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万葉植物から伝統文化を学ぶ

万葉いけばな研究家
庄司 信洲

庭梅

 新しき年を迎えたるたつ年から、冬季の野辺に出掛け、草木の生成をめながら散策します。
 その散策のなかで庭梅のういういしき新芽の姿を観することがあります。
 庭梅はバラ科の落葉低木で、3月の末頃から4月にかけて、淡紅色や白色の小花を、条状に伸びたる枝にならんで咲かせます。
 『万葉集』では「」と称されて四首がしょうされており、そのうちの一首としては、 「思【おも】はじと 言【い】ひてしものを 翼【は】酢【ね】色【ず】の 移【うつ】ろひやすき 吾【あ】が心かも」  おほとものさかのうへのいらつの歌、(もう人を思うことは、止めようと言っていたのに、はねず色のように、変わりやすい私の心よ)と詠されております。


図版[I]
 この庭梅の植物学として、庭梅はバラ科の落葉低木であり、開花の後には、かく(実)は赤くじくしてなまで食することが出来ます。そして、その核には薬効があり、その実の熟するときには「りんしょうばい」と称され、食薬両用の効があることから、往昔より好んで庭に植えられております。
 そして、次の庭梅の花色美としての歌として、さかのうへのいらつの歌は、 「唐【は】棣【ね】花【ず】色の 移【うつろ】い易【やす】き 心あれば 年をそ来【き】経【ふ】る 言は絶【た】えずて」 (庭梅の花色のように、変りやすき心があるので便たよりだけはやさないで下さい)と詠されております。
 この庭梅を江戸時代の植物図鑑「I」の『本草図譜』には、赤から白へとほのかな色の移ろいが描かれ、そして、さらに花後の実も鮮明に描かれており、「にはうめ、こうめ」との異が記されております。

図版[Ⅱ]
 その美しき梅花としての開花したものを、美しきちょう染付壺に、瓶口に紫陽花あじさいの緑々たる葉の上部に、高らかにけ表わしたる作品「II」を参照してみて下さい。
 どうぞ、ぬくもりゆく春の訪れの日に、御覧のそう作品の庭梅の開花と出合って見て下さい。

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