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頤医の「かて食」&「かて茶」ワールド

信天翁(アホウドリ)喫茶主
医学博士 山中 直樹(宗直)

かて食&かて茶のグローカル食で「やわらかくつながる」-3

 「やわらかくつながる」ための「共食共飲」は人類が始まって以来今日に至っても続けられています。
 前回に述べました芋煮会は、東北地方で今日でも盛んに行われているのです。
 家庭では卓袱台を囲んで食事をするスタイルは家族の絆を強くすると思います。
祝い事、記念事などの宴会も家に集まって行われるのが普通でした。
町の露地ではおでんなどの煮込み料理、居酒屋風食堂、お好み焼き屋、ラーメン屋などと人が自由に会話しながら楽しむ食堂が今でも集まっています。
今日のようなイベント的茶会ではなく、戦国時代では淋間茶の湯で仲間内が集まり、敗戦前までは振茶、桶茶のように地域の人が囲炉裏を囲んで共食共飲を楽しんでいました。
 海外でも同様です。
 スペインのバスク地方では美食倶楽部という地域の男性が集まって自分達で調理して食事を楽しむクラブがあります。
 スペイン、イタリアなどの南ヨーロッパ地域ではBar(バール、バル)と呼ぶ人が集まって会話する軽食喫茶や酒場があります。
 日本流にいえば飲食をしながらの井戸端的意見交換所でもあるのです。
 また、「カフェ・ソスペーゾ」のようにお金を2杯分払って弱者のためにコーヒーの代金を前もって支払っておくような店もあります。
 「もう1杯」分をと持てる人が後で来る誰か弱者のために代金を払っておく助け合いの精神を持った習慣です。
 イスラム教徒のラマダンという断食月では、日の出から日没までは飲食を断つのですが、日没後は飲食が自由に出来るようになります。
 家族だけではなく貧しい人達のために街中で「イフタール」と呼ぶ食事を用意する習慣が今でもあるのです。
 イフタールは神との共食、つまり、直会の意味があるのですが、神より弱者への共食共飲のおもてなしの意味が含まれているのです。
 「カフェ・ソスペーゾ」「イフタール」ともに、「わかちあい」の精神によって弱者に対して直会、共食共飲をとの心が共通していると思います。
 血縁、地縁、社縁を超えた無縁の人達との「やわらかくつながる」精神は人間味ある社会では今日でも続いているのです。
 人間のみならず、全ての生物は、他の生物の命を奪って生きていることを忘れてはなりません。
人間も含めた生物はやわらかくつながって地球環境を保たなければ生きていけないのです。
食は常に自然との「直会」なのだと忘れては生きていけないとなります。

頤医の「かて食」&「かて茶」ワールド
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