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旅・つれづれなるままに

細矢 隆男

第27回 冬の越前海岸の蟹(ズワイ蟹)とウミネコの赤ちゃんたち


美しい夕陽とウミネコの赤ちゃんたち

 越前河野海岸。私はここから見る夕陽は最も美しい夕陽だと思います。それは単なる夕陽ではなく、前景にウミネコの繁殖地である小島といいますか、岩場といいますか、とにかく大自然の中にある岩場に、生まれて間もないウミネコの赤ちゃんたちがひしめいているからです。他ではなかなか見れない風景です。より詳しく観察するためには双眼鏡があると便利です。

 この島はウミネコにとっては外敵から身を隠し易いようで、攻撃してこない人間の民家や車が頻繁に通る道に近い方が、警戒心の強い外敵から身を守るウミネコには、逆に安全な環境であるのかもしれません。


元気に飛ぶウミネコたち

 私が最初にここを訪れたのは、昨年、2022年の5月でした。たくさんの雛鳥たちが島に密集して、よく見ると島がウミネコの赤ちゃんたちでびっしり覆われているように見えるほどでした。


越前海岸の夕陽

 さらに細かく見ていますと、餌を探しにいく親は母鳥が多いらしく、島全体を数十羽の雄親鳥が、じっと動かず雛鳥たちの安全を見張っていて、外敵が来たら追い返す屈強の強者という感じの緊張感が漂います。きっと何羽かの雄親鳥たちが結束して雛たちを守り、対抗するのでしょうね。写真にも何時間もじっと動かず、辺りを警戒してる鳥のシルエットが島の上方に写ってますから、確認してみてください。私はずっと身動きせずに周囲を警戒する雄たちを見て感心、感動しました。

 親鳥が、生まれて間もない雛たちに餌をせっせと運び、与える姿はどんな生物にも共通する特徴でしょう。しかし雛たちが自力で狩りをしたり、餌を捕獲できるようになると親は去ります。人間と違い、子に対する執着はありません。そこが見事で、人間も見習うべき自然界の姿です。人間界では子供にしがみついてる親も多いですね。やはり自立して、あとは大自然の中の自然淘汰の掟のなかで、自力で生きて行かねばなりません。そこは自然の摂理に委ねられた厳しい世界です。そしてその子も同じことを繰り返し生きて行きます。


島を埋めるたくさんのウミネコの赤ちゃんたちと、何時間も遠くを見つめ警戒する雄親鳥

 もう2ヶ月もすればかなり大きくなり、巣立ちしてゆく準備が始まります。それは羽を広げたり、羽ばたく練習をしたりする様子で分かります。5月~6月頃だとそうした姿が少し見れるようになります。飛べるようになれば、まさに巣立ちで、自分で餌を取り、外敵から身を守る訓練をし、自立して行きます。

 9月頃にも行きましたが、赤ちゃんウミネコたちは、もう立派な成鳥になり、飛び回ってました。たくさんある尖った岩のてっぺんに止まり、あたりを警戒しながら見渡してる姿には、若々しさにも頼もしさが感じられました。若くて元気ですから、飛ぶのも楽しいのでしょうね。


こちらを向く若鳥ウミネコ

ウミネコとカモメはどこが違うのか、一見難しいですが、外見上の一番の特徴は、カモメのくちばしが黄色一色であるのに対し、ウミネコは黄色いくちばしの先端に黒い帯と赤い班文があることでしょうか。 また、カモメのくちばしはウミネコにくらべると短く、ウミネコのくちばしは大型カモメ類に比べて細いため、かなり長く感じられます。

 越前海岸は気候の変化の激しいところで、冬は雪が少ないですが、寒く、越前蟹で有名なところです。原稿書いてます今は1月ですから、ズワイ蟹で有名な季節になり、地元は稼ぎ時で忙しい様子です。11月から3月まで越前海岸は活気付く場所なのです。

 ウミネコたちの岩場は、すぐ近くに目印として「北前船主の館・右近家」福井県南条郡南越前町河野2 があり、江戸時代の海運の歴史にも触れることができます。岩場は小浜から見て、右近家の手間300~500メートル、トンネルを抜けてすぐ左側の海岸にテトラポッドを挟み、幾つかあります。


重量感のある越前蟹(ズワイ蟹)

 蟹の話になりますが、越前蟹は茹でる前の甲羅の硬さがとても重要だと言われています。 甲羅が硬くて、大きさに対して、どっしりした重量感がある越前蟹が良い蟹とされます。肉厚で甘い蟹身がぎっしり詰まっていて、最高です。硬さの見分けも難しいですが、重量感を見分けることが最も難しいといわれています。まあ何でも体験が大切ですから、出かけて、見て、持ってみて、漁師さんから教えてもらい、食べてみることです。楽しみですね。


会話するかわいい鳥たち

漁師たちは民宿や宿屋を経営しているケースが多いため、ゆっくり宿泊して越前蟹を楽しむのもよし、またおみやげにも良いでしょう。


美しい夕陽

越前市観光協会
0778-23-8900

次回は近江・大津にあります「義仲寺」をとりまく芭蕉、芥川龍之介について(2回連続)をお送りします。

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