文化講座
レッスン28 イタリア語の発音とアクセントについて
ロンバルディア州:コモ湖
(Lombardia: Lago di Como)
レッスン28
イタリア語の発音とアクセントについて
前回はsìの用法についてまとめました。発音は同じですが、iの上にアクセント記号があるsìとアクセント記号がないsiがあります。siの用法には、非人称のsi、再帰代名詞のsi、受け身のsiなどいろいろな用法があります。
今回は、アクセントも含め、イタリア語の発音、アクセント、語尾切断や母音字省略といったイタリア語の基礎についてまとめてみました。初心に戻り、声を出して発音やアクセントなどに注意して正しいイタリア語に慣れて下さい。
発音について
I. アルファべート(Alfabeto):イタリア語のアルファベートは21文字あります。括弧の中はローマ字式に発音して下さい。
A (a), B (b), C (ci), D (di), E (e), F (effe), G (gi), H (acca), I (i), L (elle), M (emme), N (enne), O (o), P (pi), Q (cu), R (erre), S (esse), T (ti), U (u), V (vu), Z (zeta)
その他に外来語を表す5文字は以下のように発音します。
J (i-lungo), K (Kappa), W (doppio-vu), X (iks), Y (ipsilonまたはi-greco)
II. 発音について
1. 母音について
イタリア語の母音字ははっきりした音をもつa, e, i, o, uの5つである。
大体はローマ字式に発音すればよいが、uの発音は、日本語の「ウ」とはかなり異なります。日本語の「ウ」は唇をほとんど動かさないため弱く発音しますが、イタリア語のuは、丁度「フー」と息を吹きかけるときのように、唇をまるめて突き出しながらはっきりと強く発音します。
natura(自然) luce(光) fortuna(運) cintura(ベルト) musica(音楽)
発音の上ではeとoには開口母音(è, ò)と閉口母音(é, ó)に2種類があります。尚、アクセントのないeとoは閉口音になります。
studènte(学生)
monéta(コイン)
pòpolo(国民)
pónte(橋)
pèsca(桃)
pésca(漁)
sóle(太陽)
日本語で、「アメが降ってきたよ!」というところを「アメが降ってきたよ!」と言ったら、誰でも心の中にホンノちょっとでも「飴が降ってきた」を考えてしまうに違いありません。
イタリア語の開口音と閉口音の差は、それほど厳しいものではありません。たとえば"Voglio mangiare una pèsca."「私は桃を一つ食べたい」の発音をするのに、"pèsca"(桃)と発音しないで"pésca"(漁)と発音したとしても、「私は漁を食べたい」と考える人はいないと思います。以上のような理由で、われわれ日本人がこの開口音と閉口音の区別にあまり神経質になる必要はありません。
2. 子音について
大体は母音と同じようにローマ字式に発音すればよい。ここでは注意すべき発音についてだけ説明します。
- c(g)+i・eは、チ(ジ)・チェ(ジェ)と発音する。
- c(g)+a・o・uは、カ(ガ)・コ(ゴ)・ク(グ)と発音する。
- ch(gh)+i・eは、キ(ギ)・ケ(ゲ)と発音する。
【練習】
cucina(クチーナ) | camera(カーメラ) | chiesa(キエーザ) | occhio(オッキオ) |
cane(カーネ) | luce(ルーチェ) | faccia(ファッチャ) | piccolo(ピッコロ) |
pochi(ポーキ) | amiche(アミーケ) |
- gliは、グリと発音することは希で、ジの口をして[リ]を発音する。
- gnaも[ジ]の口をして[ナ]を発音する。丁度「こんにゃく」の「にゃ」の音に近い。
【練習】
famiglia(ファミーリア) | globo(グローボ) | moglie(モーリエ) | signora(シニョーラ) |
ogni(オーニ) | inglese(イングレーゼ) | montagna(モンターニャ) | |
giugno(ジウニョ) | glacciale(グラッチャーレ) |
- sには、清音(ス)と濁音(ズ)の2種類がある。濁音になる場合に若干の規則があるがその他は清音と考えればよい。
(イ)母音間のs(母音と母音にはさまれたs)
(ロ)sの次に有声子音(b, d, g, l, m, n, r, v)がくる場合。
【練習】
musica(ムージカ) | viso(ヴィーゾ) | riso(リーゾ) | sapore(サポーレ) |
borsa(ボルサ) | scuola(スクオーラ) | stella(ステルラ) | stazione(スタツィオーネ) |
sbaglio(ズバーリオ) | smettere(ズメッテレ) | amoroso(アモローゾ) |
- zにも、清音(ツ)と濁音(ズ)の2種類がある。この区別を定めることは難しく、ある特定のもの以外は辞書で覚えるしかない。
語尾が-anzoとか、-izzareの場合と、zで始まる多くは濁音である。
【練習】
bellezza(ベルレッツァ) | zanzara(ザンザンーラ) | stanza(スタンツァ) |
senza(センツァ) | realizzare(レアリッザーレ) | organizzare(オルガニッザーレ) |
amicizia(アミチーツィア) | pranzo(プランツォ) | zuppa(ツッパ) |
zucchero(ズッケロ) | zio(ツィーオ) | mancanza(マンカンツァ) |
- sc+i・eは、シ・シェと発音する。
- sc+a・o・uは、スカ・スコ・スクと発音する。
【練習】
tasca(タスカ) | sciarpa(シャルパ) | scienza(シエンツァ) | liscio(リーショ) |
pesce(ペーシェ) | disco(ディースコ) | scherzo(スケルツォ) | cuscino(クシーノ) |
sciesta(シエスタ) | scultura(スクルトゥーラ) | scatola(スカートラ) | sciopero(ショーペロ) |
III. アクセント(accento)について
1. アクセントの位置
原則として、後から2番目の音節(母音)にあります。それ以外の位置にアクセントがある場合は、辞書に明記されている。
一番後の音節や単音節にアクセントがある場合は、アクセント記号を必ず付けなければならない。
【例】
città | felicità | università | virtù | caffè | libertà | verità | giù |
è(is) | - | e(and) | dà(gives) | - | da(from) | dì(giorno) | - | di(of) | là(there) | - | la(the) |
sì(yes) | - | si |
2. アクセント記号には、開口音記号で右下がり( ` )と閉口音記号で左下がり( ´ )の二種類あります。
開口母音aには、開口アクセントを付け、città, già, caritàのようになります。閉口母音iとuは、現代イタリア語では開口アクセントを付けるのが一般的で、così, morì, dì, più, menù, giù, lassù, bambùのようになります。
母音eとoも、基本的には開口アクセントを付けてでcaffè, puòとなります。しかしperché, né, sé, affinchéなどは閉口アクセントとなり注意が必要です。
- アクセントの位置により意味の違う単語
ancóra(まだ) | ― | àncora(錨〈イカリ〉) |
subíto(subire〈被る、受ける〉の過去分詞) | ― | súbito(すぐに) |
ambíto(ambire〈切望する〉の過去分詞) | ― | àmbito(範囲・分野) |
mèta(目的地) | ― | metà(半分) |
onésta(正直な〈女性形〉) | ― | onestà(正直) |
pàpa(ローマ教皇) | ― | papà(お父ちゃん) |
IV. 語尾切断(Troncamento)
(l, m, n, r)+(e, o)の組み合わせに限って可能であるが、必ずしも義務づけられてはいません。(語呂がいいのでそうする場合が多い)
【例】
signor(e) Rossi | mal(e) di testa | pian(o) piano | quel(lo) signore |
Cosí fan(no) tutte | Amor(e) mio | Caro mio ben(e) | Siam(o) pronti |
V. 母音字省略(Elisione)
音の連絡を滑らかにするため、隣接する2つの母音の前の方が省略されたり、語尾の母音が切断されたりすることがある。前者の場合は省略することが義務づけられている場合が多く、また省略記号( ' )アポストロフォを付ける必要がある。
【例】
c'è(ci+è) | l'amico(lo+amico) | l'arte(la+arte) |
senz'altro(senza+altro) | un'ora(una+ora) | l'aula(la+aula) |
anch'io(anche+io) |
注意:前置詞aや接続詞e・oの次に同じ母音で始まる語がくると、2つの母音を明瞭に区別するため好調音字d(d-eufonica)を付けて、ad, ed, odとすることがある。他の母音がくるときは、付けても付けなくてもよい。
【例】
Kyoto ed Osaka | ad Anna | od odiare | ed ho |
ad andare | ed è gentile | ad udire | ed intelligente |
油絵 石黒秀嗣
シチリア:ある漁師の家
(Sicilia: Una casetta di pescatore)