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予防医学としての食を学ぶ

名古屋大学環境医学研究所/高等研究院 講師・中日文化センター
講師 伊藤パディジャ綾香

私たちの身体と栄養(18)視床下部・脳下垂体

2024年9月からは「私たちの身体と栄養」というテーマを取り上げています。私たちの身体には、心臓や肝臓、筋肉などのさまざまな臓器があり、臓器を作るための細胞が存在します。臓器や細胞は、協調してはたらき、私たちの生命や健康を維持するために機能しています。また、私たちが食べたものは、消化吸収された後、全身に運ばれて細胞や臓器がはたらくためのエネルギーとなります。本シリーズでは、身体の仕組みと栄養との関連について、解説していきます。前回までの数回では、脳、神経、感覚器官について取り上げました。私たちの体内のさまざまな機能は神経だけでなくホルモンによっても調節されています。今回はその調節において司令塔とも言える重要な役割を担っている視床下部と脳下垂体について取り上げます。

【視床下部】

視床下部は、間脳に位置し、内分泌や自律機能を調節する中枢です。視床下部は、体温調節や摂食行動、睡眠・覚醒、水分バランス、ストレス応答、感情、性行動といった広範かつ生命維持に不可欠な機能を制御する司令塔の役割を果たしています。視床下部には、神経核と呼ばれるニューロンの塊がいくつも存在しており、その一部はホルモン分泌に、一部は自律神経の働きに関与しています。

例えば、身体に何らかのストレスが加わると、血圧や心拍数の増加、胃腸の動きの低下や亢進などの自律神経系を介した生体反応が起こります。それに加えて、視床下部から脳下垂体、副腎を介してストレスホルモンとも呼ばれる副腎皮質ホルモンを分泌することによる内分泌系の反応が起こります。また、自律神経の活動が内分泌ホルモンの産生や分泌に影響することもあります。視床下部は、周囲の環境や体内の状態に応答して、内分泌系と自律神経系を協調させて作用させることにより、生体全体の恒常性を維持しています。

視床下部による内分泌系の調節は、ホルモンを介して行われます。視床下部から分泌されたホルモンは、血液を介して脳下垂体に運ばれ、脳下垂体の働きを調節します。これらのホルモンには、下垂体からのホルモン分泌を促進するものと、抑制するものがあります。視床下部が個々の臓器に直接指示を出すわけではなく、脳下垂体を中継点として利用することで、全身の内分泌系を統合的にコントロールしているのです。

【脳下垂体】

脳下垂体は、前葉と後葉に分けられます。視床下部から分泌されたホルモンにより脳下垂体が刺激されると、前葉からは、成長ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、副腎皮質刺激ホルモン、性腺刺激ホルモン、プロラクチンが分泌されます。後葉からは、抗利尿ホルモンであるバソプレシンとオキシトシンが分泌されます。バソプレシンとオキシトシンは、視床下部によって作られたものが脳下垂体後葉に蓄積され、必要に応じて分泌されます(図1)。

成長ホルモンや副腎皮質刺激ホルモン、プロラクチンの分泌は概日リズムをもって変動していますし、女性の性腺刺激ホルモンである黄体形成ホルモンと卵胞刺激ホルモンの量は月経周期で変化します。

図1. 脳下垂体の構造とホルモン

脳下垂体の前葉からは、成長ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、副腎皮質刺激ホルモン、性腺刺激ホルモン、プロラクチンが、後葉からは、抗利尿ホルモンであるバソプレシンとオキシトシンが分泌され、全身の機能を調節している。( )内は、脳下垂体からのホルモンを受容する器官。

【ホルモン分泌を制御する視床下部―脳下垂体】

ホルモンとは、わたしたちの身体の機能を調節する情報伝達物質で、上述の視床下部や脳下垂体から分泌されるものを含めて100種類以上が存在します。古代ギリシャ語 hormaein(刺激する, 興奮させる)を語源に命名されました。体内で血液中に分泌されることから、内分泌と呼び、汗などに分泌される外分泌と対比されます。ホルモンと、それを分泌する内分泌腺を内分泌系といい、内分泌腺には、視床下部、脳下垂体、甲状腺、副腎、膵臓、卵巣、精巣などがあります(図2)。それ以外にも、消化管、肝臓、脂肪組織、筋肉、腎臓、骨からもホルモンが分泌されることが明らかとなってきています。

図2. 全身の内分泌器官

全身の機能は、神経系、免疫系のほか、内分泌系によっても調節されている。内分泌ホルモンは、全身の内分泌器官から分泌されており、視床下部と脳下垂体は、その司令塔の役割を果たしている。

【ホルモンのはたらき方】

神経系が短時間での情報伝達を強みとする一方、内分泌系は神経のように迅速ではないものの、持続的に効果を発揮することができます。ホルモンは、分泌されると血液によって全身に運ばれます。特定の細胞には、ホルモンにピッタリと合致する受け手(受容体)が発現しています。ホルモンには、水溶性のものと脂溶性のものがあります。前者の受容体は細胞膜表面に、後者の受容体は細胞内に存在しており、ホルモンが受容体に結合すると、細胞に情報を伝達します。

水溶性ホルモンには、ペプチドホルモンやアミノ酸誘導体ホルモンがあり、前者には成長を促す成長ホルモンや血糖をさげるインスリンなど大部分のホルモンのほか、免疫細胞に作用するサイトカインも含まれます。後者には、副腎髄質ホルモン(アドレナリン, ノルアドレナリン)、甲状腺ホルモンがあります。脂溶性ホルモンには、副腎皮質ホルモン、性腺ホルモン、ビタミンD3などステロイドホルモンのほか、プロスタグランジンなどのエイコサノイドがあります。

ホルモンの量は厳密に制御されており、多すぎても少なすぎても問題になります。量が多いと機能亢進・ホルモン過剰となり、少ないと機能低下、ホルモン欠乏となります。薬を服用中の場合は、容量・用法を守ることが大切です。

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