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知って得する鉄道旅行術

鉄道ライター/安城学園高校教諭
山盛 洋介

第 33回 全線開通50周年!紀勢本線を旅してみませんか

三重県から和歌山県にかけて、紀伊半島をぐるっと半周するJR紀勢本線が、今年2009年、全線開通50周年の節目を迎えます。それを記念し、沿線ではさまざまなイベントが計画されています。そんな「旬」な紀勢本線を旅してみませんか。

(1)紀勢本線のあらまし
紀勢本線は、亀山~和歌山市間384.2kmを結ぶ路線で、亀山~新宮間はJR東海が管轄する非電化区間、新宮~和歌山市間はJR西日本が管轄する電化区間です。地形の険しい紀伊半島の海岸沿いを走る区間が多く、海岸路線ながら山岳路線のように勾配や曲線が連続するのが特徴です。

紀勢本線のエースとして、名古屋~紀伊勝浦間に特急「南紀」、京都・新大阪・天王寺~新宮間に特急「くろしお」「スーパーくろしお」「オーシャンアロー」が運転されていますが、快速・普通列車は津~多気間・紀伊田辺~和歌山間で比較的利便性が高いほかは、本数も少なく不便です。とりわけ多気~新宮間は本数僅少で、プランニングには苦心します。

(2)車窓の楽しみ
紀勢本線の走る紀伊半島は、険しい山並みと海岸が接していることから、ダイナミックな車窓風景が展開します。とりわけ、紀勢本線でも最も地形の険しい尾鷲~熊野市間は、トンネルとトンネルの合間に海が見えるなど、乗客の眼を飽きさせない風景が連続します。また、入り江が奥まったところに小さな漁港が見えたり、集落の中に小さな駅があったりと、ローカルムードも満点です。また、その手前、紀伊長島以北の区間は、海が全く見えず、半島を旅しているとは思えないほど山深い地域を走り、驚いてしまうところでもあります。

新宮以西の和歌山県内も、熊野灘・枯木灘の雄大さや、ところどころに見える奇岩・岬などが変化に富んだ車窓風景をつくり出します。

紀勢本線の普通列車【紀伊長島駅にて】

(3)沿線のみどころ
まず挙げるべきは熊野古道でしょう。世界文化遺産にも登録され、とみに注目されています。熊野三山をめざし日本各地から"熊野詣"にやってきた人々が「蟻の熊野詣」と形容されるほど集まってきた参詣道です。特に、峠道の石畳のたたずまいなどは、往時の旅人の苦労が想起されるようで、感慨深くなります。

そして、熊野詣の人々がめざした熊野三山(本宮大社・那智大社・速玉大社)は、ぜひ訪れたいところ。険しい峠をいくつも越えて辿り着いた人々の感激は、列車やバスで旅をしている私たちと比べるべくもありませんが、そのありがたみに触れることができるだけでも意義深いのではないでしょうか。

また、太平洋の荒波が造り出した鬼ヶ城(熊野市駅または大泊駅下車)、奇岩がそそり立つ橋杭岩(串本駅下車)、風光明媚な紀の松島(紀伊勝浦駅下車)、本州最南端の潮岬(串本駅下車)などの風景は、どこまでも青く広い海n雄大さともあいまって、感動体験となることでしょう。

潮岬に建つ本州最南端の記念碑

熊野古道・大吹峠のたたずまい

(4)味覚もお忘れなく
紀伊半島といえば、何といっても海の幸。紀伊勝浦に水揚げされるまぐろは、ぜひ味わいたい一品です。町の寿司どころや小料理屋さんの暖簾をくぐり、本場のまぐろを肴に一杯というのも、旅の楽しみです。脂の乗ったとろはもちろん、赤身も「こんなにおいしいのか」とびっくりするほどです。

また、尾鷲・熊野地方の郷土料理でもあるさんま寿司もぜひ味わってみたいもの。新宮駅などでは、やはり郷土料理のめはり寿司と一緒に駅弁として並びます。

変わったところでは、捕鯨基地として栄えた太地の鯨料理も要チェックです。一定以上の年代の方には懐かしい鯨料理も、今では希少品。国民宿舎「白鯨」をはじめ、町内の料理店で味わえます。

勝浦ではぜひまぐろを味わいたい

(5)お得なきっぷ
○南紀・熊野古道フリーきっぷ
名古屋地区から、南紀・熊野古道エリアへの往復と、フリー区間内での乗り放題がセットになったきっぷで、往復には特急「南紀」の普通車指定席を利用可能。フリー区間では特急・普通列車の普通車自由席と指定区間の路線バスに乗り放題となります。

「伊勢路コース」(フリー区間:三瀬谷~熊野市)と「中辺路コース」(フリー区間:熊野市~紀伊勝浦)の2つの設定があり、いずれも有効期間は3日間です。ただし、多客期(盆・年末年始・GW)は利用できないのでご注意ください。

名古屋市内発着の場合、「伊勢路コース」は8,000円(こども4,000円)、「中辺路コース」は9,500円(こども4,750円)です。他の駅からの発売もあります。詳細はJR東海のホームページ(http://jr-central.co.jp/)をご参照ください。

○普通乗車券でぐるっと一周
紀勢本線を和歌山方面まで乗り通して一周してくる旅をするなら、帰りは大阪から東海道線経由とするのが一般的です。その場合、経路は「名古屋→関西本線→(伊勢鉄道)→紀勢本線→阪和線→大阪環状線→東海道本線→名古屋」となり、途中でぶつからない一筆書きルートとなります。どれだけ遠回りになっても、経路がぶつかるまでは片道乗車券が成立しますので、この場合は「名古屋(市内)から名古屋(市内)ゆき」という不思議な片道乗車券になります。運賃は10,050円(伊勢鉄道運賃含む)で、5日間有効。JRの乗車券は、戻らない限り有効期間内は何度でも途中下車ができますから、好みの駅に降り立ち、散策や観光を楽しむのも自由です。大きな紀伊半島をじっくりと堪能してみたいものですね。

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全線開通の7月15日には記念列車が運転されたり、記念の駅弁が発売されたりとイベントも目白押しです。ぜひこの夏は、紀勢本線でのんびり旅してみませんか。

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