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予防医学としての食を学ぶ

名古屋大学環境医学研究所/高等研究院 講師・中日文化センター
講師 伊藤パディジャ綾香

食の安全について考える(9)健康食品

2023年9月からは「食の安全について考える」というテーマを取り上げています。私たちは日々、食品を食べて生きており、食生活は、住んでいる場所や気候、個人の生活習慣、好き嫌い、経済状況などを反映しています。いかに食の安全を確保するかは、私たちの健康を左右する大きな要因のひとつです。本シリーズでは、食の安全について考え、ご自身の食生活をより豊かにできるよう、情報をお伝えしていきたいと思います。今月は、健康食品を取り上げ、解説します。

【健康食品とは】

健康食品とは、広く健康の保持増進に資する食品として販売・利用されるものの総称です。近年、食生活による病気の予防や、健康増進に対する関心が高まっており、市場には多種多様な健康食品が流通しています。しかし、「健康食品」は法令上の定義がない言葉であり、いわゆる「健康食品」の中には、健康の保持増進の期待や、製品としての安全性が確認されているものもあれば、そうでないものも存在します。

健康食品には、飲料や菓子類、調味料など、一般的な食品と同じ形態のものから、錠剤やカプセルなど、医薬品に似た形態の、いわゆるサプリメントと呼ばれるものまで多岐にわたりますが、全て「食品」に位置づけされます。一部は、国の制度に基づいて健康の維持・増進に役立つ食品の機能性等が表示されているものもあり、保健機能食品と呼ばれます(図1)。

ごく最近、健康食品に関する問題が話題になっているように、「食品」だから安全とは限りませんし、医薬品とは異なるため、製造責任者に品質管理が任されているという問題もあります。また、大量に摂取することにより、健康が害される可能性もあります。

図1. 健康食品の分類(消費者庁資料より改変)
健康食品は、健康の保持増進に資する食品として販売・利用されるものの総称であり、国の制度に基づいて機能性が表示される保健機能食品と、その他の健康食品に分けられる。いずれも食品であり、医薬品とは異なる。

【保健機能食品】

食品の機能が表示されている保健機能食品には、栄養機能食品、機能性表示食品、特定保健用食品の3種類があります(図1)。 いずれも国が定めた安全性や有効性に関する基準に従って登録される必要があります。保健機能食品の容器包装には、必ず「栄養機能食品(栄養成分名)」「機能性表示食品」「特定保健用食品」という表示があります。一方、一般食品には、健康維持・増進に関する機能を表示することができませんので、保健機能食品とそうでない食品を見分ける際の確認に役立てたり、国や事業者による安全性や機能性の裏付けがある製品を選ぶ際の目安にしたりすると良いでしょう。

(栄養機能食品)
栄養機能食品は、人での安全性と効果の科学的根拠が明らかとなっている、ビタミンやミネラルなどの栄養素について、その含有量が国の基準を満たしていれば規定の栄養機能が表示できる食品です。国が定める定型文で栄養成分の機能が表示されます。

機能に関する表示を行うことができる成分は、以下の通りで、「栄養機能食品(◯◯(栄養成分名))」のように表示されています。

・脂肪酸(1種類)
n-3系脂肪酸
・ミネラル(6種類)
亜鉛、カリウム、カルシウム、鉄、銅、マグネシウム
・ビタミン(13種類)
ナイアシン、パントテン酸、ビオチン、ビタミンA、ビタミンB1、
ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、
ビタミンE、ビタミンK、葉酸

(機能性表示食品)
機能性表示食品は、事業者の責任において、科学的根拠に基づいた安全性や機能性などの情報を販売前に消費者庁に届け出て、機能性を表示した食品です。後述の特定保健用食品とは異なり、消費者庁長官の個別の許可を受けたものではなく、事業者の責任において安全性や機能性が評価されています。「本品は、◯◯が含まれるので、□□の機能があります」のような表示がされています。

(特定保健用食品)
特定保健用食品は、いわゆる「トクホ」と呼ばれるもので、国により、人での安全性と効果を個別製品として審査し、消費者庁長官により保健機能(健康の維持や増進に役立つ効果)の表示が許可された食品です。

製品には、「お腹の調子を整える」「血圧が高めの方に適する」などの許可を受けた機能とともに、特定保健用食品のマークが表示されています(右)。

特定保健用食品には、通常のものに加えて、以下のような種類もあります。

・特定保健用食品(疾病リスク低減表示)
関与成分が特定の疾病リスクを低減する効果が医学的・栄養学的に確立されており、疾病リスクを低減する旨の表示が認められた食品

・特定保健用食品(規格基準型)
特定保健用食品としての許可実績が十分であるなど、科学的根拠が蓄積されており、消費者庁の事務局において、定められた規格基準への適否が審査された食品

・条件付き特定保健用食品
特定保健用食品の審査で求めている科学的根拠としての有効性レベルには届かないものの、一定の有効性が確認され、限定的な科学的根拠である旨の表示をすることを条件として許可された食品

【その他のいわゆる健康食品】

保健機能食品以外の、サプリメント、栄養補助食品、健康補助食品、自然食品などの名称は、国が制度化しているものではなく、表示の許可や認証、届出といった規制がありません。それゆえ、これらの食品には、保健機能食品と紛らわしい名称や栄養成分の機能、特定の目的が期待されるような用語の表示をしてはならないと定められています。

【健康食品は医薬品とは異なります】

健康食品は、医薬品ではありません。健康食品の中には、錠剤やカプセル状のものなど、医薬品のような見た目のものも存在します。しかし、健康食品と医薬品は異なるものであり、健康食品を医薬品の代わりに使用することはできません。

健康食品の中には、医薬品成分やそれに類似した成分を違法に添加した「無承認無許可医薬品」があり、健康被害が出て問題になるような事例が報告されています。2023年には健康茶からステロイド成分が検出されたという事例があります。

医薬品は、販売するのに認可が必要であり、安全性と有効性、品質を審査する過程があります。また、専門家による使用方法の指示や監視のシステムがあることや、健康被害があった場合の補償制度があります。一方で、食品は、許認可制ではなく、健康被害に対する補償制度もありません。食品の安全性は消費者に任されているため、消費者である私たち自身が気をつける必要があります。

【まとめ】

今回は、健康食品の分類と医薬品との違いについて解説しました。食による健康増進や病気の予防は大切なことですが、健康食品の取り入れ方に留意しないと、かえって害をもたらすこともあります。次回は、健康食品を購入・使用する際の問題点とポイントについて解説します。

参考資料

  • 食品安全委員会事務局「いわゆる「健康食品」について」
  • 国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所「健康食品」の安全性・有効性情報
  • 消費者庁「栄養や保健機能に関する表示の制度について」
  • 厚生労働省「いわゆる「健康食品」のホームページ」
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