文化講座
椿の重ねの美学
2月は立春に始まり、次の雨水の訪れで草木たちは芽吹き花を開かせ、そんな中に椿も美しく照り輝かせながら咲き匂います。
そもそも椿の字は国字であり、その名も「艶葉 の木」から成り、日本の春を示す代表的な花木であります。そして、その歴史も古く今から6,000年前の縄文時代の石斧 の柄や櫛などに薮 椿が使われておりました。
そもそも椿の字は国字であり、その名も「
図版[1]
『
天保15年(1844年)
図版[2]
『
天保6年(1835年)
そんな椿を『万葉集』で
そして、集中9首のうち「つらつら椿つらつらに」と「椿つらつらに」を合わせて三首詠まれており、ここでの艶やかに照り輝く葉と花の連ね重なる姿を詠むことで、「ひたすら・ことのほか」といった願いを叶えん事が込められているのです。こうした重ね意の表現は、日本の祝事での、祝い袋や重箱などに見られる重ねの美学を生み出すのです。
そうした連なる葉と花の椿をいけ表したもの、いけばなの古書から紐解けます。花は、「元服」の言祝花として白玉椿が美しい
そして次の歌でも
こうした重ねの美学とは異なる「一花一葉」の椿をいけたものが古書から拾い出せます。図版[2]を参照して下さい。
この春には、古代人が神霊として崇めた薮椿の連なる美しさを観しながら「つらつら椿つらつらに」と声高らかに美音を発して、言祝ぎの春を迎えてみて下さい。