文化講座
私たちの身体と栄養(16)感覚器 - 目・耳・鼻
2024年9月からは「私たちの身体と栄養」というテーマを取り上げています。私たちの身体には、心臓や肝臓、筋肉などのさまざまな臓器があり、臓器を作るための細胞が存在します。臓器や細胞は、協調してはたらき、私たちの生命や健康を維持するために機能しています。また、私たちが食べたものは、消化吸収された後、全身に運ばれて細胞や臓器がはたらくためのエネルギーとなります。本シリーズでは、身体の仕組みと栄養との関連について、解説していきます。前回までの2回では、全身の司令塔である「脳」と、脳と全身の間の情報伝達を担う「脊髄と神経」について取り上げました。今回は、外界からの情報を正しく受け取るための「感覚器」について、特に目と耳、鼻について取り上げます。
【感覚器について】
外界の変化を感知するための感覚機能を五感といい、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚があります。
視覚は目、聴覚は耳、嗅覚は鼻、味覚は舌、触覚は皮膚などのように、それぞれの感覚を受信する器官のことを感覚器といいます。感覚器で得られた情報は、脳などの中枢神経系に伝えられます。この時に情報伝達する神経を感覚神経と呼びます。
【視覚を感知する目】
視覚の情報を感知するのは目です(図1)。光は、眼球の黒目の部分の表面に存在する角膜を通って、瞳孔(どうこう)、水晶体を通過して網膜に当たります。角膜は、目に入ってくる光を屈折させる役割を、水晶体はレンズの役割を果たしており、水晶体の厚さを変えることによってピントを合わせています。また、瞳孔の大きさは、自律神経によって調節されていて、明るいところでは縮小して光が入りすぎないように、暗いところでは拡大して多くの光を取り入れるように調節されます。角膜と水晶体で得られた光は、眼球奥の網膜に伝わります。この情報は、視神経を通って大脳に伝達され、ものが見えています。
網膜には、光を感知するための2種類の細胞(視細胞という)が存在します。錐体(すいたい)細胞と桿体(かんたい)細胞です。錐体細胞には、赤、緑、青を感知する3種類の細胞が存在し、色を感知しています。また桿体細胞は明るさを感知しています。
桿体細胞が光を感知する際に「ロドプシン」という物質が、重要な役割を担っています。ロドプシンは、ビタミンAによって構成されており、ビタミンAが欠乏すると、ロドプシンが不足することによって、光刺激を受容することができず、暗い場所で見えにくくなる「夜盲症」の原因となります。

図1. 目の構造
光は、角膜、瞳孔(どうこう)、水晶体を通過して網膜に当たる。情報が、視神経を通って大脳に伝達されることにより、ものが見える。
【聴覚を感知する耳】
聴覚の情報を感知するのは耳です(図2)。耳は、顔の両側に張り出している耳だけでなく、外耳、中耳、内耳に分けられ、外耳と中耳は音を伝える役割を、内耳は音を感知する役割を果たしています。音は外耳道を通って鼓膜を振動させます。鼓膜の振動は、その奥の中耳にある耳小骨に伝わって音の大きさを調整した後、蝸牛(かぎゅう)から聴神経を通って大脳に伝わります。

図2. 耳の構造
耳は、外耳、中耳、内耳に分けられる。音は、外耳道を通って鼓膜を振動させ、中地にある耳小骨、蝸牛を介して聴神経を通って大脳に伝達されることにより、音が聞こえる。
【嗅覚を感知する鼻】
嗅覚の情報を感知するのは鼻です。嗅覚は、最も原始的な感覚と言われています。鼻腔全体で嗅覚を感知するのではなく、鼻腔の天井にある嗅上皮というところで感じています。嗅上皮には、匂いの情報を感知する嗅細胞と、それを支える支持細胞があり、粘液を出すための腺が存在しています。嗅細胞で捉えられた匂いは、大脳に伝えられます。
風邪などで鼻が詰まると匂いがわからなくなるのは、嗅上皮のところまで匂いの成分が漂ってこないからです。

図3. 鼻の構造
鼻腔の天井にある嗅上皮では嗅細胞によって匂いが捉えられ、大脳に伝達されることにより、匂いを感じる。

