愛知県共済

インターネット公開文化講座

文化講座

インターネット公開文化講座

知って得する鉄道旅行術

鉄道ライター/安城学園高校教諭
山盛 洋介

名鉄電車の旅を楽しむ(2)

名鉄電車を利用している人なら「急行・御嵩(みたけ)行き」という放送を聴いたことのある人も多いのではないでしょうか。中部国際空港駅からも「御嵩行き」が発車していますが、初めて東海地方に降り立った人にとっては「御嵩ってどこ? 何て読むの?」という戸惑いもありそうです。

その御嵩、岐阜県にある中山道沿いの宿場町です。ここをめざすのが名鉄広見線。犬山から新可児を経由して御嵩まで22.3kmの路線です。

御嵩口に到着する広見線の電車

御嵩行きの急行は、犬山から普通電車に変わり、進行方向も逆向きになります。富岡前・善師野と止まるとにわかに山間路線のムードになり、トンネルをくぐります。これが愛知・岐阜県境です。最近ではこのあたりも名古屋の通勤圏になっていて、西可児・可児川あたりは住宅が建ち並び、ベッドタウンの趣もあります。

日本ライン今渡に停車。日本ライン下りの乗船場に近いこの駅からタクシーに乗ると、木曽川畔に静かにたたずむ「名鉄資料館」に行くことができます。ここは、名鉄社員の研修施設として開設されているものですが、平日のみ一般にも公開されています(事前の予約が必要)。不定期に「特別開館」と称して日曜日等に開館することもあり、このときは予約がなくても見学することができます。かつての駅名標や行先表示板をはじめ、さまざまな「お宝」が並び、鉄道ファンならずとも懐かしさがこみ上げる展示になっています。

名鉄資料館に展示されているパノラマカーの行先表示板

再び電車に乗り込むと、次の新可児は行き止まり式のホームになっていて、再び進行方向が逆になります。新可児までは複線でしたが、ここからは単線になり、ローカルムードが一気に増していきます。名鉄電車だけれども「遠くに来たな」と思える瞬間かもしれません。

新可児から単線になる広見線

かつては明智との間に「学校前」という駅がありましたが、普通電車の約半数が通過するほど乗降客は少なく、3年ほど前に廃止されてしまいました。

次の明智は比較的大きな駅です。かつてはここから八百津線が分岐し、LEカーと呼ばれるディーゼル列車が運転されていましたが、これも廃止されてしまい、寂しくなりました。窓口にはまだ駅員さんが勤務しており、自動改札機ばかりになってしまった名鉄線では珍しく人の温かみを感じられる駅でもあります。

山並みがさらに近づいてくると顔戸・御嵩口と止まっていきます。どちらも2両分のホームしかない小さな駅です。顔戸で途中下車してみると、駅の前は木立になっていて、在原行平の墓が建っています。百人一首の「立ち別れ いなばの山の峰に生ふる まつとし聞かば 今帰り来む」を詠んだ歌人で、美濃守を務めたというから、この地と関連があるのかもしれません。そんな小さな発見があるのも、普通電車の旅ならではですね。

終点の御嵩に着くと、駅前が中山道の宿場町(御嶽宿)になっていて、駅からほど近いところに古い町並みも残っています。ここまで名古屋から1時間あまり。午後からでもゆっくり出発できます。たまには、こんなところで散策を楽しむのもいいものですね。

薄暮の空の下、走っていく広見線の電車

♪ ♪ ♪

前回からあわせて3つの路線をご紹介してきましたが、名鉄電車であちこち旅がしてみたい、という方には、乗り放題のフリーきっぷがおすすめです。

●「まる乗り1DAYフリーきっぷ」
名鉄電車全線1日乗り放題で3,000円。昼間帯(10時から16時)までは快速特急・特急の特別車にも空席があれば座れます。名古屋からだと片道1,500円相当かかる名鉄の駅はありませんので、あちこち行くか、こまめに途中下車しないとモトは取れません。

●「名鉄電車2DAYフリーきっぷ」
名鉄電車全線が連続2日間乗り放題で3,800円。1日あたり1,900円です。名古屋から知多奥田(片道950円)・国府・御嵩・吉良吉田(片道960円)へ2日間別のところへ往復すればモトが取れる計算ですので、例えば1日目は広見線で「山」へ、2日目は知多新線で「海」へ、という旅も面白いですね。

遠くへ出かけるだけが旅ではありません。近場でゆっくり旅を楽しむのもいいものです。

知って得する鉄道旅行術
このページの一番上へ