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日常会話に役立つイタリア語

石黒 秀嗣

レッスン51 イタリア語の動詞について
その12 動詞+代名詞IV 再帰代名詞(再帰動詞)


ヴィチェンツァ:オリンピコ劇場の舞台ステージ
Vicenza, Veduta della Scena del Teatro Olimpico, la stampa antica nel 1700,
Incisione in rame di Salmon Tommaso

石黒家所蔵

レッスン51 イタリア語の動詞について
その12 動詞+代名詞IV 再帰代名詞(再帰動詞)

V 再帰動詞について

プッチーニ作曲のオペラ『ラ・ボエーム』の中で歌われる「ミ・キアーマノ・ミミ(Mi chiamano Mimi)」という有名なアリアがあります。日本語のタイトルは「私の名はミミ」とあります。アリアの歌詞は
  "Mi chiamano Mimi
    ma il mio nome è Lucia
..."と続きます。
動詞chiamanochiamareの三人称複数)「(人、名前を)呼ぶ」の主語は、Mimiではありません。主語は「みんなが(tutti)」が隠されています。だから正確に訳すと「みんなは私をミミと呼んでいます。」(Tutti mi chiamano Mimi.)となります。そして"ma il mio nome è Lucia..."(でも私の名前はルチアです...)と続きます。

chiamareという動詞は「~を呼ぶ」と言う他動詞です。人や名前を呼んだり、呼び止める時に使います。

例文:

Io chiamo il medico.
(私は医者を呼びます。)
Mi può chiamare un taxi per favore!
(私にタクシーを一台呼んでいただけますか!)

「日常会話」のあいさつの会話で、人の名前を尋ねたり、自分の名前を言ったりするときの決まったフレーズがありました。

Come si chiama (Lei)?
(あなたの名前は?)
Mi chiamo Maria.
(私はマリアと言います)
(またはil mio nome è Maria.「私の名前はマリアです」、(Io) sono Maria「私はマリアです」)

同じchiamareでも、医者を呼んだり、タクシーを呼んだりするときとは違って動詞chiamareの前にsiとかmiがあることに注意して下さい。再帰代名詞といいます。また再帰代名詞をとる動詞を再帰動詞といいます。イタリア語には同じ動詞でも、他動詞のようにその行為が他に(外に)向かっている場合と、再帰動詞のように自分自身に向かっている場合とを分けて使います。
例えば、洗う(lavare)という動詞の場合、「自分の犬を洗う」(lavo il mio cane)は、「自分の犬を」が洗うの対象であり、「車を洗う(lavare la macchina)」も「食器を洗う(lavare i piatti)」も同じ使い方をします。しかし「自分の手(顔・体など)を洗う」という場合はどうでしょうか!洗うという行為が自分自身に向かっている場合は、「自分自身に」または「自分自身を」にあたる再帰代名詞と一緒に使う再帰動詞を使い(mi lavo le mani)となります。
再帰動詞をイタリア語では、verbo riflessivoと言い、「反射する(riflessivo)」を意味する言葉が使われています。即ちその行為が行為者自身に反射して戻ってくるような動詞をいいます。

■再帰動詞の原形(不定詞)を表すときは、不定詞の語尾の最後のeを落として三人称のsiをつけます。

alzar(e)+si ⇒ alzarsi
chiamar(e)+sichiamarsi

■動詞の活用は同じですが、再帰代名詞(mitisicivisi)は下の表にあるように人称により異なります。

再帰動詞lavarsi(洗う)の活用

主語 活用
io(私は) mi lavo
tu(君は) ti lavi
lui(彼は)・lei(彼女は)
Lei(あなたは)
si lava
noi(私たちは) ci laviamo
voi(君たちは)
(あなたたちは)
vi lavate
loro(彼らは・彼女らは) si lavano

イタリア語では再帰動詞はよく使う動詞の用法です。lavarelavarsiの場合は「犬を洗う」にしても「自分の手を洗う」にしても、日本語の訳は「洗う」と同じになりますが、再帰動詞で使う場合意味が異なることが多いので注意する必要があります。代表的な再帰動詞を紹介しましょう。
他動詞で使う場合と再帰動詞で使う場合とでは意味が異なります。その使い方の違いを下の例文で見てみましょう。

再帰動詞の場合 他動詞の場合
mi chiamo Maria
(私はマリアという名前です)
mi lavo le mani
(私は手を洗う)
mi alzo subito
(私はすぐに立ち上がる)
mi sveglio alle sette
(私は7時に起きる)
mi fermo a Roma
(私はローマに滞在する)
(Io) chiamo Maria
(私はマリアを呼ぶ)
(Io) lavo i piatti
(私はお皿を洗う)
(Io) alzo la mano
(私は手を上げる)
(Io) sveglio i bambini
(私は子供たちを起こす)
(Io) fermo il motore
(私はエンジンを止める)

動詞が同じでも他動詞の場合と意味が異なることが多いので注意する必要があります。

再帰動詞の場合 他動詞の場合
sentirsi male(気分がよくない)
farsi la barba(ヒゲを剃る)
divertirsi(楽しむ)
annoiarsi(退屈する、飽きる)
occuparsi(従事する、専念する)
perdersi(迷う、消える)
fermarsi(止まる、滞在する)
rilassarsi(くつろぐ、和らぐ)
mettersi(着につける、身を置く)
vestirsi(服を着る)
trovarsi(居心地が...である)
sentire la musica(音楽を聴く)
fare lo sport(スポーツをする)
divertire(楽しませる)
annoiare(退屈させる、飽きさせる)
occupare(占有する、雇う)
perdere(なくす、失う)
fermare(止める、停止させる)
rilassare(ゆるめる、和らげる)
mettere(置く、入れる)
vestire(服を着せる)
trovare(見つける)

その他に、日常会話にもよく出てくる代表的な再帰動詞を紹介しましょう。

accomodarsi(楽にする)、addormentarsi(寝る、寝入る)、arrabbiarsi(怒る)、avviarsi(行く、〈...に〉向かう)、avvicinarsi(近づく)、cambiarsi(着替える)、dimenticarsi(忘れる)、lamentarsi(嘆く)、preoccuparsi(心配する)、prepararsi(準備する)、riposarsi(休息する、休む)、sbrigarsi(急ぐ、急いで...する)、scambiarsi(交換する)、scusarsi(謝る)、spogliarsi(脱ぐ)、suicidarsi(自殺する)、tenersi(〈ある状態を〉保つ、自分を支える)、truccarsi(化粧する、〈...に〉扮する)

■再帰動詞を使った例文

  1. Mi siedo qui perché vedo bene.
    (私はここに座ります。何故ならよく見えるので)
  2. Arriva sempre in ritardo ma non si scusa mai.
    (彼はいつも遅れてくるけど、決して謝らない)
  3. Mario e Carlo non si mettono mai la cravatta.
    (マーリオとカルロは決してネクタイをしない)
  4. A che ora vi svegliate di solito?
    (君たちは普通何時に起きますか?)
  5. Maria si trova bene in questo ufficio.
    (マリアはこのオフィスの居心地がいいです)
  6. Non mi abituo alla grammatica italiana, è troppo difficile.
    (私はイタリア語の文法に慣れていないので、大変難しいです)
  7. Complimenti, Maria! Ti esprimi veramente bene in giapponese.
    (すごいね、マリア!君は本当にうまく日本語で表現しますね!)

■相互的再帰動詞

「お互いに~する」という意味を持つ再帰動詞で一人ではなく複数で意味をなし動作の対象がお互いにある再帰動詞を相互的再帰動詞と言います。「お互いに」を表す言葉には、l'un l'altro, fra di noi(voi/loro), reciprocamente, a vicenda(vicendevolmente), mutualmenteなどがあります。強調したいときはよく一緒に使います。

例文:

  1. Quei fratelli vanno d'accordo e si aiutano l'un l'altro.
    (あの兄弟は仲がよく、お互いに助け合っています)
  2. Maria e Lucia si conoscono dai tempi dell'università.
    (マリアとルチアは大学時代からの知り合いです)
  3. Angela e Marco si innamorano(si amano).
    (アンジェラとマルコは愛し合っている)
  4. Quei ragazzi si odiano tra di loro e si litigano sempre.
    (あの子供たちは互いに憎み合い、いつも喧嘩している)
  5. Io e quella signora, quando ci incontriamo per la stara e ci salutiamo.
    (私とあの奥さんは、道で会えば挨拶を交わします)

■従属動詞+再帰動詞

従属動詞dovere(...しなければならない)、potere(...できる)、volere(...したい)は、次に動詞の原形「...すること」を直接従える動詞でした。

例文:

  1. (Io) Devo studiare l'italiano.
    (私はイタリア語を勉強しなければならない)
  2. Puoi aspettare un attimo?
    ((君に対して)ちょっと待っててくれる?)
  3. Maria vuole vedere il film.
    (マリアは映画を見たい)

上の例文にあるようにstudiare, aspettare, vedereは普通の動詞でした。そこに再帰動詞がきたら再帰代名詞(mi, ti, si, ci, vi, si)をどのように置いたらよいのでしょうか!

A. 従属動詞の後ろに再帰動詞を持ってくる場合(一般的によく使う形)
再帰動詞の原形を表すときは、最後のeを落としてそれぞれの代名詞を付けます。

例文:

  1. Noi dobbiamo alzarci presto domattina.
    (僕たちは明朝はやく起きなければなりません)
  2. Signorina, può riposarsi qui, se vuole.
    (お嬢さん、もしよろしければここで休んでください)
  3. (Io) Voglio divertirmi alla festa di Natale.
    (僕はクリスマスパーティで楽しみたい)

B. 従属動詞の前に再帰代名詞を置く場合、上の例文を以下のようにすることが出来ます。

  1. Noi ci dobbiamo alzare presto domattina.
  2. Signorina, si può riposare qui, se vuole.
  3. (Io) mi voglio divertire alla festa di Natale.

その他の例文:

  1. Rita non vuole alzarsi di buonora.
    (リタは朝早く起きたくない)
  2. Comincia a fare freddo: dobbiamo vestirci bene la sera.
    (寒くなってきたので、夜は厚着をしなければなりません)
  3. Noi ci sediamo sempre in prima fila.
    (私たちはいつも最前列に座る)
  4. Paolo e Anna vogliono sposarsi al più presto possibile.
    (パオロとアンナは出来るだけ早く結婚したい)
  5. Tu non devi arrabbiarti così tanto.
    (君はそんなに怒るべきでない)
  6. Marco, se vuoi venire al cinema con noi, devi sbrigarti!
    (マルコ、もし私たちと映画を見に来たいのであれば急ぐべきだ!)

■再帰動詞の過去形(複合時制)

再帰動詞を使った近過去の作り方は再帰代名詞+essereの変化+過去分詞となります。

Mi alzo alle sette.
(7時に起きる)

Mi sono alzato alle sette stamattina.
(今朝、7時に起きました)

注意:近過去の説明で、助動詞essereをとる場合は過去分詞の語尾を主語の性(男性・女性)と数(単数。複数)を一致させなければなりません。上の例文ではalzatoと男性形ですので、主語は男性となります。もし主語が女性であれば、Mi sono alzataと過去分詞の語尾を女性形にしなければなりません。
また主語が複数の場合も同様に過去分詞の語尾を複数形にすることを忘れないでください。

  1. Noi ci siamo incontrati/e per caso in una libreria.(主語は男性・女性の複数、または 男女混性)
    (私達は偶然にある本屋さんで会いました)
  2. I bambini si sono addormentati davanti alla televisione.(主語は男性複数)
    (子供たちはテレビの前で寝てしまった)
  3. Maria e Carlo si sono sposati il mese scorso.(主語は男女混性)
    (マリアとカルロは先月結婚しました)
  4. Anna e Rita non si sono svegliate mai in tempo.(主語は女性複数)
    (アンナとリータは時間通りに目を覚ましたことがありませんでした)
  5. Luca e Anna si sono divertiti alla festa.(主語は男女混性)
    (ルカとアンナはパーティで楽しんだ)
  6. Angela e Luisa si sono incontrate dopo molti anni.(主語は女性複数)
    (アンジェラとルイーザは何年も後に会いました)
  7. Voi vi siete fidati/e troppo di quella persona.(主語は男性複数、または男女混性)
    (君たちはあの人のことを信頼しすぎた)
  8. Ci siamo vestiti/e elegantemente e siamo andati/e ad una festa.(主語は男性・女性の複数、または男女混性)
    (私たちはおしゃれして、パーティに行きました)
  9. Ti sei procurato già i biglietti per lo spettacolo di sabato?
    (君が土曜日のショーのチケットをもう手配しましたか?)

■従属動詞+再帰動詞 の過去形(複合時制)

従属動詞+再帰動詞で説明したように、再帰代名詞(mi, ti, si, ci, vi, si)を従属動詞の後ろに置く場合と前に置く場合の二通りありました。助動詞(essere又はavere)の取り方が違うので注意しなければなりません。

A. 従属動詞の後ろに再帰動詞を持ってくる場合

従属動詞が強められ、従属動詞を過去にすると考えてください。その場合は助動詞avereをとります。

Noi dobbiamo alzarci presto.
(私たちは早く起きなければなりません)

Noi abbiamo dovuto alzarci presto.
(私たちは早く起きなければなりませんでした)

B. 従属動詞の前に再帰代名詞を置く場合(過去形では一般的によく使う形)

再帰動詞が強められ、再帰動詞を過去にすると考えてください。その場合は助動詞essereをとります。essereをとる場合は過去分詞の語尾を主語の性と数に一致させてください。

Noi ci dobbiamo alzare presto.
(私たちは早く起きなければなりません)

Noi ci siamo dovuti/e alzare presto.
(私たちは早く起きなければなりませんでした。)

■従属動詞と再帰動詞を使った近過去の例文

  1. Mi sono dovuto/a vestire (=Ho dovuto vestirmi) in cinque minuti.
    (私は5分で着替えなければなりませんでした)
  2. Margherita si è dovuta alzare presto (=ha dovuto alzarsi) per prendere il treno.
    (マルゲリータは列車に乗るため早く起きなければなりませんでした)
  3. Sandro ed io ci siamo voluti fermare (=abbiamo voluto fermarci) a Firenze.
    (サンドロと私はフィレンツェに滞在することを望みました)
  4. Ieri Carla e Giulia non si sono potute vedere (=non hanno potuto vedersi) in centro, perché Giulia è arrivata tardi all'appuntamento.
    (昨日カルラとジューリアは町で会うことが出来ませんでした。というのはジュリアが約束に遅れてきたから)
  5. Carla non si è voluta vestire (=ha voluto vestirsi) in modo elegante e si è voluta (=ha voluto) in modo sportivo.
    (カルラはおしゃれに着ることを望まなく、スポーティに着ることを望みました)

Esercizio(練習問題)12. 再帰動詞を使って文を作成して下さい。(答えは下にあります)

  1. (dimenticarsi) Lei non devedi spegnere la luce.
    「あなたは電気を消すのを忘れるべきでない」
  2. (tagliarsi) Carlo devei capelli perché sono troppo lunghi.
    「カルロは髪があまりにも長いので切るべきです」
  3. (divertirsi)molto in questa scuola.
    「私たちはこの学校では大変楽しかった」
  4. (lavarsi)le mani prima di mangiare.
    「私が食べる前に手を洗いました」
  5. (svegliarsi) Luigi e Ninosempre tardi.
    「ルイジとニーノはいつも遅く目をさました」
  6. (svegliarsi) Luciaalle sei.
    「ルチアは6時に目を覚ますことが出来なかった」
  7. (sedersi)in treno.
    「私たちは列車のなかで座ることが出来なかった」

Esercizio 12. の答え
dimenticarsitagliarsiCi siamo divertiti/eMi sono lavato/asi sono svegliatinon si è potuta svegliare又はnon ha potuto svegliarsinon ci siamo potuti/e sedere又はnon abbiamo potuto sederci

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