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知って得する鉄道旅行術

鉄道ライター/安城学園高校教諭
山盛 洋介

第27回 飯田線各駅停車の旅(4)

中央アルプス・南アルプスにはさまれながらの飯田線の旅もいよいよ佳境を迎えます。電車は、右に左にと大きくカーブを繰り返しながら、ゆっくりと進みます。
そろそろ途中下車したくなります。そんなときに、お誂え向きの駅が田切です。細いホームと待合室があるだけの小さな無人駅ですが、築堤上に設けられ、アルプスの山並みを見渡すこともできます。次の電車が来るまでのひととき、ホームでぼうっとしているのもいいものです。
田切駅は、Ω型のカーブの南端にあります。田切を出た電車は、中田切川を渡るために上流へとさかのぼり、川幅が狭くなったところを鉄橋で渡ります。これは、国鉄飯田線の前身であった伊那電気鉄道が、建設費を安く上げるためにとった手法でした。もっとも、これが飯田線のスピードアップを阻害する大きな要因ともなっているわけですが。

田切駅
中央アルプスをバックに走る飯田線

中田切川を越えると、いつしか電車は駒ヶ根の市街地に入ります。中央アルプスの主峰、駒ヶ岳への登山口となるところです。駒ヶ根駅前からバスでしらび平に向かい、ここからロープウェイで千畳敷まで一気に登ることができます。夏場でも涼しい千畳敷では、高山植物の観察もできますし、ロープウェイは通年運行ですので、真冬でも登ることができます(千畳敷駅周辺は標高2,600mあり、軽装の場合は駅周辺の散策しかできません)。もちろん、「山は登るのではなく眺めるものだ」という方は、町のあちこちから、アルプスの雄大な眺めを堪能することもできます。

千畳敷カールで散策を楽しむ

再び駅に戻り、旅を続けます。上伊那地域の中心都市、伊那市に着くと、久々に大きな町に来た感を受けます。桜の町として名高い高遠への玄関口でもありますが、伊那市といえば、ローメン。焼きそばでもなく、ラーメンでもない、不思議な料理です。マトン肉やキャベツと蒸し麺を炒めたもので、独特の風味が特徴です。市内各地の飲食店のメニューにその名があります。こうしたご当地グルメを味わうのも旅の楽しみです。

伊那名物のローメン

さて、飯田線の旅も残りわずか。豊橋から走っては停まり、停まっては走りを小刻みに続けてきた旅もゴールが近づいてきました。両側にそびえていた山並みが低くなり、すっかり細くなった天竜川が見えてくると、終点の辰野はもうすぐですが、ほとんどの電車はそのまま中央本線に乗り入れ、岡谷や上諏訪・茅野まで(列車によっては長野まで)直通運転しますので、辰野で旅を終えるのは勿体無い気もします。飯田線の友である天竜川の源流は諏訪湖ですし、諏訪湖が見えるところまで旅を続けましょう。
辰野から岡谷までは10分ほどですが、幹線格の中央本線ということで、乗り心地がよくなったような気がします。乗務員もJR東海からJR東日本へ、駅の看板もおなじみのJR東海仕様(オレンジ色)ではなく、JR東日本仕様となります。
岡谷に到着です。諏訪湖までは徒歩15分ほど。天竜川が生まれるまさにその場所は、釜口水門という大きな水門が建っています。岡谷名物のうなぎでも食べながら、長かった旅を振り返りたいものです。

(次号に続く)

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