文化講座
レッスン34 イタリア語のことわざ その1
フィレンツェ: 磁器に刻まれた「十字架上のキリスト像」
(Firenze / Crocifisso in Porcellana Biscuit "Benacchio Triade")
石黒家所蔵
レッスン34 イタリア語のことわざ
その1 ワインに関係することわざ
ことわざ(provèrbio, 複数provèrbi)には、古くから言い伝えられているものが多く、イタリア語にも沢山のことわざがあります。「ローマは一日にして成らず」(Roma non fu fatta in un giorno)とか、「ナポリを見て死ね!」(Vedi Napoli, e poi muori!)ということわざを耳にしたことのある方も多いかと思います。
ことわざの解説にイタリア語の分析を加え分かりやすく説明しました。
A. 今回は、「ワインに関係することわざ」を中心にまとめました。ワインはイタリア食文化の視点からもとても大事なことで、イタリア人は、人が集まるところには必ずワインがあり、賑やかで楽しい会話があります。ワインにまつわるイタリア語について代表的なものを紹介します。
1. In vino veritas.(ラテン語)(お酒に真実あり):イタリア語ではNel vino è la veritàといいますが、イタリアでは高等学校でラテン語を学んでいるので、普通はラテン語読みで話しています。ワインを飲んで酔っ払ったら本当のことを言ってしまうという意味です。このことわざは、ギリシアの哲学者プラトンが『饗宴』の中で語った有名な言葉です。今では世界中の言葉で伝えられており、世界で最も古いことわざのひとつといえるでしょう。
2. Buon vino fa buon sangue.(ワインは健康のもと):良い酒は良い血をつくる。すなわちワインは健康のもとである。sangue「血液」
3. Amici e vini sono meglio vecchi.(友達とワインは年月によって更に良くなる):大事に保管されてきたワインは年月とともに深みや香りが増すように、友情も絆を大切にすれは年月が経てば経つほど更に深まって行くということ。
4. Bevi il vino e lascia andar l'acqua al mulino.(ワインを飲んで、水は水車で使おう):水の代わりに、美味しいワインを飲んだ方がよい!lasciare andare「行かせておく」lasciare+動詞の不定詞は放任動詞として使っています。
5. L'acqua fa male e il vino fa cantare.(水は体に悪くて、ワインは人に歌わせる):水よりワインを飲ませれば賑やかになって歌います。fa(→fare)の使い方に注意してください。fare cantare「歌わせる」fare+動詞の不定詞は使役動詞として使っています。
6. Chi non beve in compagnia o è un ladro o è una spia.(仲間と酒を飲まないやつは、泥棒かスパイだ):bere in compagnia「仲間と一緒に飲む」
7. Ne annegano più nel vino che nell'acqua.(水で沈む人より、ワインのせいで溺れる人が沢山いる):ワインを飲み過ぎて困る人が沢山います。annegare「溺れる」、più ~ che ~は比較級の形です。
8. Vino e segreti non possono convivere.(ワインと秘密は一緒に暮らせない):convivere「同居する」、秘密を守るのは難しいという意味。
9. Uomo di vino, non vale un quattrino.(酒飲みは価値がない):Quattrinoは、13-14世紀のイタリアで鋳造された銅貨で、少額の貨幣を意味し、「わずかな」価値しかないという意味。
10. Il vino e i gatti sono traditori.(ワインとネコは裏切り者です):traditore「裏切り者」ワインも飲み過ぎると、またネコも可愛がりすぎると、時には二日酔いやネコにそっぽ向かれるという意味。
11. L'acqua divide gli uomini; il vino li unisce.(水は人間を分けるが、ワインは人を結びつける):dividere「分ける」、unire「一つにする、結合する」、lìはgli uominiを指して「彼らを」の意味。水を求めての争いは常に争いをもたらしてきた、一方ワインは、一緒に飲むと仲良くなり平和をもたらしてきた。
12. Dove regna il vino, non regna il silenzio.(ワインが沢山ある所に沈黙なし):regnare「支配する」、non regna il silenzio(静けさがない、すなわち賑やかという意味)
13. Bacco, tabacco e Vènere riducono l'uomo in cenere.(酒とタバコと女は男を破滅させる):bacco「飲酒」、Venere「女性・ヴィーナス」、ridurre「...に変える」、cenere「灰」
14. Gli anni e il bicchieri di vino non si contano.(年齢とワインのグラスは数えられることはない):年をとることやワインを飲む量など気にせず、好きなだけ飲みなさい、そしていつまでも若くありなさいという意味。
日本でもお馴染みのイタリアの映画監督フェデリーコ・フェリーニのワインについて残した名言があります。
15. Un buon vino è come un buon film : Dura un istante e ti lascia in bocca un sapore di gloria; è nuovo ad ogni scorso e, come avviene con i film, nasce e rinasce in ogtni assaggiatore.(良いワインは映画のようである。後に深い味わいを残す。味わうたびに新しく、映画同様、味わう人ごとに生まれる):ワインと映画を結びつけた味わいのある重みを感ずる名言と思います。
最後に、レオナルド・ダ・ビンチが残した名言も紹介しましょう。
16. et però credo che molta felicità sia gli homini che nascono dove si trovano i boni vini.(...だが良いワインが造られる土地に生まれる人は幸福だと思う。)とあります。フィレンツェの郊外に、彼の生まれ故郷Vinci村があります。そこには生家が小さな博物館になっています。そこに訪れたとき飲んだVinci村のレオナルド・キアンティワインは、今でも忘れられない美味しいワインでした。
B. イタリア語にはワインにまつわるイタリア語がたくさんあります。ここではワインにまつわるイタリア語について代表的なものを紹介します。
1. Vino rosso(bianco, rosato):赤ワイン(白・ロゼ)
2. vino frizzante:発泡性ワイン(代表的なものにVino Rambruscoがあります)
3. enoteca:ワインバーで、もとはワインの貯蔵する場所でしたが、今では街の酒屋さんを意味します。
4. cantina:ワインを貯蔵する場所のことで、enotecaと同じ意味で使います。英語では「ワイナリー」がこれにあたります。ワインを扱うお店という意味でvineria(vino + ria)もよく使います。-riaは「お店」を表す語尾で、例えばpizzeria, gelateria, birreriaが同じ使い方をします。また一般の家でも地下室にそのような場所があり、ワインなどを貯蔵しています。
5. cantiniere:ワイン醸造職人またはワインバーの主人を意味します。もし女性のワイナリーでしたらcantinieraとなります。
6. uva:ぶどうの実。ぶどうの木はvite、ぶどうの房gráppolo d'uva、ぶどうのジュースsucco d'uva
7. vigneto:ぶどう畑でvignaとも言う
8. sommelier:ソムリエ(フランス語)(男女同形の名詞ですが、男女の区別は、定冠詞il(男性)、la(女性)で区別します)
9. vedemmia:ぶどうの収穫
10. annata:ぶどう収穫年度(当たり年はuna buona annataと言います)