文化講座
浜木綿の重ねの理美
図版[I]
図版[II]
浜木綿は、真白な細長い六弁の花を十輪ほど咲かせ、その姿がまさに
そして、緑々とした幅広の葉の姿が
そんな浜木綿の木綿なる花を図版[I]で、おおらかな葉と花を、手付の牡丹篭に挿け表した作品を図版[II]で参照してください。
『万葉集』では、
(み熊野の浦の浜木綿のように幾重にも心は恋しく思うが、じかに逢うことができないことよ)と歌われ、ここでの「百重なす」は、まさに浜木綿の木綿幣の如く折り重なり咲く花の姿をして逢いたい人への絶えない思いの深さを
そしてこの歌が詠まれた紀州・熊野の太平洋に面した海は、古代より神が
集中での浜木綿の歌はこの一首のみで、他の歌の中に「心には
こうした神的なことから、浜木綿の葉表に恋しい人の名を書き、枕の下に敷いて寝ると、必ず恋しい人が夢に出てくるとしたことが、後の歌から拾い出すことができます。
どうか、この夏の季には、大海原を訪れては神聖なる浜木綿を観し、花や葉に向かって恋などの願いを千重にも百重にも高らかに重ね発して、願いを成就させてみてください。