文化講座
第58回 大阪・鶴橋商店街を歩く

にぎやかな鶴橋商店街
今回は私の好きな韓国食材店、飲食店が、文字通りひしめき、入り組んだ鶴橋商店街に来ました。昭和中期のノスタルジー漂う香り高い庶民の街です。旅の楽しみの大きな要素は「飲食」です。関西に旅されるときには、是非訪れてほしい街です。
最近は有名店でも質と味が落ち、値段だけが上がるところが多くなり、失望されることが多くなりました。特に基本的な「ダシ」の質が落ち、微妙に味が落ちて、更に食材の大きさが小さくなってきてます。なんとも世知辛い世の中です。その点、鶴橋商店街は、客を大切にしますから安心です。

近鉄鶴橋駅西口と、鶴橋商店街入り口(写真左手)
私は五年前にコロナもありましたが、年齢からもよい機会であり、仕事を東京から奈良西大寺に移転しましたが、目的は、基本的に好きなことをして、残りの人生を楽しむことにあります。
歴史と思想、古美術にまつわる奈良、明日香、京都を隅々まで回り、写真撮影、古美術、歴史に関する執筆をすることが目的です。それに伴う味の探訪ももちろん目的でした。奈良からは近鉄に乗り京都には40分、大阪には30分と近いことも、地理的には大きな魅力です。特に大阪は天満に伸びる長い天神橋商店街のような街は東京にはない独特な雰囲気があり、この日本一長い商店街には何でもあります。私の好きな古本屋さんもたくさんあり、時の経つのも忘れるほどです。休憩する飲食店、カフェまでさまざまあり、ラーメン店などは貝味、豚骨、醤油味など、尽きることの無いおもしろさと魅力があります。さらにJR環状線と近鉄、阪神、地下鉄が交差する鶴橋商店街には、新旧併せて2カ所の大きな韓国村、というか韓国食材飲食店街があり、東京御徒町や新大久保の韓国飲食街よりはるかに規模の大きな食材と飲食街として、毎食食べても飽きない魅力がありますし、本場の韓国を思わせる密集した、魅力ある街です。

食材のいろいろ
私はかつて古美術の中でも李朝陶磁器を愛し、その研究のために韓国ソウルに近い広州に点在する数々の白磁窯跡や、中部の粉青沙器(ふんせいさき)の鶏龍山諸窯跡、南部の熊津の高麗青磁諸窯跡を訪ねると共に、各地の古美術商店街を訪ね、韓国全土を20数回以上も旅しましたし、多くの愛好家をガイドしましたから、韓国の飲食についても名店を回り、おかげで舌が肥えました。
特に東大門、南大門の飲食街は美味しく、おもしろく、しかも安いことに驚きました。

にぎやかな街
福岡からも高速船で行ける釜山の海産物市場は特筆すべき場所であり、生け簀から新鮮な魚を選び、その場で調理して食べさせ、本場の味を楽しめましたが、気楽には行けません。
そこへゆくと、昔からの味を受け継いでいる店がひしめく鶴橋商店街には気楽さと言葉が通じる気安さがあります。
戦後間もない昭和20年の秋から広まった、どさくさの闇市としてのスタートでしたから、80年の歴史があります。
昭和21年頃にはいくつかの商店街が結成され、現在の鶴橋商店街の原型が出来始めたようです。近鉄とJR環状線が交わる鶴橋は戦前から交通・物流の要衝として栄え、商業が発展しました。
この街は信じられないような細い路地に、食材店や飲食店が、ひしめき合うように、ところ狭しと並び、また戦後の闇市の面影が、迷路のように入り組んで、まさに韓国飲食店街のラビリンスです。実に生活に即した庶民感覚の街の代表的な存在といえます。

にぎやかな街
最近はネットで知った外国人観光客も急速に増加してきているといいます。
ブランド品から庶民的な衣料品、布地までを幅広く扱う店も増え、この街は少しずつ変貌しています。
大きい店は比較的新しく、本当に小さな飲食店にこそ昔の面影がよく残りますから、そうした店を探しながら、本当に自分に合った韓国の文化に触れられる貴重な場となっています。

大盛屋のスンドゥブチゲ鍋定食(特製大盛・中辛)

韓国で流行ってるお菓子作り実演

鶴橋らしい、レトロな家

一休みできる珈琲店
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