文化講座
私たちの身体と栄養(19)甲状腺・副甲状腺
2024年9月からは「私たちの身体と栄養」というテーマを取り上げています。私たちの身体には、心臓や肝臓、筋肉などのさまざまな臓器があり、臓器を作るための細胞が存在します。臓器や細胞は、協調してはたらき、私たちの生命や健康を維持するために機能しています。また、私たちが食べたものは、消化吸収された後、全身に運ばれて細胞や臓器がはたらくためのエネルギーとなります。本シリーズでは、身体の仕組みと栄養との関連について、解説していきます。前回は、私たちの体内のさまざまな機能を調節するホルモン産生において重要な役割を担っている視床下部と脳下垂体について取り上げました。今回はホルモンの中でも代謝調節において重要なホルモンを産生する甲状腺と副甲状腺について取り上げます。
【甲状腺と副甲状腺】
甲状腺と副甲状腺は、のどぼとけの下あたりに張り付いている内分泌腺です。甲状腺は、蝶が羽を広げたような形をしており、甲状腺の後ろに4つ、副甲状腺が存在しています(図1)。甲状腺からは甲状腺ホルモンとカルシトニンが、副甲状腺からはパラソルモンというホルモンが産生されます。甲状腺ホルモンは全身の代謝を活発にするホルモン、カルシトニンとパラソルモンは血中のカルシウム濃度を調節するホルモンとして、私たちの健康維持に寄与しています。

図1. 甲状腺, 副甲状腺とホルモン
甲状腺からは、代謝を活発にする甲状腺ホルモンと、血中カルシウム濃度を下げるカルシトニンが、副甲状腺からは、血中カルシウム濃度を上昇させるパラソルモンが産生・分泌される。
【甲状腺ホルモン】
甲状腺ホルモンは、代謝を活発にするホルモンです。全身の骨格筋や内臓に働きかけ、熱産生を促します。その結果、体温が上昇し、代謝に必要な酸素を取り込んで全身に送るため、呼吸や心拍数が速くなります。
甲状腺ホルモンには、トリヨードサイロニン(T3)とサイロキシン(T4)があります。寒冷刺激などによって、視床下部から甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)が分泌されると、脳下垂体が刺激され、脳下垂体からは甲状腺刺激ホルモン(TSH)が分泌されます。TSHによって甲状腺が刺激されると、甲状腺内でT3とT4が作られます。作られた甲状腺ホルモンは、血液によって全身に運ばれ、代謝促進作用を発揮します。加えて、血液中の甲状腺ホルモン濃度が上がると、視床下部や脳下垂体に作用し、TRHやTSHの分泌を抑制することによって、ホルモンを作りすぎないような仕組みが備わっており、これをネガティブフィードバックと呼びます(図2)。
甲状腺ホルモンの分泌が過多になる、甲状腺機能亢進症やバセドウ病などでは、代謝が異常に高まり、動悸や多汗、体重減少、食欲亢進、眼球突出などの症状が現れます。一方、甲状腺ホルモンの分泌が不足する、甲状腺機能低下症や橋本病などでは、代謝が低下して体温が下がったり、疲労や寒気、むくみを感じやすくなったり、便秘や体重増加の症状が現れます。

図2. 甲状腺ホルモンの調節
甲状腺ホルモン(T3, T4)は、視床下部から分泌される甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)および脳下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモン(TSH)によって産生調節される。一方、血液中の甲状腺ホルモンの上昇によって、視床下部、脳下垂体からのTRH、TSHの分泌を抑制するためのネガティブフィードバック制御が働く。
【カルシトニン】
カルシトニンは、甲状腺内で産生されるホルモンですが、甲状腺ホルモンが産生される場所とは異なる場所で作られます。血液中のカルシウム濃度は一定に保つ必要があるため、カルシウム濃度が上昇すると甲状腺で産生、分泌されます。これにより、骨形成を促進し血液中に存在するカルシウムを骨に貯蔵させると共に(「私たちの身体と栄養(2)骨」参照)、腎臓からカルシウムを排出して血中のカルシウム濃度を低下させます。
【パラソルモン】
カルシトニンとは逆に、血液中のカルシウム濃度を下げる働きをするホルモンで、副甲状腺から分泌されます。血液中のカルシウム濃度が低下すると分泌され、骨吸収を促進して破骨細胞による骨の破壊を介して骨の中のカルシウムを血液中に補います。これと共に、腎臓での再吸収を促進して、血液中のカルシウム濃度を維持しています。

