愛知県共済

インターネット公開文化講座

文化講座

インターネット公開文化講座

知って得する鉄道旅行術

鉄道ライター/安城学園高校教諭
山盛 洋介

各駅停車の旅

名古屋6時52分発の新幹線「のぞみ100号」に乗ると、東京8時30分着。所要1時間38分、週刊誌でも読んでいる間に着いてしまいます。名古屋を出れば、途中の停車駅は品川のみ。あっという間に、東京都心の高層ビル群へと吸い込まれていきます。

それでは、ほぼ同時刻、名古屋6時47分発の東海道本線(在来線)普通・豊橋行きに乗り、東京をめざすとどうなるでしょうか。平日ダイヤでたどってみると・・・

名古屋6:47→(普通・豊橋行き)→8:16豊橋8:20→(普通・静岡行き)→10:15静岡10:30→(普通・熱海行き)→11:42熱海11:46→(普通・東京行き)→13:33東京

となり、東京に着くのは昼過ぎ。食堂のランチタイムも終わりそうな時間帯ですね。「のぞみ100号」が東京に着くころ、まだ愛知県を抜けていないことになります。
このように、各駅停車で旅をすると、どうしても時間がかかってしまいます。もちろん、安上がりではありますが、特急料金(自由席なら3,980円)を別に払えば約5時間も早く着けるわけですから、「のぞみ」を利用するというのは当然の選択でしょう。
しかし、ここで発想を転換してみてはどうでしょう。東京まで普通列車に乗りっぱなしではお尻も痛くなってしまうし、疲れてしまうだけですが、東京までの道のりそのものを楽しんでしまう、というのはどうでしょうか。東海道線の沿線は、歴史あり、絶景あり、グルメあり、温泉ありと、ちょっと立ち寄ってみたい、と思えるスポットが目白押しです。

【写真02-1】名古屋から普通列車で出発

たとえば、先ほどの名古屋6:47発の普通・豊橋行きで出発し、豊橋で乗り換えて、弁天島で途中下車(8:42着)。朝の散歩としゃれ込みましょう。駅から少し歩けば、浜名湖畔に出られます。新幹線ならほんの数十秒で通り過ぎてしまうところですが、缶コーヒーでも飲みながら、のんびり過ごすのもいいでしょう。2本後の浜松行き(9:28発)に乗り、浜松到着。

【写真02-2】弁天島で浜名湖を眺める

熱海行きに乗り換え、静岡まで行ってしまいましょう。11:02着。昼ごはんには少し早いですから、駅前からバスに乗って登呂遺跡を訪れてみます。歴史の教科書には必ず登場する弥生時代の集落遺跡です。見学時間も入れて2時間ほどで駅まで戻ってこれるかと思います。そろそろお腹が空きましたので、13:04発の熱海行きに乗り、清水(13:15着)まで行くことにします。清水といえば、そう、新鮮な魚ですね。駅近くの市場でも海鮮丼や寿司などを味わうことができます。車ではありませんから、一杯ビールというのもたまりませんね。
すっかり気分も良くなったところで、先に進みましょう。14:38発の熱海行きに乗ります。興津を出ると、列車は薩唾峠を越えて由比にさしかかります。晴れれば駿河湾と富士山の絶景が望める東海道随一のビューポイントです。終着・熱海には15:49着。ここまで来れば東京まであと100kmほどですが、ここでも途中下車。やはり熱海に来たら温泉に入りたいものですね。熱海駅のすぐ近くに温泉浴場があります。ここで入浴。旅の疲れも癒される、というものです。

【写真02-3】熱海で温泉を満喫

熱海17:03発の東京行きに乗り、終点・東京には18:47着。大都会のネオンが旅のエンディングを演出してくれることでしょう。銀座あたりでリッチにディナーでも楽しみますか。

【写真02-4】長い旅路を終え、東京に到着

このように、東京まで丸一日かかりましたが、途中下車を楽しみながら東京まで普通列車を乗り継いでいくと、もうこれだけで立派な「旅」になりそうです。何といっても、新幹線の270km/hという速度では見えてこない、沿線の豊かな特色が、各駅停車なら見えてくるのです。
知って得する鉄道旅行術
このページの一番上へ