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日常会話に役立つイタリア語

石黒 秀嗣

レッスン30 siの用法について その2


パヴィア(ロンバルディア州):大学から見る中世の3基の塔
(Pavia(Lombardia): Tre torri medievali dall'università)

レッスン30 siの用法について その2

 今回は、受け身のsiなどの用法についてまとめました。

F. 受け身のSi(Si passivante)

受け身の種類には、1.essere+他動詞の過去分詞」の他に、「動き」や「状態」を強調する2.venire(stare)+他動詞の過去分詞」や、「義務」(されるべき)を強調したり、「消滅、解消」を強調する3.andare+他動詞の過去分詞」、そして日常会話などでもよく使われる受け身のsi、または受け身小詞(si passivante)と呼ばれる4.si+他動詞の三人称」があります。そして他動詞で主語がはっきりしないとき、目的語により動詞は三人称単数であったり、3人称複数になったりします。

例文:
  1. A Roma si vedono molti turisti.
    (ローマでは沢山の観光客が見られる)
  2. Con il pesce si beve il vino bianco.
    (魚には白ワインが飲まれる)

siの用法にはいろいろありますので、簡単に説明した上で、受け身小詞siを使った受動態について説明します。

 (1)再帰代名詞のsi:代表的なものには、再帰動詞のときに使う三人称の再帰代名詞のsiです。「起きる」(alzarsi)や「座る」(sedersi)という再帰動詞は、もとは(人や物などを)「起こす」(alzare)や、「座らせる」(sedere)という他動詞で、「テーブルを起こす」(alzare la tavola)、「子供を座らせる」(sedere il bambino)というように使います。再帰動詞は、その動作や行為が自分自身にかえってくる用法です。そしてこの再帰動詞には、かならず「自分自身を(に)」を示す再帰代名詞(mi, ti, si, ci, vi, si)が一緒についてきます。
三人称は単数も複数もsiという同じ再帰代名詞を伴います。

例文:

Di solito Maria si alza alle sette.
(普通は、マリアは7時に起きます)

 (2)非人称のsi:このsiは漠然とした「人」を表します。行為者を具体的に特定する必要がないときに、時には集団的な意味で「私たちは、君たちは」のニュアンスで使うこともあります。この非人称のsiを使って表現します。動詞は自動詞の三人称単数となります。希に例文のように目的語を取らない他動詞「支払う(pagare)」でも非人称のsiを使うことがあります。しかし目的語を取る他動詞の場合は受動態となるので注意して下さい。

例文:

Non si parla di politica a tavola.
(食事の時は政治の話はしない)

In quel negozio si paga solo in contanti.
(あのお店では現金払いだけです)

 (3)また動詞が三人称であっても、≪人や動物≫が主語になることはあまりなく、大抵は≪物≫が主語となります。大抵は動詞の後に置かれます。近過去のような複合時制の場合は、助動詞はessereを取り、過去分詞の語尾は、主語の性と数に一致するので注意して下さい。非人称のsiと混同しやすいので注意して下さい。またこの受動態は、行為者「~によって」を表す「da~」をつけて表すことはありません。

例文:
  1. Si prepara la cena alle sette.
    (夕食は7時に支度される)
  2. Si picchia un chiodo con il martello.
    (釘は金槌でうたれる)
  3. Si mette del sale nel brodo.
    (スープにいくらかの塩が入っている=入れられる)
  4. In piazza si vedono molte persone.
    (広場には多くの人が見られる)
  5. In Svizzera si parlano l'italiano, il tedesco e il francese.
    (スイスではイタリア語、ドイツ語、フランス語が話されています)
  6. A Napoli si cantano delle canzoni napoletane.
    (ナポリではナポリの歌が歌われている)
  7. Si può sapere quanto costa quellla giacca?
    (あのジャケットがいくらか教えて下さい)
  8. La sera si accendono le luci.
    (夜になると灯りがともされる)
  9. Si è accesa la luce.
    (灯りがともされた)
  10. Si vedrà il Monte Fuji con questo bel tempo.
    (このいい天気なら富士山が見えるでしょう)
  11. Si sentiva cantare qualcuno.
    (誰かが歌っているのが聞こえていました)
  12. Non si sentiva che la soneria della sveglia.
    (目覚まし時計のベルが聞こえなかった)

■以下の例文のように文節全体が主語となる場合もあります。

  1. Si crede che tutto andrà bene.
    (すべてうまく行くだろうと思われている)
  2. Si dice che in Italia i negozi siano(=sono) chiusi la domenica.
    (イタリアでは日曜日には店が閉まっているそうです≪言われている≫)
  3. Non si sa quando smetterà di nevicare.
    (いつ雪が降りやむかわからない≪知られない≫)
  4. Giuseppino, si può sapere perché non vuoi stare zitto?
    (ジュゼッぺちゃん!何故おとなしくしていられないの≪知られることが出来るか≫)
  5. Si vede che quella è italiana.
    (あの人がイタリア人の女性であるのは見れば分かる≪見られる≫)

■受け身小詞を使った慣用句

  1. Si capisce!
    (もちろん=そんなことは理解されている)
  2. S'intende!
    (もちろん)又は〈...と言う言葉は〉意味する

    S'intende che verrai.
    (もちろん君もくるんだよ)

    Che cosa si intende per "libertà"?
    (「自由」とは何を意味するのか?)

  3. Si vedrà!
    (いまに分かるであろう、いまに見ていろ)
  4. Si vede?
    (分かるでしょう)
  5. Si può?
    (...しても)いいですか?
  6. Non si sa mai!
    (分かるものか!)
  7. Affitasi la camera.
    (空室あります=部屋が貸される)
  8. Si prega di+不定詞
    (...するようにお願いします)
    例文:

    Si prega di lasciare la camera prima delle 11:00.
    (11時前にお部屋をお開けになるようにお願いいたします)

    Si prega di non toccare.
    (手を触れないで下さい。)

G. その他の注意

 最後に、非人称形では形容詞は男性・複数形にする。
複合時制の過去分詞は、その動詞が助動詞avereをとる動詞であれば語尾を男性単数形に、しかし助動詞essereをとる動詞であれば語尾を男性複数形にしなければならない。

例文:
  1. Si è felici quando si è liberi.
    (自由の時、幸せである)
  2. Quando si è dormito bene, ci si sente riposati.
    (人はよく寝たとき、休息した気分になる)
  3. Quando ci si è lavati, ci si sente freschi.
    (人は体を洗うと、すっきりした気分になる)
  4. Una volta si è mangiato bene in quel ristorante.
    (昔は、あのレストランでは良い食事が出来た)
  5. Dopo la guerra si è ritornati al paese.
    (戦争の後、人は故郷に戻ってきた)
  6. Si può essere giovani di spirito anche quando si è vecchi.
    (人は年寄りでも、気持ちは若者のようにいられる)
  7. Si deve stare attenti quando non si è capaci di fare una cosa.
    (する能力がない人は、注意すべきだ)
  8. Si sbaglia frequentemente quando si è stanchi.
    (人は疲れていると、よく間違える)
  9. Laborando troppo si diventa sbadati.
    (あまり働き過ぎると、人は不注意になる)

essereの代わりにvenireを使う受け身でも同様に過去分詞の語尾を男性複数形にしなければならない。

例文:
  1. Si è dimenticati presto dopo la morte.
    (人は死んだらすぐに忘れられる)
  2. Si viene dimenticati presto dopo la morte.

最後に、da soloのような、主語に応じて性・数もかわる熟語も、非人称で使う場合に男性複数形になるので注意が必要です。

例文:

Non si impara da soli a leggere e scrivere.
(人はひとりでは読み、書きを習うことは出来ない)


油絵 石黒秀嗣
ヴェネチア:ヴェネチアの小運河2
(Venezia: Rio a Venezia, 2)

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