文化講座
小水葱の理美
夏から秋へと向かう季、水田や池や沼などには、
小水葱は、
そして、その葉姿が熊笹のようであることから別名を「
その菜の情景を『万葉集』で「
(春霞だった春の日の里に植えた小水葱は、まだ苗だといっていたが、もう茎も高く伸びたでしょうか)と、春の温もりが高くなるのにつれて初々しく生長している小水葱の姿を観して、二人の嬢たちも大人となり、求婚する年頃であることに比喩させて詠ぜられております。
そして、その小水葱の夏の終へる頃の生長した姿を観し、
(上野の伊香保の沼に植えた小水葱のような女の
図版[I]
図版[II]
(苗代に咲く小水葱の花を衣に摺り染めにして、衣がなじむにつれて、馴れつつある
その可愛らしき小水葱の図を江戸時代の『本草図譜』の図を、図版[I]で参照して見て下さい。
そして、江戸時代後期頃の美濃焼による型紙染付の小鉢に、小水葱を挿けた作品を、図版[II]で観してみて下さい。
どうぞ、この季には、お近くの水田や池などに出掛けては、瑞々しく愛くるしき小水葱の花を観しては、清らかな心を得て過ごして見て下さい。