文化講座
馬酔木の理美
この季、奈良の春日大社を拝して、春日の森「
この馬酔木は、字の如く馬が葉を喰むと酔ってしまい、足に合せて体の気力がぐったりすることから名付けられ、別字として「
その一首として「春の
(私が私の夫を恋しく思うことは、奥山に咲く馬酔木の花のように、今が真っ盛りです)と、美しく咲き薫う馬酔木の花に恋心を比喩させて歌われているのです。
そして、次の長歌として「
と歌われ、「おしてる」は「難波」の枕詞で、(難波を経て、草香の山の草が風に靡びき、その夕暮に私が越えて来ると、山も
そんな美しく咲き薫ふ花を、次の「
(池水に影までも映して美しく咲きほこる馬酔木の花を、しごき取って袖に入れよう)と歌われ、題の「山斎を属目」とは庭園を眺めて作られた歌を示します。
図版[I]
どうぞ、この春の季には、奈良の春日大社の杜に訪れて、小径に美しく咲き薫う馬酔木の清らかな花を観しながら、そして時折り鹿の鳴き声を聞くことにより、鹿の恋心のたかなりと、恋の成就を感じさせてくれます。