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知って得する鉄道旅行術

鉄道ライター/安城学園高校教諭
山盛 洋介

『鉄道の旅』の魅力

このところ、「鉄道の旅」が静かなブームを呼んでいます。
俳優の関口知宏さんがNHK−BSの番組企画として取り組んだ「最長片道きっぷの旅」「鉄道乗りつくしの旅」は、それまであまり鉄道の旅というものを意識したことのなかった人々に大きな反響を呼んでいますし、テレビや雑誌、新聞等にも「ローカル線で温泉とグルメを楽しむ」などといった特集記事が多く掲載されるようになりました。
本連載では、誰にでも楽しめる「鉄道の旅」の魅力を、具体的な実例やお得に旅する方法などの"チエ"も交えながらご紹介していきます。列車のシートに座り、のんびり車窓を眺めているように、気楽にお読みいただければ幸いです。

【写真01-1】美しい風景を眺めながらの鉄道の旅(JR氷見線・越中国分~雨晴)

ところで、「鉄道の旅」がこんなに注目されているのはなぜでしょうか。
移動手段として鉄道を利用する、ということならよくあるでしょう。新幹線や特急列車など、盆や年末年始、連休などには大混雑になります。しかし、鉄道そのものを旅の舞台にする、というとどうでしょうか。
鉄道は、他の交通手段と比較して、沿線地域住民の生活に密着した交通手段だという特徴があります。自家用車で旅をするのと異なり、鉄道で旅をすると、好む好まざるに関わらず、その地域の人々と乗り合わせます。とりわけ、鈍行列車は地域の生活そのものですから、列車に揺られること自体が、その沿線地域にどっぷり浸かることになるといっても過言ではないでしょう。当然、地元の人々とふれあう機会も多いわけです。これは、自家用車という密室の空間では、なかなか体験できないことであり、鉄道ならではの味わいといえましょう。たまたま乗り合わせた人と他愛もない話で盛り上がったり、地元の人しか知らないような穴場を教えてもらったり、みかんを1つ分けてくれたり・・・。直接言葉を交わさなくても、訛りに耳を傾けたり、小さな駅で降りていった少年の背を目で追いかけたり、ホームで手を振る見送りのシーンにじーんとなってみたりと、人々の生き様や地域の素顔が垣間見える瞬間にあふれています。こうした「未知の出会い」が、鉄道の旅最大の魅力ではなかろうかと、私は考えます

【写真01-2】 ふれあいの待つ鈍行列車の旅(JR高山本線・飛騨細江駅)

とかく、人間関係の希薄さが指摘される現代。旅先で知り合った人々との出会いは、決して大きなものではないし、二度と会うことなんてまずありませんが、それだけにどこか新鮮に感じるものです。だから、旅に出ると、他人や自分に対して優しくなれる気がします。そんなチャンスがたくさん転がっているのが、「鉄道の旅」なのではないでしょうか。

【写真01-3】 地元のおじさんとの出会いも貴重な体験(JR飯山線・平滝駅)
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