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インターネット公開文化講座

文化講座

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予防医学としての食を学ぶ

名古屋大学環境医学研究所/高等研究院 講師・中日文化センター
講師 伊藤パディジャ綾香

第44回 世界の長寿食(7)ハワイ

世界の食に学ぶ健康長寿の秘訣、7回目はハワイを取り上げます。WHO(世界保健機関)が2018年に報告した統計では、アメリカ合衆国(以下アメリカと省略)の平均寿命は78.6歳。世界には平均寿命が80歳以上の国が、30近くあるので、アメリカは長生きの国とは言えないかもしれません。ところが、州別に平均寿命を見てみると、ハワイの平均寿命は82.3歳と、アメリカ全州の中で最も長生き。世界的にも長生きなのです。ハワイの食生活から、長寿の秘訣を考えてみましょう。

順位 州名 男女平均寿命 男性平均寿命 女性平均寿命 白人系 ヒスパニック 黒人系 アジア系 アメリカ先住民
1 ハワイ 82.3 79.3 85.3 81.3 87.9 80.9 83.7 81.9
2 カリフォルニア 81.6 79.1 84.1 80.7 83.6 76 87.6 75.7
3 ニューヨーク 81.3 78.8 83.6 81 82.4 78 87.4 83.7
4 ミネソタ 80.9 78.7 83 81 83.4 79.3 86.8 69.9
5 コネチカット 80.9 78.3 83.3 80.6 82.9 78 87.2 83.6
6 マサチューセッツ 80.5 77.9 83 80.2 82.1 78.8 86.9 84.1
7 コロラド 80.5 78.3 83 80.6 81 77.2 87.9 74.2
8 ニュージャージー 80.4 77.9 82.9 80.2 82.7 74.8 87.2 84.1
9 ワシントン 80.4 78.3 82.6 80.1 81.7 78 84.3 74
10 フロリダ 80 77.9 82.7 79.9 82.1 76.1 86.1 81.6

表.アメリカ合衆国における州別の平均寿命(Robert Wood Johnson Foundation の調査)

【ハワイの基本知識】

ハワイ州は、太平洋に位置するハワイ諸島にあるアメリカ合衆国の州。州都はオアフ島にあるホノルル市。州都のあるオアフ島をはじめ、ハワイ州で一番大きな島であり、ビッグアイランドという愛称を持つハワイ島、マウイ島、カウアイ島、モロカイ島、ラナイ島、ニイハウ島、カホオラウェ島などの比較的大きな8つの島と、100以上の小島から成ります。

ハワイ語で「神様のいる場所」という意味のハワイ。夏は湿度が低く暑すぎないこと、冬は暖かいことから、年中過ごしやすいことなどから、アメリカ人はもちろん、日本やヨーロッパからも休暇で訪れる人が多い場所です。

2010年の人口はハワイ州全体で約136万人です。1800年代初頭に、カメハメハ大王の名で知られるカメハメハ1世が、ハワイ諸島を初めて統一してハワイ王国とし、初代国王になりました(写真右)。しかし現在は、ハワイ先住民やポリネシア系は10%以下となり、アジア系や白人系が多数派となっています。アジア系の中でも日系人が特に多く、日系人は1世から5世までいると言われています。


オアフ島ホノルル近くにある
カメハメハ1世像

【ハワイの食の特徴】

ハワイの食は、3つに大別することができます。1つ目は、伝統的なハワイ料理。先住民が食べていた食事で、ポリネシア料理に共通するものです。タロイモをペーストにして数日発酵させたものや、肉類をココナッツミルクで煮込んだもの、ポキ(あるいはポケ)と呼ばれる魚介類のマリネなどは、伝統的でありながら、今でも現地で食べられる料理です。

2つ目は、ロコ料理と呼ばれる地域の料理で、これは他国からの移民によって持ち込まれた食文化の影響を受けた比較的新しい料理と言えます。白いご飯の上にハンバーグとグレイビーソースをかけたロコモコという料理は日本でも有名です。サイミンという中華麺と干しエビのだしで作られたラーメンのような料理もよく食べられます。この他、スパムおにぎりや、ガーリックシュリンプ、骨付きカルビなどがあります。レストランに行かなくても、ショッピングモールのフードコートや郊外のフードトラックでも食べられますし、スーパーに行けば家庭で作られる食材を購入することができます(写真)。

ハワイのロコ料理①
左より、筆者・フードトラックの前にて、ガーリックシュリンプ、ロコモコ、骨付きカルビプレート

ハワイのロコ料理②
左より、マグロのステーキバーガー、ライスエッグベネディクト(マフィンの代わりにライスを使い、アボカド、ポーチドエッグ、マグロがのった料理)、ほうれん草のクリームソースクレープ、ハワイアンパンケーキ

3つ目は、パシフィック・リムという、1990年代に誕生した新しいハワイ料理。地元ハワイで採れる新鮮なシーフードや野菜を使って、アジアを中心とする各国の料理スタイルを取り入れ、全く新しいスタイルの料理を創出した料理です。ロイズというロイ・ヤマグチ氏のレストランや、アラン・ウォン氏のアラン・ウォンズ・レストランは代表的なものです。

【魚介類と海藻類】

ハワイではたくさんの魚介類や海藻類を食べます。特にポキと呼ばれる魚介類と海藻のマリネをよく見かけます。日本ではマグロ(現地語でアヒ)を使ったアヒポキが有名ですが、現地にはポキ専門店もあり、実にたくさんの種類が存在します。

魚介類はタンパク質源となるだけでなく、含まれる脂質はオメガ3系多価不飽和脂肪酸が豊富です。
特に、エイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)は、血中の中性脂肪やコレステロールを下げ、動脈硬化を予防する効果や、認知症予防の効果が報告されており、健康長寿に役立っているのでしょう。

さらに、海藻類を食べることにより、水溶性の食物繊維を摂ることができ、腸内の環境を整えていると考えられます。また、ポキには玉ねぎやセロリなどの野菜も入ります。さらにマリネするときには、塩分やにんにく、ねぎ、しょうが、チリソースあるいはチリパウダー、レモンやライムなどが入るため、暑い気候で食中毒を防止するような効果もあります。

マウイ島にあるポキ専門店
様々な種類のポキが売られている。マグロの他、カニ、タコ、トリ貝のような貝、あさりなど、10種類以上のポキがあり、それぞれ少しずつ味付けが異なる。

【野菜と果物】

現地の市場やスーパーに行くと、野菜や果物がたくさん売られており、現地の人が様々な食材を購入している様子を垣間見ることができます。

青いバナナは料理に使うことも。
アボカドは塩こしょうをかけ、レモンをたっぷり絞って食べるとそれだけでおいしいです。朝食からたくさんのフルーツを食べたり、野菜をおやつ代わりに食べたりするのも、健康的です。


オアフ島にあるスーパー・Whole Foods Market(左)とマウイ島の市場(右)にて

現地で食べられる果物
写真左より、フルーツボウル、果物の盛り合わせ(ぶどう、いちご、パイナップル、パパイヤ、メロン、グレープフルーツ)、アボカド(塩こしょうをかけて、レモンをたっぷり絞り、スプーンで食べるのがおすすめ)、バナナ(青いバナナは料理に使うことも)

【まとめ・ハワイの食に学ぶ長寿の秘訣】

ハワイの食に秘められた健康長寿の要素、私たちの日々の生活に取り入れられるものは見つけられたでしょうか。

  • 生の魚を含め、魚介類、海藻類を積極的に食べる
    生の魚を食べることが、オメガ3脂肪酸をより質の良い状態で食べるためのおすすめの食べ方です。いつもわさびじょうゆで食べるのも飽きてしまうので、海藻や野菜と香辛料を混ぜてポキにしてみてはいかがでしょうか。
  • 多様な食材からタンパク質を摂取する
    タンパク質は健康な骨や筋肉、皮膚、爪、髪の毛を維持するために必要な栄養素です。魚介類の他、牛肉、豚肉、鶏肉などの動物性の食品を食べることが大切。そして、ハワイでは、豆腐や味噌も食べます。豆腐や大豆製品の植物性のタンパク質源も併せて摂りましょう。動物性、植物性のタンパク質を組み合わせて食べることにより、よりバランス良くタンパク質を食べることができます。
  • 果物や野菜を積極的に食べる
    海藻だけでなく、野菜、果物をたくさん食べることによって、ビタミンやミネラル、食物繊維を摂ることができます。ビタミン、ミネラルは代謝を補助する役割があり、食物繊維は腸内の環境を整えるために重要な役割を果たしています(第43回「世界の長寿食(6)香港」参照)。

【ハワイ料理レシピ】

アヒポキ

刺身用のマグロを2cmくらいの角切りにします。もずくはサッと洗ってざく切りに、万能ねぎは小口切りに、玉ねぎはみじん切りにして水にさらします。全てボウルに入れて、コチュジャン、しょうゆ、しょうが汁少々とごま油を加え、和えます。

マグロの代わりに他の刺身や茹でタコなどでも、ポキを美味しく作ることができます。

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