文化講座
レッスン 40 イタリア語の動詞について
その1 人称と時制と話法について
ヴェネチア:ラファエルロの「聖母子と幼児聖ヨハネ(通称:若き美しき女庭師)」が描かれた織物
Venezia / Tessuto Gobelin disegnato su Madonna col Bambino e San Giovannino(detto La bella giardiniera) di Raffaello Sanzio
レッスン 40 イタリア語の動詞について
その1 人称と時制と話法について
I. 人称について
動詞の説明に進む前に人称についての基礎知識を学びましょう。
日本語では動詞「話す」は人称(主語にあたる部分)が変わっても変化することはありません。例えば「私は話す」「マリアは話す」「私達は話す」「君たちは話す」となります。
しかしイタリア語では以下のように、主語に合わせて動詞「話す(parlare)」の語尾が変化します。
io parlo「私は話す」、Maria parla「マリアは話す」、noi parliamo「私たちは話す」、voi parlate「君たちは話す」、il signor Bianchi parla「ビアンキさんは話す」
人称には1人称、2人称、3人称があり、それぞれ単数形と複数形があります。
主語 | 単数 | 主語 | 複数 | ||
---|---|---|---|---|---|
1人称 | 私は | io | 1人称 | 私たちは | noi |
2人称 | 君は あなたは |
tu Lei |
2人称 | 君たちは あなた方は |
voi voi |
3人称 | 彼は / 彼女は | lui / lei | 3人称 | 彼らは / 彼女たちは | loro |
上の表を見ると2人称には、tu「君は」とLei「あなたは」の2つあります。イタリア語では、家族や友人に対しては親称のtuを使います。しかし初対面で親しくない人や目上の人に対しては敬称のLeiを使います。2人称単数の敬称Lei「あなたは」は、いつも3人称と同じです。「彼女は」のleiと「あなたは」のLeiは綴りも発音も同じですが、書くときは頭文字を小文字と大文字で区別します。
また2人称複数の敬称voi「あなた方は」の使い方にはいろいろあります。オペラの台詞や、1960年代のイタリア映画などでは、敬称のLei「あなたは」と同じ意味で使っています。
古文書、法律文や商業文などでは、三人称複数(loro・Loro)が敬称として使われることがあります。宮廷舞踏会などのように格調の高い場所では、社交的マナーのように使うことがありますが、日常会話では使うことはありません。
さてこれらの人称が単独で使われている場合はそれ程問題はないのですが、人称が混ざっている場合はどうなるのでしょうか!
例えば、「私とマリアは(Io e Maria...)」は1人称複数「私たちは noi」ですが、「君とマリアは(tu e Maria...)」は何人称で使うのでしょうか?「私」とか「君・あなた」があればそれが軸となりますので、その人称の複数形となります。
Esercizio(練習問題)1. 人称を答えて下さい。(答えは下にあります)
- tu e Maria... 「君とマリアは」
- Maria e Carlo... 「マリアとカルロは」
- io e voi... 「私と君たちは」
- tu e Maria... 「君とマリアは」
- Lei e Maria e Signor Bianchi... 「あなたとマリアとビアンキさんは」
次に、「これは...です」とか「あのレストランは...」と言う場合、「これは」や「あのレストランは」は何人称でしょうか?「これは」とか「あれは」は三人称となります。
II. 時制について
イタリア語の動詞には人称の変化と時制の変化があります。時制には、現在形、未来形、過去形の3つの時制があります。
- 現在形:「~する」(記述的用法)とか、「~している」(進行や状態)などを表す場合。
- 過去形:「~した、しました」(完了や過去の経験など)とか、「~していました」(過去の状態)などを表す場合。
- 未来形:「~するでしょう、~ではないかしら」(推量的な表現とか、「~する予定です、~つもりです」(これから起きるであろう行為や状態)などを表す場合。
III. 話法について
イタリア語では、動詞の時制以外に「話法(表現法)」と言って、話し方で動詞の変化も変わってきます。
- 直説法について
「直説法」といって、「~です」とか「~でした」とか「~だった」と断定的に事実を語る表現法です。
例文: Ha piovuto tutta la notte.
一晩中、雨が降りました。
É meglio portare l'ombrello.
傘を持って行く方がよい。 - 命令法について
会話の中で、「~しなさい、~して下さい」等と話し相手に頼んだり勧めたりすることがよくあります。「命令法(形)」と言い、相手は常に二人称(tu又はvoi)となります。自分自身に語りかける場合も、もうひとりの自分に対して話しかけるので二人称(tu)となります。
例文: Andiamo!
行きましょう!
Mangiamo!
食べましょう!
Ascoltate bene, per favore!
どうかみなさん、よく聞いて下さい!
Prego, s'accomodi!
どうぞ、お楽になさって下さい! - 条件法について
客観的に事実を述べるには直説法で十分ですが、話し手の気持ち、考え、意見、推量などを表すときには、「~かしら」とか「出来れば~したいのですが」などのように、気持ちなどを丁寧に、または控え目に表現した方がよい場合があります。「もし~ならば」とか「出来れば~したい」などの条件を前提にした表現法を「条件法」といいます。
また意志を表す(volere 欲する、desiderare 望む)動詞や、判断や意見を示す(credere 信ずる、dire 言う)動詞である場合に、直説法で表現すると、余りにも露骨な要求になったりすることになります。そんな時に「~したいのですが」とか「~すべきなのですが」という条件法が使われると婉曲で丁寧な表現になります。
また相手に何かを丁寧にお願いするとき:「~してくれない?」(Potresti?)又は「~していただけませんでしょうか?」(Potrebbe?)もよく会話で使います。
直説法を使ってPuoi~? Può~?と言っても十分に丁寧な表現となります。条件法を使った疑問文にすると「できたら~していただけませんか?」と、非常に丁寧に相手にお願いするときに使い、日常会話ではよく使う話法です。
例文: Vorrei viaggiare in Italia.
(出来たら)イタリアへ旅行に行きたい!
Potrei usare il bagno, per favore!
(出来れば)トイレ使ってもよろしいでしょうか!
Potrebbe chiamarmi un taxi?
(出来ましたら)タクシーを呼んで頂けませんでしょうか? - 接続法について
接続法は、主に従属節の中で用いられます。主文の動詞が、意見、想像、願望、期待、不安、恐れなど主観的に表現するのが接続法です。
pensare che~(従属節)(~と思う、~と考える)
credere che~(~と信じる、~と考える)
immaginare che~(~と想像する、~と思う)
sembra che~(~のようだ)
sperare che~(~と願う、~と望む)
例文: Non so se mia ragazza sia contenta di questo regalo.
彼女がこのプレゼントを喜ぶか分からない.
Io desidero che tu venga al più presto possibile.
君が出来るだけ早く来ることを望みます.
Esercizio 1. の答え
1.「君たちは...」2人称複数
2.「彼らは...」3人称複数
3.「私たちは...」1人称複数
4.「君たちは...」2人称複数
5.「あなたたちは...」2人称の複数