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知って得する鉄道旅行術

鉄道ライター/安城学園高校教諭
山盛 洋介

第42回 知っている人だけが得をする! JRのきっぷのお得な買い方(3)

(3)「途中下車」の制度を賢く使う

 あまり知られていませんが、JRの乗車券は、戻らない限り、有効期間内であれば途中経路上で何度でも途中下車ができます。途中下車というのは、改札を出場し、何らかの用事を済ませ、再び改札を入場し、引き続き先へ進むということです。つまり、乗車券は、途中で何か用事があるとしても、最終目的地まで買い求めておけばよいということになります。

安城から東京都区内までの乗車券

 このきっぷは、東海道線の安城駅から、東京駅まで乗車したときに使用した乗車券です。きっぷにベタベタと駅名を記した小さな印が押してありますが、これを「途中下車印」といい、この駅までは既に乗車したという証明になります。改札で「途中下車です」というと、この印がきっぷに押されて、出場OKとなります。この乗車券の場合、岡崎・豊橋・二川・弁天島・島田・焼津・静岡・三島・熱海の各駅で途中下車しています。

とはいえ、これにも例外があります。次のような場合、途中下車はできません。

イ)営業キロが100kmまでの乗車券(「近距離きっぷ」)
「名古屋→岡崎」の乗車券(40.1km・600円)で、金山で途中下車しようと思っても、できません。乗車券には「下車前途無効」と記されます。
ロ)回数券など一部の割引きっぷ
ハ)特定都区市内ゾーン発着の乗車券の場合、その発着ゾーン内では途中下車不可
例えば、先ほどの写真の乗車券の場合、着ゾーンとなる「東京都区内」ゾーンでは、途中下車できません。

 この「途中下車」制度、経路上で乗り降りできるということもそうですが、トータルで見ると安上がりになるというメリットもあります。
 例えば、名古屋から東京まで行く途中、静岡で用事があって1泊する場合を考えてみましょう。

<別々に買うと>
 名古屋→静岡(3,260円)  静岡→東京山手線内(3,260円) 合計6,520円

<通しで買うと>
 名古屋市内→東京都区内(6,090円)

となり、通しで買うと430円も安くなります。「名古屋市内→東京都区内」の乗車券は3日間有効となりますから、静岡で2泊ということも可能です。

 一般的に、JRの運賃は「遠距離逓減制」といい、遠距離の乗車券になればなるほど1キロあたりの運賃(これを賃率という)が安くなる大原則があります。ですから、乗車券を細切れで くつくことが多いのです。

さて、ここからは応用編です。

名古屋から甲府まで往復することを考えてみましょう。この場合、2つの経路が考えられます。中央西線~中央東線経由と、東海道線~身延線経由です。まずはこの2つの経路の運賃を比較検討してみます。

<中央線経由> 名古屋市内→甲府  運賃4,620円 (往復 9,240円)
<身延線経由> 名古屋市内→甲府  運賃5,250円 (往復10,500円)

距離的には中央線経由のほうが近く、運賃も安くなります。

 それでは、行きは中央線経由・帰りは身延線経由にすると、どうなるでしょうか。
 行きと帰りのきっぷを別々に買えば、要は足し算ですから、4,620円+5,250円=9,870円となりますね。
 しかし、この経路は、中央西線・中央東線・身延線・東海道線をぐるっと一周してくることになります。

 乗車券は、同じ駅を2回通らない限り、どんなに遠回りでも片道乗車券になりますから、名古屋からぐるっと甲府を回って、経路がぶつかる金山までの片道乗車券とすることができます。つまり、
<1> 名古屋市内→金山(経由:中央西・中央東・身延・東海道) 8,720円
<2> 金山→名古屋(経由:東海道)               160円
 合計で8,880円となり、中央線経由で往復した場合よりも360円安くなります。甲府では途中下車とすれば良いわけです。もちろん、帰りに金山で下車して旅行を終了すれば良いなら、<2>の乗車券は必要ありませんから、8,720円だけで済み、もっと安くなります。

途中下車の制度をうまく使うと、意外なところで運賃を安く上げられることが、ご理解いただけたでしょうか。

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