文化講座
第67回 2回連載の2回目 現存最古の国宝「犬山城」を巡る・鵜沼城との関係を考える

国宝・犬山城入口にて
前回は国宝「犬山城」について書きました。今回はその創建当時からのオリジナルな犬山城の天守閣から肉眼で見える美濃の鵜沼城との関係について、織田氏の内情を含めた観点から書いてみたいと思います。

名鉄電車と鵜沼城跡の岩山
現在の木曽川に面した、名鉄犬山線の犬山鉄橋のすぐ畔の岩山にそびえる標高95mの山城で、普通通る車や人には、ここに戦国時代の有力拠点としての城があったことなどほとんどわからないようにひっそりと存在してます。
美濃の斎藤道三系三代(道三・義龍・龍興)に仕えた武将・大沢次郎左衛門が城主として美濃と尾張の国境を守っていましたが、彼は道三亡きあと、その後を継いだ息子の義龍・その子の龍興と反りが合わず信長に下りました。その大沢の調略に功があったのが秀吉兄弟でした。NHK大河ドラマ「豊臣兄弟!」では、これまで扱われなかった「鵜沼城主・大沢次郎左衛門」を登場させ、歴史関係を描きました。

犬山城に展示されている城の木組み模型
現存最古の国宝「犬山城」(愛知県犬山市)の初代城主は、織田信長の父、信秀の弟、すなはち信長の叔父に当たる織田信康(1537年築城)で、二代目城主が息子の信清でした。織田家は信長が尾張を統一し、国主になるまでは跡取り問題で乱れており、信長の叔父に当たる初代犬山城城主の信康が美濃との戦いで戦死した後、その子の信清が信長と共同して戦った戦の見返りとしての恩賞、所領をめぐり、信長と対立、反目し合っていました。
美濃の道三系三代に仕えた鵜沼城主の大沢次郎左衛門はその仲違いの機を利用して信清に信長を殺害するように画策しました。NHKの大河ドラマ「豊臣兄弟!」では鵜沼城主の大沢次郎左衛門が信長に下り、拝謁したときに、信長は大沢を家臣に命じ即時に殺そうとします。それは大沢が信長に反目する信清をそそのかせて信長を殺そうと画策した経緯を信長が知っていたからです。大沢は危うく信長に殺されそうになりますが、危機一髪のところで秀吉、秀長に命を救われ、後に秀吉の配下となります。

犬山城石垣
このように犬山城と鵜沼城は尾張の国と美濃の国の国境である木曽川を挟み、目と鼻の先の距離、いわば互いに両国の最前線基地であり、まさに見える距離にあります。この2城は木曽川があることにより、川を挟んだ美濃と新興国尾張の微妙な力の緊張感の中にあったと言えるのです。

犬山城内に展示された歴代城主の甲冑
城の三方を崖に囲まれた急峻な岩城「鵜沼城」、城といっても天守閣はなく、岩上の平場に館が建てられた、自然の要害であったに過ぎない、砦のような「小城」であり、真下には尾張と美濃の国境をなす木曽川がゆったりと流れ、ここは東山道の渡しでもある交通の要衝でもありました。
永禄8年(1565年)、叔父信康の子、信清を征し、尾張を統一した信長は木曽川を越えて美濃国に攻め込みました。「信長公記」には、信長の攻略目的が鵜沼城、猿啄城(さるばみじょう)であったこと、信長は伊木山(各務原)に砦を築いて美濃への足掛かりにしたことが記されています。
信長の勢いから、鵜沼城を守り切れないと判断した城主、大沢次郎左衛門は降伏しました。「太閤記」には木下藤吉郎秀吉(後の豊臣秀吉)が大沢次郎左衛門を調略したと記されています。

犬山城
天正12年(1584年)の小牧長久手の戦いにおいて、秀吉は鵜沼に布陣しています。彼は鵜沼の渡し場を戦略上重要視しており、船を集めさせるなどして木曽川の渡し場の両岸を固めています。鵜沼という地勢の重要さが分かります。
信長の美濃統一により、鵜沼城の歴史的な役割は終わりました。
徳川時代には功臣の成瀬家が代々の犬山城城主を務め上げました。

鵜沼城全景
昭和の初め頃、鵜沼城跡には個人の別荘が建てられ、後に旅館「城山荘」(じょうざんそう)として営業したそうです。
「日本ライン」と呼ばれた木曽川の絶景を望むことができる旅館であったため、第二次世界大戦後は米軍に接収され、クラブとして使用されました。その後火災などから建物は解体撤去され、今は道が急峻で危険であること、個人所有となっていることから、立ち入りが禁止になっています。

閉ざされた鵜沼城の入口
今後整備され、一般に公開されることが望まれる「古城跡」の一つです。
犬山城の真下には近代的な「ホテル・インディゴ」があり、そこに隣接して、普段は公開されてませんが、織田有楽斎の国宝茶室「如庵」があります。
また、このホテルのティールームから珈琲を飲みながら「犬山城」を観ることもでき、更に木曽川沿いの堤を鵜沼城まで散歩するのも桜や新緑、紅葉のシーズンに大いに楽しめますから、ぜひ歴史を探訪しながら、楽しんでいただきたいコースです。

犬山城の真下にあるホテル・インディゴロビーから見た犬山城
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