文化講座
レッスン 35 イタリア語のことわざ その2
ヴェネチア(ムラーノ島):クリスタルガラスに純金で刻まれた「聖母子像」
(Venezia (Murano) / "Santa Madre e Bimba" sul Cristallo cesellato dipinto Oro Puro e Smalti Icona Bizantina, Murano Venezia)
石黒家所蔵
レッスン35 イタリア語のことわざ
その2 犬とネコに関することわざ
今回は、イヌとネコに関することわざについてまとめました。日本語で言う「野良猫」とか「招き猫」は、イタリア語で何と言うのでしょうか?「野良犬」については、日本でもイタリアでも法の下で、登録や狂犬病に対する予防接種が行われ保護されているため、街ではほとんど見ることがありません。「野良犬」はイタリア語で、cane randagioと言います。では「野良猫」はと言うと、イタリア語にはそれにあたる言葉が存在しないようです。街に住んでいるネコは、gatto libero「自由ネコ」とか、gatti del Largo di Torre Argentina「トルレ・アルジェンティーナ広場のネコたち」と言います。コロシアムなどのローマ遺跡には沢山のネコたちが暮らしています。そこにいたいから自由に暮らす権利をネコたちに認めているのです。ローマ旧市街にある有名なトルレ・アルジェンティーナ広場にある神殿遺跡は、ネコのサンクチュアリ(保護区)として有名です。そこには数百匹のネコたちが何の不自由もなくのんびりと自由に暮らしています。さて「招き猫」は日本由来の代表的なネコのキャラクターと言えるでしょう。イタリアにはそういうキャラクターのネコはいないので「招き猫」にあたるイタリア語はありません。あえて訳すと「福を招くネコ」ですのでGatto della fortunaと訳すことが出来るでしょう。
A. 犬に関することわざ
1. Cane che abbaia non morde.(犬の遠吠え):恐ろしくて、怒りっぽい人は見かけだけである。abbaiare「(イヌが)吠える」
2. Cane affamato non teme bastone.(窮鼠(キュウソ)猫を噛む):イタリア語では「飢えたイヌは棒をも恐れぬ」affamare「飢える、空腹である」、temere「恐れる」
3. Non svegliare(destare) il can che dorme.(藪をつついて蛇を出す!):イタリア語では「寝ているイヌを起こすな!」を言い、せっかく物事が収まっているのに余計なことをして面倒を起こすな!という意味。
4. Il cane morde sempre lo straccione.(イヌはいつもぼろきれを噛む):弱者はいつも迫害され不幸になる。
5. Vivere insieme cane e gatto.(犬猿の仲):イタリア語では「イヌと猫が一緒に生活する」と言います。
B. ネコに関することわざ
1. Fare la gatta morta.(見て見ぬ振りをする):イタリア語では「死んだ雌猫のふりをする」と言う。
2. Non dire gatto finché non l'hai nel sacco.(取らぬ狸の皮算用):「猫を袋の中に入れてしまうまでは猫を取った!と言うな」すなわち、まだ手に入らないうちから、それを当てにしてあれこれと考えるなという意味。
3. Gatta ci cova!(何か落とし穴があるぞ!):「猫が卵を抱いているぞ!」「裏に何か落とし穴があるぞ!」「何やら怪しいぞ、罠があるぞ!」covare(鳥が卵を)抱く
4. Non c'era un gatto.(人っ子一人見当たらなかった):ネコが街のどこにでも自由に気ままに歩き回っているイタリアならではの言い方のようです。
5. Gettare le perle ai porci.(猫に小判!):イタリア語では「豚に真珠を投げる」と言う。
6. Tanto va la gatta al lardo che ci lascia lo sampino.(悪事を続けるといつかは露見して元も子もなくなる):イタリア語の意味は「ネコが何度もラードを盗めばいつかは罠に足を取られる」tanto...che...(非常に...なので...する)
7. Quando manca la gatta i topi ballano.(鬼のいぬ間に洗濯):イタリア語では「ネコのいぬ間にネズミが踊る」怖い人や気兼ねする人のいない間に、思う存分くつろぐこと。mancare「...がない、欠ける」
8. Gatto scottato teme l'acqua fredda.(羹に懲りてなますを吹く):イタリア語では「火傷したネコは冷たい水も怖がる」と言う。ある失敗に懲りて、必要以上に用心深くなり無意味な心配をすること。scottato「火傷した」
9. essere come il gatto e l'acqua bollita.(そりが)合わない):イタリア語では「ネコと沸騰したお湯のようだ」といいます。
10. Figlio di gatta catturerà sorci.(蛙の子は蛙):ネコの子もネズミを捕まえる。
I figliuoli dei gatti pigliano i topi.とも言う。catturare・pigliare「捕まえる」
11. avere sette spiriti come i gatti.(七転び八起きする):イタリア語では「ネコのように7つの精神を持つ」の意味。ネコの気分はめまぐるしく変わるように見えることから、7つの精神を持つと言うことになったようです。
12. La gatta frettolosa fa i gattini ciechi.(急いでは事を仕損じる):慌てた母ネコは目の見えない子猫を産む。frettoloso「慌てた、せっかちの、素早い」
13. La gatta per fare in fretta fece i micini ciechi.(急いでは事を仕損じる):何事も焦ってやると失敗しがちだから、急ぐときほど落ち着いて行動しなさいと言う意味。in fretta「急いで、慌てて」
14. Di notte (A buio) tutti i gatti sono grigi(neri).(夜はどのネコも灰色〈黒色〉):夜は〈暗いところでは〉どのネコも灰色〈黒色〉に見えてしまう」ということから、「適切な時を選べ」という意味で使われる。
C. その他の動物に関することわざ
1. Meglio un uovo oggi che una gallina domani.(明日の百より今日の五十):イタリア語は「明日の雌鳥より今日の卵」、将来の利益より、今の確実な利益の方がよいという意味。
2. Tanti galli a cantar non fa mai giorno.(船頭多くして船山に上る):イタリア語は「沢山の雄鳥が鳴いては夜が明けない」という意味。指示を下す人が多すぎて方針や行動がまとまらず、物事があらぬ方向へ進んでしまうこと。
3. prendere due piccioni con una fava(一石二鳥):「一つのソラマメで二羽の鳩を捕る」一挙両得となることで、二つのものを一つの手段で得るということ。
4. In bocca al lupo! Crepi (il lupo)!
イタリア語では「狼の口に(食われてしまえ)!」「(狼)くたばれ!」という意味。
大事な試験や面接などに向かう人に対して「がんばって!」「うまくいくといいね!」「幸運を祈っています!」と励ますときに使います。言われた人はCrepi il lupo!と返事をします。これは昔、猟師間で交わされた合言葉で、狩りに行くとき、ねたみ深い森の神を欺くため「うんと取ってこいよ!」と言う代わりに、「狼の口に(食われてしまえ)!」と言葉をかけ、それに対してGrazie!と感謝の言葉で返すのでなく、自分自身を奮い立たせる意味で「狼(なんか怖くない)くたばれ!」と答えたそうです。
5. Una rondine non fa primavera.「つばめ一羽で春にはならぬ」すなわち、物事は一部分だけを見て判断するものではないという意味。
6. Gallina vecchia fa buon brodo.(亀の甲より年の功):イタリア語では「老いたメンドリはよく出汁が出る」と言い、年寄りだから、古いからと見捨てたものではないということ。
7. A lavar la testa all'asino, ci si perde acqua e sapone.(ロバの頭を洗うには水と石けんがいくらあっても足りない):ロバは非常に頑固で、その上のろまな動物なので、たとえどんなによく世話をしても時間の無駄である、「馬鹿につける薬はない」という意味。
8. Non vendere la pelle dell'orso prima di averlo ucciso.(とらぬ狸の皮算用):イタリア語の意味は「熊を殺す前に熊の皮を売るな!」。まだ手に入るかどうかわからないものを当てにするなという意味。
D. イヌとネコの慣用的表現について
- Mondo cane! : なんていやな世の中だ!
- Un tempo cane! : なんてひどい天気だ!
- da cani(cane): ひどい、惨めな、粗末な
- lavoro fatto da cani : 雑な仕事
- fatica da cani : 辛苦、言うに言われぬ苦労
- Mestiere da cani : いやな仕事、惨めな仕事
- roba da cane : 粗悪品
- tempo da cani : 悪天候
- fare una vita da cani : 惨めな生活を送る
- Fa un caldo(freddo)da cani : 恐ろしく暑い(寒い)
- trattare qualcuno come un cane : 人を横柄に扱う
- fame da lupo : とってもお腹が空いている
- giocare a gatta cieca : 目隠し鬼をする
- fare il gattone : とぼける
- vederci come i gatti : とても目が利く
- avere occhi da gatto : 鋭い視力を持っている
- essere(stare) come cani e gatti : 犬猿の仲である・いる
- Non c'èra un cane : 人ひとりいなかった
- porco cane! 畜生!: Brutto cane! なんといやなやつだ!