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「天命起臥之道」に生きる

Dr.BEAUT・ソフィーリッチ代表
医学博士 山中 直樹

「新考える葦・New‐Thinking Reed」となろう-25 若者・Z世代への期待―4:科学・技術研究

 前回は我が国の教育費がOECDで比較可能な38ヶ国の内で37位である程に公的支出が少ない国だと述べました。
 子供の頃からお粗末な教育費で教育されていると言うことです。
 今回は次世代の若者へ期待する日本にとって極めて重要な役割を持っている科学・技術研究について取り上げます。
 我が国が科学・技術立国であるためには生命線となる研究費についての状況は教育費と同様に極めて寂しくて情け無い状況にあります。
 日本経済新聞が「科技立国 落日の四半世紀」と題したシリーズをこの9月28日から始めた程です。
 「落日の四半世紀」と記される程に寂しい現実があるのです。
 日経のシリーズでは最初に「つまずきは若手軽視から研究力低下、改革後手に制度・予算も旧弊破れず」とあるぐらいのお粗末な現状で悲しい状況です。
 研究の世界でも、「制度・予算も旧弊破れず」とあります。
 科学・技術研究の世界でも他の領域と同様な旧来の体制、旧制度がまかり通り、研究費配賦法でも選考人事を含めて問題があるのです。

 日本では准教、助教は教授の下に働くメンバーの一人で自分が独自の研究テーマで研究できる自由な環境にないのです。
 研究者として一番大切な若い時に、独自に独創性ある研究が出来ないのです。
 つまり、海外のように准教授や助教は独立した研究費を獲得して自由に研究できる場を持って運営できないのです。
 大学院生同様に教授の支配下にあり研究の自由がないと言うことです。
 アメリカなどの先進国とは違います
 名古屋大学でノーベル賞の受賞者は若い時代に教授が自由に研究させました。
 ノーベル物理学賞を受賞(2008年)した小林、益川の両氏は当時の名大理学部の坂田昌一教授の研究室に所属していました。
 坂田先生の教室は極めて自由な環境で研究が出来るような研究室として知られていました。
 坂田先生自身も、当時、日本最初のノーベル賞受賞者の湯川秀樹先生に続いて受賞の可能性ありと私が学生時代に言われていました。
 2014年にノーベル物理学賞を受賞した名大の天野浩教授は共にノーベル賞を受賞された赤﨑勇教授の教室の大学院生でした。
 大学院時代から一番困難が予想された窒化ガリウムの青色発光ダイオード研究をわざわざ自分から選んで自由に研究されたのです。
 最近、IoTにとってキーとなる電子機器を充電する「ワイヤレス給電」を可能にする方法を開発されて活躍されています。

 若い時に独自に研究テーマを持って自由に研究できる環境とする予算配分法がキーとなります。
 制度と予算配賦の決定法が我が国では旧弊にありますから次世代はノーベル賞から遠のく運命が予想されます
 このままでは、我が国は人文科学のみならず、科学・技術研究の世界でも今までのような国際的地位を失う可能性が高いのです。
 若者のみならず、企業活動もやる前から一人ひとりが国や所属する組織にがんじがらめになっている体質は過去の敗戦のようなショックが起きるまで変われないのか?!
 デジタル化と地球温暖化の切迫に人間の役割や生活が大きく変わる時代なのです。
 研究の世界も国際的に開かれた自由な活動が不可欠!!

「天命起臥之道」に生きる
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