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知って得する鉄道旅行術

鉄道ライター/安城学園高校教諭
山盛 洋介

第22回 異色の鉄道に乗る(2) ~立山黒部アルペンルート~

「異色の鉄道」第2弾は、立山黒部アルペンルート。先回ご紹介した黒部峡谷鉄道から、山をひとつ越えたところを通る、日本屈指の観光ルートです。団体旅行のメッカでもありますので、訪れたことがあるという方も多いことでしょう。
立山黒部アルペンルートは、富山と信濃大町を結んでおり、立山や黒部ダムをそのハイライトに、さまざまな交通機関を乗り継いで、風光を愛で、自然に触れな がら旅することができますが、その中には、風変わりな「鉄道」がいくつもあります。大自然とならんで、これらの「鉄道」にもぜひ注目してみましょう。

富山地方鉄道の立山駅から美女平駅までは立山ケーブルカー。さらに高原バスに乗り換えて、室堂をめざします。室堂は標高2,450mで、立山登山の 拠点として観光客・登山客の絶えない地です。この室堂から、大観峰までを結んでいるのが、立山トンネルトロリーバスです。「バス」とは名乗っているもの の、法的には「無軌条電車」といい、鉄道(軌道)の一種とされています。車両の天井から伸びるトロリー(集電装置)が、架線から電力を得て走ります。そう いう意味では、もっとも「電車らしい」電車ともいえるかもしれません。レールはありませんので、一般のバスと同じようなゴムタイヤを履いていますが、当然 架線のあるところしか走れませんから、架線の張ってある専用道路が線路のような意味合いを持っているといえます。

立山トンネル内ですれ違うトロリーバス

室堂を発車すると、立山の地下を意外と速いスピードで走り抜けます。単線のトンネルなので、鉄道と同じように出発信号機などもあり、途中には交換設備がつくられ、ここで上下線の車両が行き違います。このあたりは、まさしく「鉄道」の趣です。
10分ほどで大観峰に着き、ロープウェイで黒部平へ。さらに地下の黒部ケーブルカーに乗り換えて、黒部湖に向かいます。このケーブルカーは日本唯一、全線 が地下につくられたケーブルカーです。黒部平から乗車すると、下り勾配になるので、まるで奈落の底へでも落とされるかのような感覚にとらわれます。

黒部ケーブルカー・黒部湖駅に到着

黒部ダムの堰堤を歩いて渡ると、関電トンネルを突き抜けるトロリーバスに乗車し、扇沢をめざします。アルペンルートで最難関工事だったとされるとこ ろで、破砕帯に挑む作業員たちの苦闘は『黒部の太陽』などの作品にも描かれています。現在、全国でトロリーバスが営業運転をしているのは、このアルペン ルートの2か所のみ。昔は全国の主要都市でみられましたが、極めて希少な存在になっています。

扇沢に到着した関電トロリーバス

乗り物を乗り継いでいくうち、その沿線に垣間見える大自然のすごみを感じずにはいられないのがアルペンルートです。弥陀ヶ原や室堂あたりでぜひ1泊して、満天の星空や早朝の高原を堪能したいものです。体力に自身のある方は、立山登山に挑むのもよいでしょう。

立山の美しい風景にふれる

名古屋市内JR各駅からの「立山黒部アルペンきっぷ」は、往復(名古屋~富山、信濃大町~名古屋。逆方向も可)で特急普通車指定席が利用でき、アル ペンルート内が乗り放題になります。名古屋~富山間の利用列車によって価格が異なっており、北陸本線「しらさぎ」利用だ21,090円、高山本線「ひだ」 利用だと18,090円です。また、宇奈月温泉まで乗り放題になるタイプもあり、いずれも2,040円増しです。

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