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知って得する鉄道旅行術

鉄道ライター/安城学園高校教諭
山盛 洋介

第26回 飯田線各駅停車の旅(3)

天竜川の渓谷沿いをのんびり走る飯田線。千代を発車すると、天竜川を鉄橋で渡り、天竜峡に到着します。天竜峡は、飯田線沿線でも五指に入る有名観光地といえましょう。天竜川を下るライン下りが楽しめるほか、秋にはりんご狩も楽しいところです。

天竜峡でライン下りを楽しむ
天竜峡観光の拠点となる天竜峡駅

さて、飯田線は、この天竜峡を発車すると「起承転結」の「転」を迎えます。これまでの深山幽谷の風景とは打って変わり、突如、沿線は平地となります。伊那盆地に入ったのです。あまりに劇的な風景の変化に驚きますが、この変化こそが長い飯田線の旅の醍醐味です。ぜひ見逃さないようにしたいものです。
相変わらず小さな駅に次々と止まりながら列車は進みますが、車窓の風景にはしだいに家並みが増えてきます。飯田市街に入ったのです。これまで人の気配がまったく見られないような山間地を走ってきただけに、人口10万人あまりの規模の都市が、実際のそれ以上に大都会に見えます。

飯田線は、飯田市街をぐるっとΩ型に迂回するように走ります。天竜川の河岸段丘に位置する飯田市街は、丘の上に旧市街地があり、ここに飯田駅があります。ですから、Ωカーブの両端にあたる下山村・伊那上郷両駅は2キロあまりの道のりしかなく、列車がΩカーブを迂回している間に、人間が全力疾走すれば先に着いてしまうようなところです。つまり、下山村で一度降りた電車に、伊那上郷でもう一度乗り込むことが可能です。私もこれまで10度以上挑戦し、8度ほど成功しています。近年では各種のテレビ番組等でも取り上げられています。挑戦される方は、交通事故には気をつけて頑張ってみてください。

Ωカーブの起点にあたる下山村駅
松川の鉄橋を渡り飯田市街へ入っていく飯田線の列車

さて、飯田の町を離れると、列車は中央アルプスと南アルプスの谷間をのんびり走っていきます。アルプスを眺める鉄道路線は多数ありますが、2つのアルプスを同時に眺められるのはこの飯田線だけです。そういう意味では貴重な路線かもしれません。 とりわけ、伊那大島を出たあたりから、2つのアルプスが右に左にと移り変わり、眼を動かすのも忙しくなります。このあたりは、果樹園も多く、段丘に広がる木々と遠くの山々の風景が相まって、実に趣深い風景を作り出しています。ありがたいことに、飯田線の列車はそうスピードも速くないので、景色をゆっくり眺められます。 そろそろ途中下車したくなってきますね。

(次号に続く)

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