愛知県共済

インターネット公開文化講座

文化講座

インターネット公開文化講座

知って得する鉄道旅行術

鉄道ライター/安城学園高校教諭
山盛 洋介

第48回 東海地方の第三セクター鉄道を旅する(2)

前回に続き、第三セクターの旅をご紹介します。今回ご紹介するのは、静岡県の天竜浜名湖鉄道です。

東海道線の新所原(静岡県湖西市)と掛川(静岡県掛川市)を北回りで結ぶのが天竜浜名湖鉄道で、旧国鉄二俣線を引き継いで第三セクター鉄道として運行されています。二俣線は、戦時中に東海道線の鉄橋への爆撃を想定し、迂回路として敷設された路線でしたが、現在では平和に遠州路をのんびり走っています。地元では「天浜線(てんはません)」という呼び名で親しまれています。
新所原で東海道線の列車を降りると、一両の気動車が発車を待っています。掛川まで順方向なら何度でも途中下車ができる「みちくさきっぷ」を買い求め、掛川行きに乗り込みます。

新所原で発車を待つ天浜線の列車

新所原を出るとすぐ東海道線と分かれ、しばらくして小さな峠を越えると右側に浜名湖が見えてきます。左窓に目を転じれば、みかんの木々が山肌一面に植えられています。三ヶ日みかんの本場で、収穫の頃には明るい風景になります。
寸座という駅に停車。丘陵上から湖を見下ろせる眺めのいい駅です。寸座という名は、徳川家康があまりの景色の美しさに一寸(ちょっと)座ったことから付けられたといいます。ここで降りて1時間後の列車まで景色を眺めるのも一興でしょう。

西気賀で降りると、駅舎は洋食レストランになっている風変わりな駅で、かつて幾多の乗降客を出迎え、見送ってきた駅舎の中で、おいしい洋食が味わえます。
駅北側の山肌には姫街道が通っており、ちょうど寸座峠に挑む登り坂になっています。往時を偲ばせる石畳の道、みかん園の向こうに眺められる浜名湖・・・とロケーションは抜群ですが、なかなかの急坂で、「姫街道」という優美な名とは裏腹に、私など息がすぐに上がってしまいそうです。

西気賀駅はレストランを併設
姫街道から浜名湖を眺める

再び列車に乗り、関所があった気賀を過ぎると、浜名湖は後ろへ去り、線路脇には雑木林が目立つようになります。木立に囲まれた池や、小さな峠を経て、列車は浜松平野の北辺部に出ます。遠州鉄道との乗換駅である西鹿島を過ぎると、大きな鉄橋を渡ります。これが天竜川で、この天竜浜名湖鉄道の旅も、まさに「浜名湖」の章から「天竜」の章へと入ったといえましょう。地図を見ながら、この川が諏訪湖から流れてきたことを改めて確認すると、やはり立派な川だと感じます。

天竜二俣駅

天竜二俣を出ると、列車はのどかな農村風景から丘陵地帯へと進んでいきます。左側には、斜面に一面の茶畑が現われ、さすがは茶どころ静岡だと思わせます。浪曲や時代劇によく登場する森の石松の出身地、遠州森などを経て、列車は終着の掛川へと向かっていきます。

天浜線には、先ほど述べた「みちくさきっぷ」のほか、「1日フリーきっぷ」「遠州ぐるっときっぷ」など、お得なきっぷが多数発売されていますので、旅のプランにあわせて選んでみてください。詳細は、天竜浜名湖鉄道の公式サイトをご参照ください。

知って得する鉄道旅行術
このページの一番上へ