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知って得する鉄道旅行術

鉄道ライター/安城学園高校教諭
山盛 洋介

温泉とローカル線の旅を楽しむ

旅の楽しみといえば、やはり温泉。老若男女を問わず、その魅力に惹かれる人は多いはずですが、今度の湯めぐりは、ローカル線に乗って出かけてみませんか。

1.長良川鉄道に乗ってお得に「湯浴み」
岐阜県を走る長良川鉄道に乗ってみましょう。JR高山本線と接続する美濃太田から、北濃(郡上市)までを結ぶ路線です。刃物の町として名高い関、うだつの町並みと和紙で有名な美濃市を経て、列車は清流・長良川沿いに走り始めます。
美濃太田から一時間ほどで、みなみ子宝温泉に到着します。ここは、駅舎がそのまま日帰り温泉施設になっています。列車を降り、駅舎に入ると、もうそこで靴を脱ぐようになっています。駅で降りて歩いて三分で温泉、というのは聞いたことがありますが、列車を降りて歩いて三歩で温泉、といった趣です。
露天風呂が広々としており、眼下に長良川を見下ろすロケーションで、ヌルッとした感触の湯を楽しめます。そして何より嬉しいのは、長良川鉄道利用者に限り、入浴料が無料になるということ! 入湯税(50円)だけは必要ですが、それでも格安ですね。列車を降りるときに、利用証明書をもらい、フロントに出せばOKです。
なお、長良川鉄道では、みなみ子宝温泉までの往復運賃が割引となるクーポンを主要駅から発売しており、美濃太田からの場合、1,500円です(通常往復運賃1,820円)。

日帰り温泉と駅が一体化したみなみ子宝温泉駅

2.樽見鉄道に乗って「うすずみ温泉」へ
同じ岐阜県を走る樽見鉄道。JR東海道本線の大垣から樽見までのローカル線です。かつては国鉄樽見線でしたが、国鉄末期に第三セクターに転換されています。
大垣を出て、揖斐川を渡るとまずは濃尾平野北端の田園風景の中をのんびり走りますが、本巣を出たあたりから、徐々に山峡へと分け入っていきます。列車は根尾川に沿うようになり、水鳥付近では1891年の濃尾地震で地表に出現した根尾谷断層をかすめます。そして、前方に能郷白山が見えてくると、終着の樽見です。春には淡墨桜が咲き、たくさんの見物客でにぎわうところですが、この樽見の駅前から、うすずみ温泉の送迎バスが列車の到着にあわせて発車しています。
うすずみ温泉は、山並みを眺めながら入る露天風呂が人気で、食事施設なども充実しています。ローカル線の終点に温泉があるなんて、素敵ではありませんか。
大垣に着いたら、樽見鉄道に乗る前に、「うすずみ温泉クーポン」をぜひ買い求めたいところです。このクーポンは、樽見鉄道全線が一日乗り放題となる乗車券と、樽見駅の近くにあるうすずみ温泉の入浴料、さらには温泉施設内のレストランで使える1,000円分の食事券がセットになって3,000円というもので、大垣~樽見間の往復運賃が1,800円、入浴料が通常850円ですから、かなりお得なクーポンといえます。

本巣駅で小休止する樽見鉄道の列車

3.温泉の宝庫、信州をローカル線でめぐる
温泉地数では北海道に次いで多いのが長野県。信州のあちこちに温泉が待っています。ローカル列車でこれらをめぐるのも楽しい旅です。
たとえば、諏訪湖のほとりには上諏訪・下諏訪の2つの温泉が並んでいます。にぎやかな上諏訪と、街道の面影を残しローカルムード満点の下諏訪、いずれも湯量が豊富な温泉地です。JR中央本線上諏訪駅の1番ホームには足湯もあるほか、共同浴場も数多くあります。
上諏訪なら、諏訪湖畔に建つ片倉館の千人風呂をめざしたいところです。諏訪地方は製糸業の盛んな土地でしたが、その中心企業であった片倉製糸の女工たちが入浴したといわれる施設で、レトロなたたずまいが優雅な入浴を楽しむことができます。また、下諏訪には地元の人が共同管理している浴場が数か所あり、旅行客も気軽に立ち寄ることができます。方言に耳を傾けながら、裸の交流というのもオツなものですね。

JR上諏訪駅の足湯
下諏訪には共同浴場が何か所も

風呂上がりにビールを一杯!というのは定番ですが、これはクルマの旅では絶対に楽しめないことでもあります。列車に揺られて、お湯に包まれて、身も心も癒しましょう!
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