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知って得する鉄道旅行術

鉄道ライター/安城学園高校教諭
山盛 洋介

第40回 知っている人だけが得をする! JRのきっぷのお得な買い方(1)

JRの運賃・料金のしくみは複雑で、なかなか理解するのが難しいといわれていますが、じっくり学んでみると、実は乗客にとって魅力的な制度がいくつもあります。その中からいくつかをご紹介します。

(1)遠くへ行くなら「往復乗車券」

 JRの乗車券には「片道」「往復」「連続」の3種類があります。A駅からB駅まで片道乗車するのが「片道」乗車券、A駅からB駅へ乗車し、同じ経路をB駅からA駅まで戻る場合は「往復」乗車券です(「連続」乗車券は複雑なのでここでは略)。
 その往復乗車券、運賃と有効期間は片道乗車券の2倍になります。一般的に考えると、片道乗車券を往路・復路それぞれ別々に買うのと、そう大差なく、帰りの乗車券を買う手間がなくなるだけのメリットしかないことになります。
 しかし、JRには「往復割引」制度があるのをご存知でしょうか。これは、片道の営業キロが601km以上となる経路を往復する場合、ゆき・かえりの運賃ともそれぞれ1割引になるという制度です。
 具体的なケースで検討してみましょう。名古屋から仙台まで、東京経由で往復する場合、次のようになります。

●名古屋~仙台(717.8km)を往復する場合
 ○片道2枚を買うと
 9,870円×2=19,740円
 ○往復乗車券を買うと
 ゆ き 9,870円×0.9=8,880円
 かえり 9,870円×0.9=8,880円
               合計17,760円

 このように、片道乗車券を2枚買うのと比べて、1,980円も安くなります。ゆき・かえりともに駅弁代ぐらいは浮く計算になりますね。有効日数は往復で10日間ですから、10日以内に帰ってくるのであれば、往復乗車券が利用できます。

さて、これを利用すると、面白いことに気づきます。
名古屋から東京経由で福島県方面へ往復する場合、運賃は次のようになります。

●名古屋~白河(554.2km)
 8,510円×2=17,020円 ※往復割引適用外
●名古屋~郡山(569.4km)
 8,720円×2=17,440円 ※往復割引適用外
●名古屋~福島(638.8km)
 9,350円×0.9+9,350円×0.9=16,820円 ※往復割引適用可

 このように、白河から84.6kmも先である福島まで往復したほうが安いという逆転現象がおこります。JRの運賃表にあてはめると、541~600kmの区間を往復乗車する場合は、601~640kmまでの区間までの往復乗車券を買ったほうが安いことになります。
 「いやいや、別に福島まで行く用なんかないけれど」という方もおられると思いますが、本来の目的駅から福島までの区間は、乗車権利を放棄すれば良いだけのことです。権利の過少行使ですから、特段の問題はありません。

 他方面へも同様の手が使えます。
 日本三景「安芸の宮島」への玄関口となる宮島口まで(550.0km)の往復乗車券を名古屋から買うと17,020円ですが、その先、徳山まで(621.2km)だと、往復割引が適用されて16,820円となります。
 四国では、松山まで(581.3km)の往復乗車券は18,540円。その先、高野川まで(600.8km)だと、往復割引が適用されて17,260円となります。
 東京経由で越後湯沢まで(565.2km)の往復乗車券は17,440円。その先、長岡まで(636.6km)だと、往復割引が適用されて16,820円となります。

「600km弱の区間はその先まで」を、頭の中にぜひ入れておくと良いですね。

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