千切りにしたにんじん、セロリを卵炒めにした料理です。ごま油を使って香り良く仕上げましょう。

(栄養のポイント)
ひじきには、不足しがちな水溶性の食物繊維が含まれるので、整腸作用が期待できます。また、ひじきはカルシウムの宝庫。牛乳の10倍以上も含まれています。
にんじんには脂溶性ビタミンA(油に溶けやすいビタミンの一種)が含まれるので、少量の油で調理すると吸収率がアップします。
卵を使うので、卵アレルギーの人には注意が必要です。
スイカの杏仁豆腐

杏仁豆腐にスイカのシロップをかけたスイカの杏仁豆腐。寒天とゼラチンを混ぜて作ると、モチモチとした食感を楽しめるでしょう。

(栄養のポイント)
寒天から食物繊維が含まれ、整腸作用があります。
スイカには、たくさんの水分の他に、ミネラルやビタミン、糖分が含まれるので、夏の暑い時期には水分補給のためにも食べたい食材です。
牛乳を使うので、牛乳アレルギーの人には注意が必要です。
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