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インターネット公開文化講座

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予防医学としての食を学ぶ

名古屋大学環境医学研究所/高等研究院 講師・中日文化センター
講師 伊藤パディジャ綾香

私たちの身体と栄養(20)副腎

2024年9月からは「私たちの身体と栄養」というテーマを取り上げています。私たちの身体には、心臓や肝臓、筋肉などのさまざまな臓器があり、臓器を作るための細胞が存在します。臓器や細胞は、協調してはたらき、私たちの生命や健康を維持するために機能しています。また、私たちが食べたものは、消化吸収された後、全身に運ばれて細胞や臓器がはたらくためのエネルギーとなります。本シリーズでは、身体の仕組みと栄養との関連について、解説していきます。前回は、私たちの体内の恒常性維持に欠かせない内分泌系において、代謝調節に重要なホルモンを産生する甲状腺と副甲状腺について解説しました。今回は、副腎について取り上げます。

【副腎】

副腎は、左右の腎臓の上部に帽子を被ったように存在しています。副腎は、外側を構成する皮質と内側を構成する髄質に分けられます。同じ器官でありながら、皮質と髄質は異なる細胞に由来しており、皮質は骨や筋肉、血管などと同じ由来の細胞集団から、髄質は皮膚や神経、感覚器などと同じ由来の細胞から作られています。また、皮質と髄質では全く異なるタイプのホルモンを分泌しています(図1)。

図1. 副腎の構造と産生されるホルモン

副腎は、皮質と髄質に分けられ、皮質からは電解質コルチコイド、糖質コルチコイド、アンドロゲンが、髄質からはカテコールアミンが産生・分泌される。

【副腎で産生されるホルモン】

副腎では、多様なホルモンが産生されています(図1)。副腎皮質では、コレステロールを原料として作られるステロイドホルモンのグループが産生されます。副腎皮質の中でも、最も外側に位置する球状帯からは、電解質コルチコイド(またはミネラルコルチコイド)であるアルドステロンが、球状帯の内側にある束状帯からは糖質コルチコイドであるコルチゾールやコルチゾンが、さらに内側の網状帯からは男性ホルモンであるアンドロゲンが産生されます。また、副腎髄質からはカテコールアミンであるアドレナリンとノルアドレナリンが産生されます。これらのホルモンは分泌されると、血液を介して全身に運ばれ、標的器官で受容体を介して作用しています。

【電解質コルチコイド(ミネラルコルチコイド)】

主として働くのは、アルドステロンというホルモンで、副腎皮質の球状帯で産生、分泌されます。腎臓に作用してカリウムの排泄とナトリウムの再吸収を促すことにより体液バランスを調節しています。

アルドステロンが過剰に分泌されると、高血圧や低カリウム血症、筋力低下などが認められます。代表的な疾患に、原発性アルドステロン症や腎血管性高血圧、悪性高血圧などがあります。一方、アルドステロンの分泌が不足すると、低血圧や低ナトリウム血症、高カリウム血症などが認められます。代表的な疾患にアジソン病などがあります。

アルドステロンの産生は、脳下垂体から分泌される副腎皮質刺激ホルモンによって、その一部が調節されていますが、主な調節はレニンーアンジオテンシンーアルドステロン系によって行われています。この主経路では、腎臓への血流量や血圧の低下によって腎臓でレニンという酵素ができると、レニンによってアンジオテンシンが産生され、アンジオテンシンが副腎を刺激してアルドステロンの産生を刺激するという調節が行われています。

【糖質コルチコイド(グルココルチコイド)】

主として働くのは、コルチゾールというホルモンで、副腎皮質の束状帯で産生、分泌されます。

糖質コルチコイドは甲状腺ホルモンと同様に、分泌ホルモンが過多になると視床下部や脳下垂体に作用し、ホルモン産生量を減少させるというネガティブフィードバック制御がはたらきます。これにより適切なホルモン分泌量を維持しています(「私たちの身体と栄養(19)甲状腺・副甲状腺」参照)。

コルチゾールには、炎症を抑制するはたらき(抗炎症作用)があります。炎症抑制薬として広く使用されているステロイド薬は、コルチゾールの作用を強めて合成された薬であり、皮膚炎などの局所的な炎症時だけでなく、全身に炎症が起こる関節リウマチや気管支喘息などの病気においても治療薬、免疫抑制剤として使われています。

また、糖質コルチコイドという名の通り、糖質代謝を調節するホルモンでもあります。特に、肝臓における糖の合成(糖新生)を促進して血糖を上昇させる作用があります。糖質コルチコイドは、筋肉においてタンパク質を分解、脂肪組織において中性脂肪を分解し、分解物であるアミノ酸やグリセロールとして血中に放出させ、それらを肝糖新生の材料として肝臓に運び込みます。結果として、肝臓では糖を作って放出し、血糖値を上昇させることになります。

肉体的、精神的ストレスを感じると、副腎からコルチゾールが分泌されるため、血糖値が上昇し、脳や筋肉などへの糖の供給が可能となり、急性ストレスに対応することができます。一方、抗炎症薬として知られるステロイド薬でありますが、慢性的なストレスによるコルチゾールの分泌は、炎症の持続や、炎症を伴う疾患の発症につながります。またコルチゾールは、骨を作る骨芽細胞の増殖や分化を阻害し、骨形成を低下させます。ステロイドの長期投与によって骨が弱るのは、このためです。

【アンドロゲン】

アンドロゲンは、いわゆる男性ホルモンで、副腎皮質の網状帯で産生、分泌されます。男性ホルモンとして知られますが、男女ともにアンドロゲンが分泌されています。アンドロゲンは、性機能の発達や体毛の濃さ、皮脂の分泌などを調節しているホルモンです。

【カテコールアミン】

副腎髄質で産生、分泌されるホルモンで、アドレナリンとノルアドレナリン、ドーパミンがありますが、主にはアドレナリンが分泌され、その残りの大部分がノルアドレナリンです。アドレナリンは、心臓にはたらいて心拍数や心拍出量を増やし、血圧を上昇させる効果があります。ノルアドレナリンも血圧を上昇させますが、主に血管平滑筋に作用することにより血圧を上昇させています。またアドレナリン、ノルアドレナリンともに、肝臓にはたらいてグリコーゲンの分解を促進し、血糖値を上昇させる効果があります。

ストレスを感じると、自律神経を介してアドレナリンやノルアドレナリンが分泌され、血圧や血糖値を上昇させることによってストレスに対処しようと体が応答します。しかし、糖質コルチコイドと同様、慢性的あるいは過剰なストレスは、アドレナリンやノルアドレナリンの過分泌が持続することとなり、肉体的なストレスや免疫応答の異常をもたらすと考えられます。ストレスを感じすぎないように、溜め込まないように生活したいものです。

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